「青森5館」全制覇! まずは田根剛/弘前れんが倉庫、青木淳/青森県美、安藤忠雄/国際芸術センターへ

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 「青森5館(AOMORI GOKAN)」を全部言えるだろうか。私が勝手につくった造語ではない。2020年7月に設立された「青森アートミュージアム5館連携協議会」の取り組みだ。コロナ禍がずっと続いていて、まだ大きな連携イベントは行われていないようだが、5館の企画展の内容などが一度に見られるサイト(こちら)があって、これは便利だ。

 で、5館とは何を指すのか。建築好きならばスラスラ答えてほしい。公式サイトの並び順にいうと、こうなる。

・弘前れんが倉庫美術館
・青森公立大学 国際芸術センター青森
・青森県立美術館
・十和田市現代美術館
・八戸市美術館

 ゴールデンウイーク中に青森で仕事があったので、レンタカーを借りて5館を全部回ってみた。2泊3日のアート漬け&建築漬けの旅。その雰囲気を写真で紹介する(それぞれを詳しく論ずると大変なレポートになってしまうので、あくまで雰囲気レベルでご容赦を)。

5館巡りの1つめはここ(写真:宮沢洋、以下も)

外観だけでも見る価値ありの「弘前れんが倉庫美術館」

 初日の仕事を終え、夕方に訪れたのが「弘前れんが倉庫美術館」。2020年7月開館。弘前市がPFIでつくった施設で、設計は田根剛氏率いるAtelier Tsuyoshi Tane Architects。これは私が前職(日経アーキテクチュア編集長)時代に、取材に行こうと楽しみにしていた施設なのだが、会社を辞めてしまったので行けなかった。恥ずかしながら初見である。短く結論を言うと、想像以上に素晴らしい建築だった。

 まず、外観。レンガ倉庫を再生した建築というのは世の中にたくさんあるので、外観で差別化を図るのはかなり難しい。ここでは新たにチタンで葺いた「シードル・ゴールド」の屋根がポイントだ。この屋根、すでに見た人の印象を聞くと「さほど目立たない」という話だったのだが、私が行った日はピーカンの青空で、かつ午後4時近くだったこともあり、屋根が見事にゴールドだった。

 特に、屋根のエッジの部分の輝きが効いている。隣接する公園の緑と、レンガの赤茶、エッジの金色の対比が鮮やか。これはいつか「建築巡礼」でイラスト描かなきゃ、と思わせる(20年後?)。

 内部の大空間も良かった。企画展が照度の低い展示なので写真ではわかりづらいと思うが、鉄骨で支えられた内部空間は歴史の重みを感じさせる。

 レンガの使い方も面白い。入り口はいかにも田根流のコチョコチョとした繊細さ。

 窓回りの歴史が積層した感じのディテールもいい。

2日目は壮大な青木淳ファンタジーを堪能

 2日目はまず「青森県立美術館」へ。設計は青木淳建築計画事務所(現・AS)。ここはオープンした年(2006年)に行ったと思うのだが、15年たってほとんど忘れており(涙)、初見のように新鮮に見ることができた。

 これもいい。ふわっとした幻想的な雰囲気は弘前に通じるものがあるが、空間の大きさや連なりの見せ方が弘前とは違って作為的。ゼロからつくられた壮大なファンタジーを見るような面白さだ。ザ・青木ワールド。

 美術館とは別施設になるが、すぐ近くに「山内丸山遺跡」がある。ここまで来たらやっぱり見てほしい。

 青木氏は、この三内丸山遺跡の発掘現場から着想を得て、敷地を壕のように掘り込み、その上に白い躯体をかぶせて施設を構成した。……と当時の記事には書いてあった。

さすがの安藤建築に「気分は北欧」

 続いて、青森県立美術館から車で30分ほどの「国際芸術センター青森」へ。青森5館の中で一番早い2001年12月開館だ。設計は安藤忠雄建築研究所。

 出張ついでではなかなか行きづらいところにあり、完成から20年たって初めて見た。元・安藤忠雄番としてはお恥ずかしい。

 これもなかなか良かった。SNS映えしそうなアプローチ。こういうのうまいなあ、安藤さん。

 完成時の日経アーキテクチュアの記事は「森と雪に埋もれる『見えない建築』」というタイトルだったので、直島の「地中美術館」のような地下に埋めた建築なのかと思っていた。冬はそう見えるのかもしれないが、5月の新緑の中のそれは、想像とは異なる力強い建築だった。こちらもザ・安藤ワールド。

 円を描く水盤と屋外客席が、緑と相まってとにかく絵になる。まるで北欧に来たかのよう(行ったことはないけれど)。

 これは他の4館とは違って、展示がメインの「美術館」ではない。芸術家が寝泊まりしながら創作に打ち込む「アーティスト・イン・レジデンス」として青森市が建設した。現在は隣にある青森公立大学(1993年開校)の付属施設となっているようで、「青森公立大学 国際芸術センター青森」という名前になっている。

 訪れた日には2人のアーチストの個展が行われていた。いずれも無料。

 公共交通機関で行きたい人は、青森駅前4番バス乗り場から青森公立大学・モヤヒルズ行きに乗車(所要時間約40分、運賃560円)、青森公立大学前バス停下車。ちょっと行くのが大変だが、安藤ファンなら一度は見るべき建築だろう。

 残り2つは後編に。(宮沢洋)