OMAの重松象平氏が全力で振り切った「ディオール」展@東京都現代美術館に目が点!

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 遅ればせながらの注目展リポート第二弾は、東京都現代美術館で2022年12月21日から始まった「クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ」だ。「建築展」ではないが、建築関係者ならば絶対に行っておくべき展覧会だと思う。ファッションとは縁遠い筆者だが、会場デザインを見るだけで十分、入館料(大人2000円)の元がとれた。評価は人それぞれとして、今後の話のタネになる。会期は2023年5月28日まで。

(写真:宮沢洋)

 クリスチャン・ディオール展は2017年からヨーロッパ、アメリカ、アジア各国など6カ所を巡回してきた。会場デザインは同じではないという。

会場は柳澤孝彦氏が設計した東京都現代美術館。右手が クリスチャン・ディオール展入り口
展覧会の導入部

 普通の人よりも展覧会を見ていると思われる私(宮沢)だが、これほど会場構成にお金がかかっていそうに見える展覧会は見たことがない(実際の金額は分からないが、そう見える)。東京展を誰が担当したのかを知れば納得。会場デザインを担当したのは、OMAのパートナーである建築家、重松象平氏だ。公式資料には「日本文化へのオマージュとしてデザインした新しい空間演出」とある。確かにそんな印象を受けるデザインだ。

 「日本文化へのオマージュ」と聞くと日系何世みたいだが、重松氏は1973年福岡県生まれの日本人だ。1996年に九州大学工学部建築学科卒業後、オランダへ留学。1998年よりOMAに所属、2006年よりOMAニューヨーク事務所代表を務める。

 本展の会場は、一目見て「これは日本人の発想ではない」と感じる。確かにところどころに日本らしさを感じさせる素材やモチーフを使っているが、普通の日本人であれば、もっと本来の使い方に寄せると思う。その方が予算が読みやすいからだ。ところが本展は、いい意味で“コスト感覚のない外国人”がデザインしたような空間のつくり方だ。もちろん本当にコスト感覚がなかったらこんな展覧会は実現できないので、日本のことを知っている重松氏があたかも外国人目線による「日本文化へのオマージュ」として「新しい空間演出」を行ったという表現は的を射ている。

天井は切り紙

 ネタばれになるので、展覧会を見ようと思っている人は、ここから先の記事は見た後に読んでほしい。

インパクトを増す巧みな「鏡」使い

 東京都現代美術館での展覧会の印象を大きく左右するのが、地階と地上階を貫通する巨大な吹き抜けだ。ここが陳腐な展示だと、他が良くてもがっかりしてしまう。本展の吹き抜け展示は、私がこれまでに見た中でもベスト3に入るものだった。こんな感じだ。

 本展の吹き抜け展示を最初に見たときは、いつもの空間の1.5倍くらいの印象を受けてびっくりした。先ほどコスト感覚という話をしたが、よく見ると、上部は実物の裏側を鏡に反射させている(下の写真の赤線部分)。なるほど、つくり込んだ展示を鏡でさらに大きく見せているわけか。

 ちなみに、昨年行われた「ジャン・プルーヴェ展」での吹き抜け展示はこんな感じだった。

2022年7月16日(土)~10月16日(日)に開催された「ジャン・プルーヴェ展 椅子から建築まで」の吹き抜け展示。これもなかなかすごかった

 鏡を巧みに使った場所はほかにもある。この部屋も上部は鏡。

 先ほどの切り絵天井の部屋では、鏡を水盤に見立てている。

 終盤のボールト状の展示室は、実は天井アーチの半分が鏡。これもうまい。

 いろいろな意味で、振り切れている。一塁打は狙っていない。見る人によって「ホームラン!」と思うかもしれないし、大ファールかもしれない。ファッションが専門でない私なりに感じたのは、その振り切り感が展示されているディオールの作品群にも通じるということ。会期が5月28日までと長いので、ぜひ見てみることをお勧めする。(宮沢洋)

■展覧会概要
クリスチャン・ディオール、 夢のクチュリエ
会期:2022年12月21日(水)~2023年5月28日(日)
休館日:月曜日(1月2日、1月9日は開館)、12月28日~1月1日、1月10日
開館時間:10:00~18:00(展示室入場は閉館の30分前まで)
会場:東京都現代美術館 企画展示室 1F/B2F
観覧料:一般2000円/大学生・専門学校生・65歳以上1300円 /中高生以下無料
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都現代美術館 
特別協力:クリスチャン ディオール クチュール
公式サイト:https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/Christian_Dior/