馬頭広重美術館の「隈研吾建築展」と再出発講演会を見た! 雨降って地固まる?

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 現地に行ってみると、あんなに物議を醸していたのは何だったんだろうという感じだ。那珂川町馬頭広重美術館のリニューアルを記念する特別展「馬頭広重美術館への道 隈研吾建築展」(6月27日〜9月13日)と、特別講演会(8月1日)を見てきた。

展覧会場の入り口にて(写真:宮沢洋、以下も)
2026年3月にリニューアルオープンした那珂川町馬頭広重美術館
隈氏の講演会の様子
講演会の冒頭で隈氏を紹介した益子純恵・那珂川町長(2025年10月に就任)は、馬頭広重美術館を「私たちの誇り」と表現していた

 外装のルーバーをやり替えたことについては、すでに3月に書いているのでそちらを見てほしい。

馬頭広重美術館を節目に隈氏の“人生”を見せる展示

 今回、見に行ったのは6月27日から始まった隈研吾展と、台風で延期になっていた記念講演会だ。まずは展覧会からリポートする。

 展覧会は下記のような流れ。プロジェクトの数を絞って、隈氏の建築観の変遷というか、“人生”そのものを見せるような展示だ。当然、核になる馬頭広重美術館についてはたっぷり展示している。

序章 ポストモダンと挫折
第1章 転機 素材・職人との出会い
1-1 反オブジェクト

1-2 梼原
1-3 栃木
第2章 馬頭広重美術館への道
2-1 馬頭広重美術館建設へ
2-2 まちに溶け込む美術館
2-3 25年を経て改修へ
2-4 新たな船出

展示はバブル末期の「M2」から始まる
渋い! 「ヴェネチア・ビエンナーレ’95 日本館会場構」
「ちょっ蔵広場」の展示。手前のコンセプチュアルな模型は、伝説の模型製作者、坂野正明氏(2019年に逝去)が制作したものとのこと
後半は馬頭広重美術館の展示
この写真、すごい。雨の馬頭広重美術館。撮影者は浜田昌樹氏(川澄・小林研二写真事務所)。隈氏も講演会で褒めていた
改修前と後のルーバーの展示も。屋根は八溝スギ風のアルミ(木目のフィルムを真空転写したもの)、壁は実際の八溝スギ。相当じっくり見ないと違いがわからない
改修後の外観。。屋根は八溝スギ風のアルミ、壁は実際の八溝スギ。屋根ルーバーは色味が5種類、かつ自然のランダムさを表現できる木目パターンが7種類あり、全部で35パターンのルーバーを製作した

 この改修については、思うところのある人も多いと思う。特に自身で設計する人にとってはかなり本質的な問いだ。そういう人は、この展覧会に合わせて見に行くと、自分の考えが整理されると思う。会期は9月13日まで。ただし、8月3日(月)~7日(金)は展示替え休館なので、見に行く人は後期が始まる8月8日(土)以降に。

地元の人たちを引き込む講演会

 朝イチで展覧会を見た後、美術館から歩いて10分ほどの馬頭総合福祉センターの集会室で10時半から90分の講演会。演題は「自然+職人+アート、そして馬頭広重美術館」。

 隈氏の話のうまさは今さら言うまでもないが、今回も(筆者にとっては)知っている話ばかりなのに感動した。馬頭広重美術館の建設時の話から始まって、プロジェクトの話をあれこれしたあとに、フォーカスを馬頭広重美術館にぎゅっと寄せて、「自分の出発点はここだ」と感謝で締める展開が素晴らしい。

広重が描く雨の「線」にヒントを得て、木ルーバーで包むことにつながったというエピソードからスタート
国立競技場の一番上の庇下のルーバーも木目プリントのアルミだという説明
最新の話題として、今年4月に完成したフランス・アンジェの「Saint Maurice, Angers」ファサードのリノベーションの話題も。「物議を醸したが、物議を醸すのは慣れていますので…」と笑いを取る
最新話題その2は、ロンドンのナショナル・ギャラリーの新棟の国際コンペ。隈研吾建築都市設計事務所+BDP (英国) +MICA (英国)のチームが最優秀案に選定された。これは当サイトですでに報じた(こちら

 フランス・アンジェのプロジェクトについては、本サイトで取り上げていなかったので、少し紹介しておく。アンジェのサン・モーリス大聖堂は、12世紀に建設されたロマネスク様式のカテドラル。近年、中世(12世紀)から近代(17世紀)にかけての貴重な多色刷りの彫刻が発見された。これを保護するための、入り口の覆い屋が計画され、2020年に国際コンペで隈氏が選ばれた。

© Kengo Kuma & Associates
© Kengo Kuma & Associates
© Kengo Kuma & Associates

 アンジェのリノベーションも、ロンドンのナショナル・ギャラリーも、「線」による表現や、自然と人工物を二項対立にしない考え方は、馬頭広重美術館の設計が出発点だと分析した。

 たぶん、聞いていた人のほとんどが隈建築ファンになったと思う。あれだけ叩かれていたのに、もう1つ何か建てさせようみたいな気持ちになる(個人の見解)。

 翌日の地元・下野新聞には「建築家・隈研吾さん、馬頭広重美術館で講演『この場所から教わった』 設計の意図を語る」という見出しの記事が載っていた。

 ところで、展覧会の図録(500円とリーズナブル)がなかなか面白い。そこに「隈研吾栃木県建築集」というのが載っていて、この日の午後は急きょ予定を変えて、栃木の隈建築を車で巡ってみた。それは後編で(8月7日公開)。(宮沢洋)

前から読むと、展覧会の図録、後ろから読むと「隈研吾栃木県建築集」というつくり

■展覧会概要
「馬頭広重美術館への道 隈研吾建築展」
開催趣旨:
隈研吾氏設計の那珂川町馬頭広重美術館は2025~26年に屋根と外壁の改修工事を行いました。
隈氏は、当館の設計を手掛けるまでに建築を建てる場所の自然環境やその地域で産出される建築に適した自然素材、地元の職人の技術、地域の歴史的な記憶、芸術、それらを採り入れながら設計することの大切さを経験してきました。その経験を十分に生かして生まれたのが馬頭広重美術館です。以後、当館は隈氏の建築スタイルの基本的なあり方を示すものになって行きました。
本展は馬頭広重美術館が生まれるまでの隈氏の道のりに焦点を当て、当館のリニューアル完了を記念して開催する展覧会です。

会期:
2026年6月27日(土)〜 2026年9月13日(日)
前期:2026年6月27日(土)〜 2026年08月02日(日) ←前期はすでに終了
後期:2026年08月08日(土)〜 2026年09月13日(日)
開館時間:午前9時30分より午後5時まで(但し入館は4時30分まで)
休館日:月曜日(祝日は開館)、祝日の翌日、展示替え休館(8月3日~7日)
入館料:
大人700円(630円)、高大生400円(360円)
※()は20名以上の団体料金。

※中学生以下は無料。
※障がい者手帳等をお持ちの方・付き添1名は半額。
後援:読売新聞東京本社宇都宮支局、毎日新聞宇都宮支局、朝日新聞宇都宮総局、株式会社下野新聞社、産経新聞社宇都宮支局、株式会社とちぎテレビ、株式会社栃木放送、株式会社エフエム栃木
特別協力:株式会社隈研吾建築都市設計事務所
協力:那珂川町馬頭広重美術館友の会

後編はこちら↓。