建築の愛し方07:日本一の建築探訪サイト「うらくんのページ」、運営者はこんな人だった!

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建築を楽しむ方法は無限にある。本シリーズ「建築の愛し方」では、「そんな方法があったのか!」「まさかそこまで!」と私(宮沢)が強く惹かれた建築LOVERたちを取り上げていく。5人目は、建築好きならばひそかにお世話になっているであろう建築探訪サイト「うらくんのページ」の運営者、「うらくん」さんにオンラインで取材。メディア初登場!

最近の投稿例。富山市の「富山県美術館」(設計:内藤廣、2017年)。設計者別、エリア別で調べられるのが便利!(以下すべて、うらくんのページからのキャプチャー)
トップページはこんなにシンプル。「建築」は右列2段目

──10年以上前から、うらくんのページの「Architectureのページ」を参考にさせていただいています。今日はお話することができて本当にうれしいです!

こんな人です!(イラスト:宮沢洋)

 私も日経アーキテクチュアの「建築巡礼」を読んでいますので、うれしいです。

──うらくんのページは、「Profileのページ」がずっと工事中なので(笑)、運営者がどこの誰なのか、全く分からず…。勇気を出して、インタビュー依頼のメールを送ってみましたが、きっとメディア嫌いの人で、取材はNGだろうと、半ばあきらめていました。

 いえいえ、そんなことは(笑)。お声がけいただき、ありがとうございます。

──私が「建築巡礼」の連載を始めたのが今から15年前(2005年)で、そのときには、すでに「うらくんのページ」はあったように思います。その頃からずっと、地方に出張に行く前には、必ずそのエリアの情報をざっと見ています。そもそもこのサイトを始めたのはいつごろなのですか。

 25年くらい前です。まだ大学生で20歳くらいだったと思います。最初は、音楽とか、映画とか、当時の興味のあったいろいろなことを投稿するサイトだったのですが、建築のページの反響が大きくて、そこだけどんどん深掘りするようになった感じです。最初の頃は、高松伸さんをよく見に行きました。

建築家ではありませんよ

──日経アーキテクチュアを読んでいるということは、今も建築関係のお仕事をされているのですね?

 関西の役所で、建築関係の業務を担当しています。

──えっ、建築設計者じゃないんですか? しかも関西? 「東京で設計事務所を主宰していて、好きなときに社費で建築を見に行ける人」というイメージだったのですが…。

 全く違っていてすみません(笑)。建築は、休みの日に、自腹で見に行っています。

──確かに、関西方面も詳しいとは思っていましたが、東京のプロジェクトも、私よりずっとご覧になっていますよ。見たことがないものがたくさん載っています。

 仕事で東京に行くことはほとんどありません。ですから、東京に旅行に行くときは、気合を入れて調べていきます。結果として、密度が高いのかもしれませんね。

──失礼ですが、ご家族は?

 所帯持ちですが、家族は全く建築に興味を持ってくれません(笑)。家族旅行のときも、「ちょっとここだけ寄らせて」という感じで、建築を組み込むので、冷たい目で見られています。

──あー、それ分かります。それでも続けるモチベーションは?

 やっぱり投稿した記事にリアクションがあるとうれしいですよね。アクセス数とか、コメントとか。

徐々に分類が深化

──投稿している数もすごいですが(9月5日時点で2922件)、分類が素晴らしいと思います。都道府県別や建築家別に調べることができて、それぞれが完成年順に並んでいる。本当に助かります。ああいう整理の仕方は最初から?

 最初は、単純に、投稿した順に記事が並んでいるだけでした。数がたまってきた段階で、まずは近畿地方、関東地方などエリアごとに分けました。さらにたまってきて、都道府県別に分けるようになり、建築家別の分類もつくりました。

──サイト自体を自分でつくったんですか?

 そうです。まだ個人のウェブサイトが珍しい頃で、見よう見まねでつくりました。古い仕組みなので、そんなに融通は利きませんが、ある程度は、自分で枠組みをつくることができます。

──写真は最初からデジタルで?

 25年前は、デジタルカメラってまだなかったですよね。プリントをスキャンして投稿していました。デジタルカメラになってからは、だいぶ楽になりました。それと、グーグルマップの登場はありがたかったです。

──ああ、そうですね。私もグーグルマップには本当に感謝しています。

 昔は、「この辺り」と見当をつけて、あとはひたすらに歩きました。不安になりながら、とにかく歩く(笑)。そういう苦労はかなり減りました。

情報源は「日経アーキ」+「タレこみ」

──もう投稿を辞めようと思ったことはなかったですか。

 それはなかったですね。「この建築は取り壊されそうだ」とか「あの建築は実は誰々の設計だ」とか、情報を寄せてくださる方が増えて、もう辞められない、というところもあります。

──情報源は何なのでしょうか。職場に建築専門誌がずらりと揃っている?

 いえ全く。個人で定期購読しているのは日経アーキテクチュアだけです。ほかの雑誌より少し安いので(笑)。

──古巣ですが、ありがとうございます! でも、日経アーキには載っていない建物もたくさんありますよ。

 定期購読はしていませんが、建築の雑誌を買ったりしますし、あとは、「ここにこんな建築ができる」という情報を寄せていただくことも多いです。

──なるほど、25年も続けていると、生情報がどんどん入ってくるようになるわけですね。それは辞められない(笑)。 

後編に続く。