会期延長6月27日まで:大阪メトロもこの人!色部義昭氏監修の日本デザインセンター60周年展で「品の良さ」を考える

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 日本デザインセンター東京本社(東京・銀座)で開催中の展覧会「VISUALIZE 60」(現在は「vol.2」)は、当初、今週金曜(4月16日)で終了予定だったが、密にならない環境で観覧してもらうために、会期を6月27日(日)まで延長する。入場無料、予約制。

 会期延長に伴い、原研哉氏、色部義昭氏、三澤遥氏によるギャラリーツアーも開催する。詳細はこちら。以下は「vol.1」開幕時のリポートなので、展示内容は異なる(2020年11月9日公開)。「vol.2」の想像を膨らませる参考に。

 日本デザインセンターが創業60年を機に企画した展覧会「VISUALIZE 60 Vol.1」が明日11月10日から東京・銀座の日本デザインセンター東京本社13階「POLYLOGUE(ポリローグ)」で始まる。展覧会のディレクターであるグラフィックデザイナーの色部義昭氏(日本デザインセンター取締役)に、ひと足早く会場を案内してもらった。

色部義昭氏。グラフィックデザイナー。日本デザインセンター取締役。1974年生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程修了後、日本デザインセンターに入社。2011年より色部デザイン研究所を主宰。国立公園ブランディング、草間彌生美術館・市原湖畔美術館・天理駅前広場CoFuFun・須賀川市民交流センターtetteなどのVIとサイン計画を担当。「富山県美術館の目印と矢印」などの展覧会デザインなど、グラフィックデザインをベースに平面から立体、空間まで幅広くデザインを展開(写真:宮沢洋、以下も)

 なぜ建築ネットマガジンを謳う「BUNGA NET」で日本デザインセンターなのか。理由1:もともと私(宮沢)は日経アーキテクチュア(建築)志望ではなく、日経デザイン志望だったので、日本デザインセンターにある種の“憧れ”がある。理由2:上の色部氏のプロフィルを見ても分かるように、日本デザインセンターは近年、公共建築や都市のサインなど、建築分野とも関係が深くなっている。

 そもそも日本デザインセンターを知らない人もいると思うので、簡単に説明しよう。同社は1959年創業のデザイン制作会社。歴史が古いことに加え、あまたあるデザイン会社とは成り立ちがちょっと違う。「日本のデザインの発展と質的水準の向上を図る組織」を目指した亀倉雄策、原弘、永井一正ら一流クリエイターによって設立された。そんな伝説的な人たちが設立メンバーであり、しかも、永井一正氏は90歳を超えた今も現役だ。

永井一正氏の「LIFE」(1991年~)

 現在の社長は原研哉氏。名前くらいは聞いたことがあるだろう。60年間、デザイン界のトップを走り続ける会社である。そして、これは主観になるが、いつの時代も同社の手掛けるデザインはなんとも「品が良い」。本展「VISUALIZE 60 Vol.1」も、そんな「品の良さ」にゆったりと浸ることができる。

 展覧会の会場は本社13階で、通常は社員のライブラリーとしても使われているスペースだ。本筋とは離れるが、並んでいる本の背表紙を見るだけでも楽しい。

 60周年に合わせた「60縛り」で、日本デザインセンターの今を60のプロジェクトで伝える。コロナ禍で密を避けるため、60を30ずつ前後期に分けて展示する。会場をデザインしたのは、案内してくれた色部氏だ。もともと室内に露出しているグレーの円柱を生かして、円とグレーで展示台などをつくった。

「大阪メトロ」の新ロゴに見る「品の良さ」

 冒頭で触れたように、近年の同社の仕事には建築や都市に関わるものが多い。建築関係者は「あっ、これって日本デザインセンターだったのか!」と何度も思うだろう。

 例えば、2018年にリニューアルされた「Osaka Metro」(旧大阪市営地下鉄)のロゴ。これも色部氏のデザインだった。そうだったのか。

 実は、旧ロゴは建築好きには愛着があるものだった。円にコの字を重ねた通称「マルコマーク」と呼ばれるもので、なぜなら御堂筋線の各駅を設計した建築家の武田五一(1872~1938年)によるデザインだったからだ。「○(マル)」は大阪市の頭文字「O(オー)」とトンネルの形を、「コ」は高速鉄道の「コ」の字を表したものといわれている。(旧マークを見たい人はこちらの記事を参照)

 85年間使われたこのマークに代わるマークをつくるのは相当なプレッシャーだろう。しかも「東京のデザイン会社が?」というアウェー感も加わる。でも、少なくとも私は新デザインを見たとき、「ニヤッ」と笑い、すぐに納得した。

 グルグル巻きのリボンを横から見ると「メトロのM」、90度方向を変えて見ると「大阪のO」。武田五一の思想がさらりと踏襲されている。なんて品の良いデザイン。
 
 と、そんな感想を思い出していて、「あっ」と気づいた。本展の会場全体に漂う「品の良さ」も同じことではないか、と。展示されているどのデザインも、すっきりと洗練されていることに加え、「ニヤッ」と口元が緩んでしまうユーモアが潜んでいるのだ。

 すっきりとルール付けるだけなら、それは「品行方正」。落ち着いて見ることはできても面白味はない。「品が良い」というのは、それに加え、人の興味を引く茶目っ気がある、ということなのだ。だから、建築家たちにも重用されるのだろう。同社がどんなふうに建築や都市と関わっているのかはぜひ会場で見てほしい。(宮沢洋)

展覧会の公式ページ→https://visualize60.ndc.co.jp/