第2部も充実の「日本の万国博覧会 1970-2005」展@国立近現代建築資料館、7月24日からは「ギャラリー・間」との“万博ハシゴ”も!

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 東京・湯島の文化庁国立近現代建築資料館で6月14日から「日本の万国博覧会 1970-2005」展 第2部「EXPO’75以降 ひと・自然・環境へ」が始まった。早速、初日に行ってきた。

会場風景。1975 沖縄国際海洋博覧会(左)と1985つくば国際科学技術博覧会(右)の間に大きな意識変化があるように感じた。詳細は記事の後半で。なお、展示物には写真撮影不可のものも多いが、本記事は許可を得て撮影している(写真:宮沢洋)

 「第1部」の開幕リポート(こちらの記事)で「このタイミングでこんな充実した資料を使って万博総まくりの特集ができるなんてあり得ない!うらやまし過ぎる!!」と書いた。その展示の後編である。今回も第一感はうらやましい! しかも、誰もつくったことがないであろう“日本の博覧会通史”の図録をタダで配布してしまうなんて…。図録の「タダ配布」はいつものことだが、今回の資料性はいつもにも増してすごい。

 この図録、売り物だったら軽く3000円はするなあ。別棟の1階事務室前(右上の写真)で無料でもらえる。

 3月8日~5月25日に開催された第1部は、ほぼすべてが1970大阪万博(日本万国博覧会)に関するものだった。第2部ではそれを会場の4分の1にぎゅっと圧縮し、大阪万博以降に開催された4つの博覧会の資料を展示している。以下、公式サイトより(太字部)。

第2部 展示内容(2025年6月14日~8月31日)
第2部「EXPO’75以降 ひと・自然・環境へ」では、日本万国博覧会(大阪万博)の一部展示替えを行い、他の4つの博覧会に関する収蔵図面と資料を展示します。EXPO’70の技術を前面に出した総合テーマから、人間の居住、海や山などの自然、さらに地球の環境への配慮へと総合テーマが変化し、それに伴って、博覧会の会場計画の手法や建築デザインも変化を遂げる様子を展示します。

Section 1.日本万国博覧会
主な展示:第1部展示資料を入れ替えます。

本展では床にもわかりやすくサインが

Section 2. 沖縄国際海洋博覧会
主な展示:菊竹清訓 「アクアポリス」、村田豊「芙蓉グループパビリオン」、木村俊彦「水族館(槇文彦設計)」構造設計資料

スケッチがうまっ! 菊竹清訓による「アクアポリス」のスケッチ
公式ガイドマップの「水族館」(設計:槇文彦のページ。こういうのって建築専門誌では見ることがないので、楽しい
ここからつくば科学博へ

Section 3. つくば国際科学技術博覧会
主な展示:大髙正人「エキスポホール」、大髙正人「外国館」、菊竹清訓 「外国館」、高橋てい一+第一工房「迎賓館」、関連資料に、川添登「会場計画資料」

Section 4. 国際花と緑の博覧会
主な展示:「建築都市ワークショップ旧蔵『13のフォリー』資料」

磯崎新「水の館」。これは恒久施設として計画された

Section 5. 日本国際博覧会 愛・地球博
主な展示:菊竹清訓 「グローバルループ」、高橋てい一+第一工房「瀬戸愛知県館」

今回の大阪・関西万博の「大屋根リング」に相当する「グローバル・ループ」(設計:菊竹清訓・環境システム研究所設計共同体)。柱脚部掘削計画図など

「トンデモ建築」はつくば科学博まで、愛・地球博以降はCAD図

 第2部を見て思ったことが2つあって、1つは万博における「トンデモ建築」は1975年の沖縄国際海洋博覧会で終わる、ということ。1985年の「つくば国際科学技術博覧会」から万博の建築は急激に現実的になる。これからバブルに向かおうという時期ではあったが、万博建築に求められるものはすでに現在とかなり近かったことがわかる。

