【会期延長】10月11日まで>>東京国立近代美術館が「ピーター・ドイグ展」の3DVRを今日から無料公開、コロナ休館で急きょ撮影

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東京国立近代美術館は6月1日、臨時休館中の「ピーター・ドイグ展」を6月12日(金)から日時指定制で再開すると発表した。会期は10月11日(日)まで延長される。詳細は館のサイトで確認を。(以下の記事は2020年5月18日に公開したものです)

 東京・竹橋の東京国立近代美術館は、臨時休館中の「ピーター・ドイグ展」の3DVRを5月18日から無料公開する。

 それに先立つ4月29日、東京国立近代美術館とARTLOGUE(アートローグ)は、「ピーター・ドイグ展」の3DVR撮影を実施し、その様子を報道陣に公開した。公開は「三密」を避けるために、小人数に分けて行われた。

公開わずか3日で休館に

 ドイグ展は2020年2月26日(水)から6月14日(日)の会期で幕を開けたが、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため2月29日(土)から臨時休館となった。一般に公開されたのはわずか3日間。現在も再開のめどはたっていない。

 そこで、当初予定にはなかった会場内の3DVR撮影を行い、インターネット上でウォークスルー映像を無料公開することを決めた。撮影時、アートローグ代表取締役CEOの鈴木大輔氏(上の写真)は「展覧会を楽しみにしていた人のために、できるだけ早く公開したい」と語っていたが、それが5月18日から公開されることになった。

https://peterdoig-2020.jp/

(上記特設サイトの中盤あたり、「本展会場を3DVRで無料公開しています」という部分。ブラウザによっては見られない場合があるとのこと)

 今回の取り組みは、コロナで休館を余儀なくされている美術展が多い現状を踏まえて、アートローグが始動させた美術展のVRアーカイブ「ARTLOGUE VR」プロジェクトの一環。既に、休館から展覧会終了へと至った森美術館「未来と芸術展」でも、撤去前に3DVR撮影を実施済み。そちらは南條史生・前館長の解説を組み込む形で、5月1日から公開されている(こちら)。

図面なしで間取りを計測

 3DVRは、レーザー計測した「ものの表面」の位置情報と、4Kの高精度カメラで撮影した画像を統合し、室内をくまなく「点群データ」化していく。

 撮影機材は、住宅内など主に近距離の点群データ化に用いられるマターポート(Matterport、下の写真)をベースとし、これに遠距離でも使えるライカ製の3Dカメラを併用して行った。

 上の写真は、展示室内のおよその状況をつかむために撮影した36カ所のポイントを示したもの。部屋の形はあらかじめ平面を入力したわけではなく、各ポイントで計測した位置情報を組み合わせて、自動的に描いたものだ。これを200程度のポイントで繰り返し、精度を高めていく。撮影自体は1日で終わるという。

 実際の撮影作業を担当したエクスエージェント代表取締役CEOの中山智博氏(上の写真)によると、「森美術館の展示物は、裏側が多くて撮りにくかったが、それに比べるとここは難しくはない。マターポートはレーザーが届く距離が約5mなので、天井が高い空間も撮りにくい。それも、ここの天井はぎりぎり大丈夫だった」とのこと。

コルビュジエの「ユニテ」を描いた作品も

 説明が後回しになったが、ピーター・ドイグ(1959年生まれ)は、ロマンチックでミステリアスな風景を描く英国出身の画家。現役アーティストでは世界で最も重要な1人とも言われる。この展覧会は、ピーター・ドイグの初期作から最新作までを紹介する待望の日本初個展だ。下の写真の右の作品は、ル・コルビュジエが設計したユニテ・ダビタシオンを描いた「コンクリート・キャビンⅡ」(1992年)だ。

 WEB上とはいえ、ドイグのこれだけの作品が自分の好きな位置、好きなペース、しかも無料で見られるのはある意味、この状況ゆえの幸運かもしれない。

 ちなみに「ピーター・ドイグ展」の次の展覧会は、「隈研吾展(仮称)」。会期は2020年7月17日(金)~10月25日(日)※。隈さん、3DVRを面白がりそうだなあ…。会場の設営風景を3DVR化して毎日配信してはいかがでしょう? (宮沢洋)

※隈研吾展(仮称)は2021年7月~10月(予定)に延期になりました。詳細はこちらの記事→「京セラ美術館ついに開館」「隈研吾展は1年延期」必見ミュージアム総まとめ!(前編)