充実資料がうらやまし過ぎる!万博総まくり展@国立近現代建築資料館が開幕

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 かつて雑誌の編集長をやっていた人間から見ると、「このタイミングでこんな充実した資料を使って万博総まくりの特集ができるなんてあり得ない!うらやまし過ぎる!!」という感じだ。3月8日(土)から東京・湯島の文化庁国立近現代建築資料館で始まる「日本の万国博覧会 1970-2005」第1部の内覧会に行ってきた。理由は後述するが、本展で必ず見てほしいのはこの2点の原図だ。

菊竹清訓「エキスポタワー・塔広場」の検討中図面(東立面図、1968年)の一部
大谷幸夫「住友童話館」9階詳細図の一部

 まずは公式サイトの趣旨文からポイントを引用(太字部)。

日本国内では、これまで日本万国博覧会(大阪万博、EXPO’70、1970年)、沖縄国際海洋博覧会(1975年)、つくば国際科学技術博覧会(1985年)、国際花と緑の博覧会(1990年)、日本国際博覧会 愛・地球博(2005年)の5回の万国博覧会が開催されており、大阪・関西万博[ 2025年4月13日(日)–10月13日(月) ]がそれに続き、6回目ということになります。

本展覧会は、当館が所蔵する図面や企画段階の資料を中心とした展示を行い、これまでの5回の万国博覧会の会場計画と施設デザインに関する理解を深めていただくことを目的とします。本展覧会を通じて、万国博覧会が果たした建築史上の役割の一端を理解しながら、博覧会建築ならではの建築デザイン上の創意工夫をご鑑賞ください。

 会期は約半年の長丁場で、前半(3月8日~5月25日)の第1部は「EXPO’70 技術・デザイン・芸術の融合」、後半(6月14日~8月31日)の第2部は「EXPO’75以降 ひと・自然・環境へ」だ。つまり、すぐに見られる第1部は、1970年開催の前・大阪万博のプロジェクトが中心である。

 筆者(宮沢)はこの資料館が開館したときからほとんどの展覧会を見ており、誰の図面が寄贈されているかも大体知っている。なので、前・大阪万博がテーマと聞いて「誰のどのプロジェクトが出る」とおおよそ想像がついた。想像はほぼ当たっていたのだが、今回は、知っているプロジェクトでも「見たことのない図面」がたくさん出ている!

 例えば、菊竹清訓の図面はここで何度も食い入るように見てきた(ご存じない方もいるかもしれないが筆者は大の菊竹ファンで『菊竹清訓巡礼』という本も過去に出している)のだが、冒頭に載せた「エキスポタワー・塔広場」の検討中図面は初めて見た。

 筆者が知る「エキスポタワー」はこのように↓3本足で立ち、上の方にキャビンがごちゃごちゃっとからみつく。

 しかし、この図面↓が描かれた1968年3月時点(1970年3月開幕なのでかなりギリギリ)では、4本足でこんなに立体的にキャビンが付いていた!

代謝する高層建築の提案ではなく、代謝する都市建築の提案だったのだ。書き込みから立ち上がるオーラで、これがアイデアレベルではなく、やる気まんまんであったことが伝わってくる。

 菊竹クラスになると有名建築が多すぎて、こういうボツ案の図面はいつもの展示でははしょられてしまうのだ。

キュレーションを担当した小林克弘氏(東京都立大学名誉教授)が説明してくれた

 もう1つの必見プロジェクトが、大谷幸夫の「住友童話館」。55年前にこれが本当に実現したということが信じられない。

検討段階のスケッチ。まるでアニメ…

 このSFみたいな造形を、なぜあの生真面目そうな大谷幸夫が?(←実際に取材したことのある筆者の印象)…とずっと不思議に思っていたのだが、この詳細図↓を見て納得。

特に右側の10分の1詳細図が息を飲む迫力

 この細部へのこだわりは確かに大谷幸夫。10分の1スケールの図面が、破れそうなほどに修正されている。外観写真を見て「きっと大味な建築だったんだろうな」と舐めていたことを反省。この図面を見て見方が変わった。実物、見たかったなあ。

 大谷幸夫の図面類は比較的最近寄贈されて整理中だったので、「住友童話館」関連がこんなにずらっと並ぶのはこれが初めてだ。

この立面図(上の写真の右から2番目)、描けと言われたら気が狂う…

 ただ、こういうトンデモ建築群のプロセスを見て、これから大阪・関西万博に向かう私たちが何を学ぶべきかは難しいところだ。そういう意味では3月23日に行われるこのシンポジウムはすごく面白そう。

主題:EXPO’70(大阪万博)を回想し、再考する
日時:3月23日(日)14:00~15:30
場所:国立近現代建築資料館、展示室前ロビー(2階)

パネラー:
「大阪万博の会場計画」 田路貴浩(京都大学大学院工学研究科建築学専攻 教授)
「お祭り広場のデザイン」前田尚武(京都美術工芸大学 特任教授)
「世界の万博建築の系譜」小林克弘(当館主任建築資料調査官・東京都立大学名誉教授)
進行・王聖美(当館研究補佐員)
予約は不要です。座席30名分を準備しますが、参加者が多い場合、立見席となる場合がありますので、ご了承願います。

 ちなみに、国立近現代建築資料館の名物である“タダでもらえるすごい図録”は、今回、第2部になったら配布されるとのこと。第2部も絶対に行かなきゃ、である。(宮沢洋)

■展覧会概要
「日本の万国博覧会 1970-2005」
第1部「EXPO’70 技術・デザイン・芸術の融合」
会期:2025年3月8日(土)~5月25日(日)

第2部「EXPO’75以降 ひと・自然・環境へ」
会期:2025年6月14日(土)~8月31日(日)
休館日:毎週月曜日 但し、祝日の月曜日は開館し翌平日休館。
(5月5日、6日、7月21日、8月11日開館、7月22日、8月12日休館)
(5月26日~6月13日展示入れ替えにつき休館)
平日、湯島合同庁舎正門より入館の場合無料

土日祝は、旧岩崎邸庭園(入園料一般400円)からのみ入館可能
時間:10:00-16:30
会場:文化庁国立近現代建築資料館(東京都文京区湯島4-6-15 湯島地方合同庁舎内)
公式サイト:https://nama.bunka.go.jp

「国立近現代建築資料館」のこれまでについてはこちら↓の記事を。