“ミスター万博”こと菊竹清訓が急におとなしい計画に。「Bブロック外国館」

 ざっくり言うと、デザインの方向性が「驚き」から「納得・共感」へとシフトしている。第1部のリポートの最後の部分に、「こういうトンデモ建築群のプロセスを見て、これから大阪・関西万博に向かう私たちが何を学ぶべきかは難しいところだ」と書いた。そういう視点で言うと、現在開催中の「2025大阪・関西万博」の建築群は、1970大阪万博や1975沖縄海洋博と比較してもあまり意味はなく、「1985つくば国際科学技術博覧会」→「1990国際花と緑の博覧会」→「2005日本国際博覧会 愛・地球博」→「2025大阪・関西万博」という流れの中で進化や停滞を議論するべきかもしれない。

 もう1つ思ったことは、手描きでない図面の熱量の少なさ。2005愛・地球博から図面がCADになっているのだ。愛・地球博の「瀬戸愛知県館」は当時、実物を見てとてもいい建築であることを知っているが、濃密な手描き図面を見てきた後でCAD図を見ると、「あれっ」と急に冷めた感じがする。これは、今現在の建築が50年後、100年後にどう人に伝わるかを考えたときになかなか悩ましい問題かも、と思った。

瀬戸愛知県館(高橋てい一+第一工房)。設計密度の高い建築なのだが、CAD図だとさらっとした建築に見えてしまう

 ついでに言うと、まさに今注目の“大阪・関西万博若手20組”(こちらの記事参照)が全員参加でつくり上げる展覧会「新しい建築の当事者たち」が、7月24日(木)から10月19日(日)まで「TOTOギャラリー・間」(東京・乃木坂)で開催される。詳細はこちら→https://jp.toto.com/gallerma/ex250724/index.htm

 国立近現代建築資料館からTOTOギャラリー・間へは千代田線で1本、20ほどで移動できるので、両施設をハシゴすれば、「1970大阪万博」→「1975沖縄海洋博」→「1985つくば科学博」→「1990国際花と緑の博覧会」→「2005愛・地球博」→「2025大阪・関西万博」という完璧な流れを体験できる。しかもどちらも無料! ハシゴ可能な期間は7月24日(木)~8月31日。おお、夏休み中ずっと見られる。今さらだけど、スタンプラリーをやったらどうだろう。イラスト描きますよー。(宮沢洋)

■展覧会概要
「日本の万国博覧会 1970-2005」展  第2部「EXPO’75以降 ひと・自然・環境へ」
主  催:文化庁
企  画:文化庁国立近現代建築資料館

協  力:公益財団法人 東京都公園協会
会  場:文化庁国立近現代建築資料館
会  期:第2部「EXPO’75以降 ひと・自然・環境へ」 2025年6月14日(土)~8月31日(日)

     休館日:毎週月曜日 但し、祝日の月曜日は開館し翌平日 休館。
     (7月21日、8月11日開館、7月22日、8月12日休館) 
     (第1部「EXPO’70 技術・デザイン・芸術の融合 」 2025年3月8日(土)~5月25日(日))

時  間:10:00-16:30

■シンポジウム(第2部)のご案内
下記の通り、館内シンポジウムを開催いたします。参加に際して、予約は不要です。座席30名分を準備しますが、参加者が多い場合、立見席となる場合がありますので、ご了承願います。皆様のご参加をお待ちしています。

主題:「知られざる試みと隠れた意義 ― EXPO’75以降の万博会場デザインについて」
日時:6月28日(土)14:00 ~ 15:30(講演各20分の後、討論・質疑応答)
場所:文化庁国立近現代建築資料館 展示室前ロビー(2階)
パネラーおよびテーマ:

「幻のマスタープラン群 つくば科学万博」小林克弘(当館主任建築資料調査官・東京都立大学名誉教授)
「Osaka Follies/大阪フォリーは役立たず建築だったのか? 花と緑の博覧会1990年」 鈴木明(近現代建築論、工学博士)
「EXPOにみる建築のTURNING POINT―between analogue – digital」宇野求(建築家、工学博士)
進行:王聖美(当館研究補佐員)

 第1部のリポートはこちら↓。