京都国立近代美術館で3月6日から開催予定だった「チェコ・デザイン 100年の旅」展。新型コロナウイルス感染拡大防止のために休館中だが、同館の特定研究員で建築史家の本橋仁氏に案内してもらう機会を得た。展示の仕方を、グラフィックデザイナーの西村祐一氏と一緒に考えたという。
本展は1900年以降のチェコ・デザインの変遷を、チェコ国立プラハ工芸美術館所蔵の作品を中心とする約250点により紹介するもの。オーストリア=ハンガリー帝国が崩壊し、チェコスロバキア共和国が独立を宣言したのは1918年のことだ。
京都国立近代美術館は、岡崎市美術博物館、富山県美術館、世田谷美術館に続いて4つ目の会場となる。
木製フレームで作品とキャプションを分ける
国立の美術館や博物館は日・英・中・韓の4カ国語対応なので、解説文のボリュームがどうしても大きくなる。一方、本展のようなデザイン展で紹介するのは日常生活で使われてきた身近なもの。展覧会では普通、キャプションは展示品の傍に置かれるが、日常生活でそういうことはない。そこで本橋氏は「展示品とキャプションを分けたい」と考え、什器の外側に木製フレームを設けた。自らCADソフトを駆使して設計したという。
展示は、1章アール・ヌーヴォー、2章チェコ・キュビズム、というように分け、全体で10章の構成。各章の始まりにはその時代を代表する椅子を置いた。「当時のデザインや技術、素材の特徴が一目でわかるから」と本橋氏。
デザインの変遷は、ここからここまで、ときっぱり区切られるものではない。次の時代の兆しがおぼろげに見える――。仕切り壁の板が一部抜けていたり、防獣ネットで向こう側が見えたりするのは、そんな意図によるものだ。
本橋氏が「特に面白いと思う」と話す6章は1950〜60年代。チェコスロバキアは第二次世界大戦後の1948年に事実上の社会主義国となる。その直後のデザインが見られ、同国のデザインがこの時代に独自に発展したことがうかがえる。
展示の最後は、人気の高いチェコのおもちゃとアニメ。アニメはエントランスロビーの壁にも投影。
ロビーに投影したアニメは、吹き抜けに面した開口部から見ることができる。この開口部は展示のために通常は塞がれている。今回は、槇文彦が設計した同館の建物で特徴的な階段を上から眺められる貴重な機会でもある、というわけだ。ちなみに同館は1986年に竣工。前年に東京・青山のスパイラルが竣工した。
京都国立近代美術館の「チェコ・デザイン 100年の旅」展の会期は2020年5月10日(日)まで。早期の開館を願いたい。なお、「ニコニコ美術館」で本展の様子を動画で見られるので、開館まではこちらでお楽しみください。無料、約2時間48分。(長井美暁)