2025年大阪・関西万博で隈研吾氏が設計を担当しているのは、前回リポートしたシグネチャーパビリオン「EARTH MART」(こちらの記事)だけではない。他に「マレーシア館」「カタール館」「ポルトガル館」の3つも担当しており、このうち「マレーシア館」と「カタール館」も見学させてもらうことができた。写真中心にリポートする。


「マレーシア館」は遠目に見ても、「あれはきっと隈氏の建築だ!」とわかるデザイン。竹を縦にして隙間を空けて並べた外装だ。竹の上下が重なりつつうねる造形は、“竹のオーロラ”のよう。
オーロラというのは筆者の印象であって、実際のモチーフは、マレーシアの伝統的な織物「ソンケット」とのこと。
設計は隈研吾建築都市設計事務所で、施工は大成建設。この2人が案内してくれた。

建物は鉄骨造・地上3階建て。延べ面積は2393.27m2。ここは今回のパビリオンでは珍しく、屋上に上れる。



竹は単管パイプやクランプを使って取り付けた。竹を固定するリングは、通常はホースなどに使うものだという。外装材には日本の竹を約5000本使った。水がたまって腐らないように節は抜いてある。
内装にはマレーシア産の竹を約500本使う。日本の竹に比べて表面が荒々しい。



ぱっと見は隈氏らしくない?「カタール館」
ひと目で隈建築とわかる「マレーシア館」に対し、「カタール館」はぱっと見にはそうとはわからない。近年の隈氏には珍しい“面”と“上昇感”のデザインだ。

建物は地上2階建て。延べ面積1111.01m2。施工は前田建設工業。案内してくれたのはこちらの皆さん。

カタールの「ダウ船」と呼ばれる伝統的な帆船と、日本の伝統的な指物の技術にインスピレーションを受けたデザインだ。建物本体を木造船をイメージさせる板張りとし、外側の白い膜材で帆を表現した。
膜材の内側に入っても、隈氏とは思えない垂直性の強いデザインだ。



通常は入れない屋上に上らせてもらって、その理由がわかった。膜材の外装は本体から切り離した鉄骨架構によって自立しているのだ。
本体はツーバイフォー。つまり木造だ。これに影響を与えないために、狭いスペースで垂直に外装を自立させなければならなかった。

工期が短いための苦肉の策だが、結果的に隈氏の新たな一面を引き出すデザインとなっているように思えた。

隈氏が設計した4つのパビリオンのうち、今回の取材で唯一見られなかったのが「ポルトガル館」だ。これはいかにも隈氏らしい方のデザイン。外装に無数のロープを吊るして、海の色のグラデーションや波を表現するという。気になる方は公式サイトの紹介ページ(こちら)を。
中央線の新駅「夢洲駅」が開業
ところで、隈氏の設計ではないが、今回の取材で初めて「夢洲(ゆめしま)駅」を利用した。1月19日に開業した大阪メトロ中央線の新駅だ。これまで中央線の西側の終点だった「コスモスクエア駅」から約3.2km延伸した。


この駅のオープンスペースが広くてびっくりした。内装の設計は大阪市高速電気軌道と安井建築設計事務所、施工は大林組。


夢洲駅は東ゲートの目の前で、マレーシア館などの海外パビリオンエリアにも近い。
これまではコスモスクエア駅からタクシーで万博現場のゲートまで行くのに片道数千円かかっていた。私見ではあるが、万博が実感としてようやく身近に感じられるようになった。格段に行きやすくなったので、「BUNGAでうちの施設をリポートしてほしい」という方はぜひお声がけください。(宮沢洋)
