コロナ夏の必見展04:「北斎づくし」@東京ミッドタウン、田根剛氏が「づくし」の会場デザイン

Pocket

 “前代未聞”の北斎展が、2021年夏開催──と、今年の早い時期からすごい煽り文句で宣伝されていた葛飾北斎生誕260年記念企画・特別展「北斎づくし」が、7月22日(木)から東京ミッドタウン・ホールで始まった。

(写真:宮沢洋)

 生誕260年って半端すぎでは…と突っ込みつつも、「北斎」や「広重」と名の付くものは、画文家を名乗る自分としては見ないわけにいけない。しかも本展は、建築家の田根剛氏が会場デザインを担当するという。開幕前日(7月21日)に行われた報道内覧会を見に行った。

 冒頭の大空間から「ああ、確かに田根さん!」という分かりやすさ。タイトル通りの「北斎づくし」の空間だ。

田根さん人気もあってか、すごい報道陣。会期中はもっと静かに見られると思います

 この部屋は「北斎漫画」を展示する部屋。壁、床、展示什器が全部、北斎漫画をプリントしたシートで覆われている。天井から吊るされた垂れ幕を見ると、その絵がどの什器で展示されているかが分かる。坂茂氏やSANAAにも感じることだが、海外で活躍している建築家は、インスタレーションであってもメッセージが伝わりやすい。

展示什器はよくできている
裏側も手抜きはない

 ただ、コロナ禍でパリからの遠隔監理だったのか、単に時間が足りなかったのか、壁・床のシートの貼り方がビシッとしてないのがちょっと気になった。(今は修正されているかもしれないが)

壁と床の境目が気になる…
せめてここはぴっちり貼るべきでは。それともこれが狙い?

 北斎漫画の展示はこれまでに何度も見たことがあった。そもそも、北斎漫画は今、文庫本でも手軽に読める。それがどう前代未聞なのか。確かにびっくり。見開きごとに違う実物(本)を並べて見せるのだ。

 こんなに実物の本が残っているのか…。広報資料によると、「世界一の北斎漫画コレクター・浦上満氏(浦上蒼穹堂)の全面協力により、世界最高水準の質と量を誇る『北斎漫画』『富嶽百景』コレクションを展示。特に『北斎漫画』は、全頁を同時に展示するために約500冊の『北斎漫画』が一挙集結!まるで「北斎漫画の森」ともいえる空間が展示室に現れます」とある。500冊!? そんなに? 「数で勝負」という、まさに前代未聞のアプローチの北斎展である。

冨嶽三十六景の部屋は円形平面

 数で勝負ということでは、次の「冨嶽三十六景」の部屋も圧巻。円形の壁に、「冨嶽三十六景」全46点がぐるっと展示されている。「三十六景」なのに全46点だったということにもびっくり。

部屋の色は赤富士に合わせた?

 他の部屋はこんな感じ。

 以下、参考までリリースから引用(手抜きですみません)。
 
 「今回の展示では、北斎をリスペクトする豪華メンバーが集結。(中略)2014年にグランパレ(仏・パリ)の「北斎展」会場デザインを手掛け、国際的な注目を集める建築家の田根剛氏、『北斎漫画』(青幻舎、2011年)の装丁も手掛けた鬼才アートディレクター・ブックデザイナーの祖父江慎氏らが展示空間を構築。その空間に『BRUTUS』の日本美術特集など、日本美術を主な領域とするライター・エディターの橋本麻里氏による編集、高精度な文化財デジタルアーカイブを得意とする凸版印刷の表現技術が加わり、世界で最も有名な日本の絵師・北斎が持つ過剰なほど多彩な側面のすべてと出会える、『北斎づくし』の空間にご期待ください」

 田根ファン必見!と言えるほどではないが(これまで素晴らしい展示構成を数々実現してきたので…)、北斎をこれだけ堪能できれば入場料(一般1800円)の価値はあるだろう。会期は9月17日(金)まで。(宮沢洋)

【開催概要】
生誕260年記念企画 特別展「北斎づくし」
会期:2021年7月22日(木)~9月17日(金)
開館時間:11:00~19:00(最終入場18:30)
休館日:8月10日(火)、8月24日(火)、9月7日(火)
会場:東京ミッドタウン・ホール (東京ミッドタウンB1]東京都港区赤坂9丁目7-2)
主催:凸版印刷、日本経済新聞社、博報堂DYメディアパートナーズ、テレビ東京、BSテレビ東京
協賛:富士フイルム株式会社、日本航空株式会社、「神宿る島」宗像・沖ノ島と関連遺産群保存活用協議会、KDDI株式会社
特別協力:浦上蒼穹堂
協力:山口県立萩美術館・浦上記念館、公益財団法人 山形美術館
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
公式サイト:https://hokusai2021.jp/