最強の道後建築案内07:安藤忠雄氏の知る人ぞ知る傑作「瀬戸内リトリート青凪」を見た!_BUNGA NET

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 今回は松山市内の安藤忠雄氏の建築を2つ巡る。メインはこの建築だ。

この建築、知ってますか?(写真:宮沢洋)

 その前に、一般によく知られているのはこちらの「坂の上の雲ミュージアム」の方なので、こちらから。松山城本丸の南側、萬翠荘に向かう坂道の途中にある。

◆坂の上の雲ミュージアム
松山市一番町三丁目20番地
設計:安藤忠雄建築研究所
竣工:2006年
参考サイト:https://www.sakanouenokumomuseum.jp/about/construction/

 大通りの裏側の変形敷地でも、この場所ならではの造形を生み出すのはさすが安藤氏。

 地下1階、地上4階建て。1階はピロティ状で、スロープで2階にアプローチする。内部は三角形平面の各階をスロープで上る構成。分かりやすい「坂の上」の表現だ。天候によっては、西側の開口部から萬翠荘(設計:木子七郎)がよく見える。

展示されている模型。左上が萬翠荘、右下の三角形が坂の上の雲ミュージアム

 三角形の中心にはマッシブなコンクリートの階段が架かる。

大王製紙がゲストハウスとして建てた安藤建築


 そして、松山のもう1つの安藤建築は、あまり知られていないが、これが本当にすごかった。1998年に完成したホテル「瀬戸内リトリート青凪(あおなぎ)」である。正確に言うと、1998年に完成したときには「エリエールスクエア松山」という名の、大王製紙のゲストハウス兼ミュージアムだった。

 大王製紙が2015年にホテルとしてリニューアルし、(株)温故知新(東京)が運営するホテル「瀬戸内リトリート青凪」となった。

◆瀬戸内リトリート青凪(旧・エリエールスクエア松山)
松山市柳谷町794-1
設計:安藤忠雄建築研究所
竣工:1998年
参考サイト:https://www.setouchi-aonagi.com/

 敷地は「エリエール ゴルフクラブ松山」のすぐそば。松山市の中心部から車で30分ほどかかるので、出張のついでに見られる機会はなかった。ホテルになってからは、一般の見学は受け付けていない。今回は道後クリエイティブステイの特権で、事前にアポを入れて見学させてもらった。

 前面道路からは、石垣のような擁壁と建物の一部しか見えない。

 だが、施設内に足を踏み入れると、驚きとため息の連続。

 客室は全7室。いくつかを見せてもらった。絵画のように構成的なインテリアに加え、開口部から見える風景に目が点。

本館最上階のメゾネットタイプの客室(下の写真も)
本館4階客室のバルコニー

 単に「美しい風景」を見せるのではなく、建築を挿入することで「そこにしかない風景」を再構築している。軸線のずれや高さの違いによって、複雑な「見る・見られる」関係をつくり出しているのだ。
 

 この建築は、私が前職時代に編集に参加した「安藤忠雄の奇跡 50の建築×50の証言 (NA建築家シリーズ特別編)」(2017年、日経BP刊)の「50の建築」に選ばれていない。うーむ、痛恨のエラー。もし私が実物を見ていたら、絶対に選んだと思う(ちなみに「坂の上の雲ミュージアム」は選ばれている)。

 繰り返しになるが、基本的に見学は受け付けていないので、本当にすごいのかを確かめたい人は宿泊してみてほしい。安くはないけれど、あなたが安藤ファンであれば、自信を持ってお薦めする。

 宿泊の詳細や予約はこちらから→ https://www.setouchi-aonagi.com/

 今回の2件を紫のピンでマップに加えた。松山の辺りを拡大してみてほしい

 次回はいよいよ最終回。道後・松山建築マップを完成させる。(宮沢洋)

次回の記事:道後・松山巡り総まとめ(2021年12月31日公開予定)