2020年は“高架下3.0”元年、アルーク阿佐ヶ谷が4月1日オープン

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 JR阿佐ヶ谷から高円寺駅に向かって徒歩4分ほどのJR高架下に4月1日、「alːku(アルーク)阿佐ヶ谷」の第1期がオープンする。4月1日の店開きは全12施設(予定)中の3つで、残りは4月上旬から順次オープンしていく。写真は、工事の最終段階の状況だ。

「食」と「学び」で母親をサポート

 事業主はジェイアール東日本のグループ会社のジェイアール東日本都市開発。以前「アニメストリート」であったところを全面リニューアルした。阿佐ヶ谷駅から高架下を東側に進むと、「Beans阿佐ヶ谷てくて」「阿佐ヶ谷ゴールドストリート」そして「アルーク阿佐ヶ谷」と、JR東日本都市開発の高架下施設が続く。

(資料:ジェイアール東日本都市開発)

 春に予定されていた商業施設が新型コロナの余波で軒並み開業を延期するなか、この施設が予定どおり4月オープンに踏み切ったのは、“母親サポート”的な機能を持つテナントが多いからだ。

完成イメージ(資料:ジェイアール東日本都市開発)

 例えば、民間学童保育施設である「ウィズダムアカデミー杉並阿佐ヶ谷校」や幼児教室の「ジンボリー インターナショナル プリスクール&アフタースクール」(いずれも4月1日オープン)、絵本による英会話レッスン「Read it LOUD!」(4月上旬オープン)、子ども向け体操教室「クラブネイス体操教室」(4月17日オープン)など。施設全体のテーマとして「『食』『学び』を通して子育て世代を応援するコミュニティ空間」を掲げる。

 飲食施設では、入り口とも言える阿佐ヶ谷駅寄りに、名古屋で人気のある「ハチカフェ」が東京初出店する。ハチカフェは、名古屋を拠点にリノベーションなどを手掛ける一級建築士事務所「エイトデザイン」が運営する、タルトとサンドイッチの専門店。もともとエイトデザインの事務所だった場所をカフェとしてリノベーションし、人気店となった。

 アルーク阿佐ヶ谷の木を用いた共用部の壁面も、エイトデザインによるデザインだ。

21世紀に入り、高架下が激変

 ざっくりではあるが、ここ15年ほどの高架下開発のトピックスを時系列で並べてみた。

2004年ごろ~:JRの高架下で保育所など子育て支援施設の設置が始まる
2008年:京急電鉄・日ノ出町駅~黄金町駅の高架下に横浜市が「日ノ出スタジオ」を開設
2010年12月:JR秋葉原駅~御徒町駅間に、「ものづくり」がテーマの「2k540 AKI-OKA ARTISAN」オープン(JR東日本都市開発)
2013年9月:東京・神田にJR万世橋高架橋と万世橋駅遺構を活用した商業施設「mAAch ecute(マーチエキュート)神田万世橋」オープン(JR東日本ステーションリテイリング)
2017年8月:JR阿佐ヶ谷駅東側高架下の「ゴールド街」をリニューアルし、開放型配置の「Beans tekute(ビーンズてくて)」オープン(JR東日本都市開発)
2018年3月:東急池上線・五反田駅~大崎広小路駅間に商業施設「池上線五反田高架下」オープン(東急電鉄)。施設デザインはサポーズデザインオフィス
2019年10月:阪神電鉄の鳴尾・武庫川女子大前駅の改札とつながった高架下に「武庫女ステーションキャンパス」がオープン
2019年12月:JR秋葉原~御徒町駅間に複合商業施設「SEEKBASE」オープン(JR東日本都市開発)。テナントの1つとして、高架下ホテルの「UNDER RAILWAY HOTEL AKIHABARA(R≧H)」開業
2020年4月1日:JR阿佐ヶ谷~高円寺駅間に「アルーク阿佐ヶ谷」オープン(JR東日本都市開発)

「おしゃれ化」→「まちづくりの核」へ

 そして、2020年には下記の話題が控えている。

2020年春:JR中央線・東小金井駅~武小蔵小金井駅間に延長約400mに及ぶ学生向け賃貸住宅「中央ラインハウス小金井(C・L・H KOGANEI)」が開業(JR中央ラインモール)。設計は北山恒、谷内田章夫、木下道郎


2020年4月17日:東武スカイツリーライン・浅草~とうきょうスカイツリー駅間に複合商業施設「東京ミズマチ」のウエストゾーンがオープン
2020年6月下旬:JR有楽町駅~新橋駅間に大規模な高架下商業施設「日比谷OKUROJI」オープン(JR東日本都市開発)。特徴的な煉瓦アーチを約300mに渡って生かす
(いずれも開業時期は、公表されているプレスリリースの情報)

(資料:ジェイアール東日本都市開発)
(資料:ジェイアール東日本都市開発)

 これからの高架下開発は、「まちづくり」と「既存高架下施設の刷新」という2つの視点の掛け合わせで進んでいくことになりそうだ。その用途や規模に、“昭和のガード下”の面影はない。「高架下のおしゃれ化」が進んだ2000年代~2010年代を「高架下2.0」とするなら、2020年は「高架下3.0」の始まりの年といえるかもしれない。(宮沢洋)