鮮やかな水彩建築画は別次元! 遠藤慧展が京都の新発信拠点「堀川新文化ビルヂング」で開催中

Pocket

 本サイトの連載「高架下建築図鑑」(現在はいったん休載中)でおなじみの遠藤慧さん(カラーデザイナーで一級建築士)の個展が京都市上京区「堀川新文化ビルヂング」のギャラリー「NEUTRAL horikawa」で6月6日(土)から7月5日(日)まで開催されている。タイトルは「“MEASURE” in Kyoto 空間を解剖するー実測スケッチの世界」。会期の終盤になってしまったが、会場の「堀川新文化ビルヂング」見たさもあって行ってきた。

「高架下建築図鑑」のイラストも2点展示されていた

 今回の遠藤慧展は2025年3月に東京・上野の「CREATIVE HUB UENO“es”」で開催された展示を再構成したもので(筆者はこれも見に行った)、今回の方がスペースが広いので、ゆったり・じっくりと見られる。

 以下、公式サイトより。

建築物のみならず家具や花瓶などの小物、食べ物にいたるまで、さまざまなものを測って描いた「実測スケッチ」を制作する遠藤慧による個展「“MEASURE” in Kyoto 空間を解剖するー実測スケッチの世界」を開催します。
その場を構成する要素を丹念に拾い上げ、建築的な視点から空間を捉え直す遠藤の作品をぜひご堪能ください。

■Artist Statement
実測スケッチは、建築空間を体験しその設計を身体的に会得するために、古くから建築家たちが試みてきた手法である。巻き尺を使って一つひとつの寸法を確かめることは、建築を理解し、寸法感覚を養うのに有効な方法だった。しかし現代においては、十数秒もあればスマホで3Dスキャンや大量の高解像度写真が手に入る。その簡単さゆえに、「その場で空間を実感する」という体験は希薄になっているように思う。


描こうとすることで初めて、実は何も観ていなかったことに気付く。何を主体に描くか、どの構図で描くか、どの縮尺で描くか──すべてを選び取らなければ、一本の線を引き始めることすら難しい。その難しさこそが、空間にじっくり向き合うために残された、数少ない手段の一つだと考えている。
設計者としては、建築、内装、家具といったレイヤーに分けて、別々の図面で考えてしまいがちである(そうする必要がある)。しかし本来空間の体験とは、その場で感じられる総体的なものではないか。そこで食べた食事や、その場に至るまでの道のりさえもが、空間の感じ方を決定付けているのはないか。スケッチを通じて私は、これらすべての要素を横断的に記録し、空間の質を捉えることを試みている。

2023年に発刊された『東京ホテル図鑑 実測水彩スケッチ集』(遠藤慧著、学芸出版社)は累計2万部を超えているそう。すごっ!

遠藤 慧/KEI ENDO
⼀級建築⼠、カラーデザイナー。東京藝術⼤学⼤学院 建築専攻修了。建築設計事務所を経て、環境⾊彩デザイン事務所に勤務。建築と色彩の視点から空間を観察・記録する「実測スケッチ」をテーマに制作を行う。主な著書に『東京ホテル図鑑 実測⽔彩スケッチ集』(学芸出版社)。講談社の雑誌『with』にて「実測スケッチで嗜む名作建築」連載中。

撮影・投稿大歓迎という太っ腹

 水彩絵の具で建築物を描く人は、建築設計者では珍しくないが、遠藤さんの絵は別次元にうまいと思う。1つには、色彩が明るい(凡人が水彩を使うと色が濁って暗くなるので、筆者は水彩では描けない)。

 そして、もう1つは建築としての正確さ。普通、水彩を描く人は細部をごちゃごちゃっとした線でごまかすものなのだが、遠藤さんの絵はディテールまで正確。だから、絵としてうまいうえに情報性がある。

 筆者の描く絵とは方向性が違うし、レベルも全く違うのだが、上の引用文の中に「描こうとすることで初めて、実は何も観ていなかったことに気付く」とあるのを見て、「ああ、そこは同じだ」と思った。「絵を見せたい」というよりも「空間を伝えたい」のである(たぶん)。

遠藤さんは食べ物を描くのも実にうまい。ショートケーキを真俯瞰で描いた人って、人類史上初なのでは…
これは、今回の個展にはないが、本サイトの連載のために描いてもらったビーフシチューの俯瞰図。なんてうまそうな…(元の記事はこちら

 ところで、もう1つの目的である「堀川新文化ビルヂング」を見る、という方も、素晴らしい体験だった。京都市の西陣の近くに2021年11月にオープンした複合施設だ。

住所は京都府京都市上京区皀莢町(サイカチチョウ)287

 「大垣書店」がプロデュースしたもので、1階に書店がある。1階にはこのほか、自家焙煎したコーヒーが楽しめるカフェ&バー、本作りや印刷物の相談ができる印刷会社による窓口、2階にはイベント・ギャラリースペースとレンタルオフィスがある。

 以下、公式サイトの主旨文。

本屋を興味の入り口に、ギャラリーで刺激を受けカフェでゆっくり休む。
当施設は、そんなふうに空間をリンクし循環させることで
人々の心にさまざまな喜びや感動を生み出し
より大きく育んでいける場所にしたいと考えています。
本当の豊かさは、日々の暮らしの延長線上にある。
『堀川新文化ビルヂング』があなたの豊かさを育む
「いつもの場所」となることを願っています。

『商店建築』2023年1月号によると、監修/業態開発研究所 野村直之
建築設計/都市生活工房事務所 TSUBAKI DESIGN一級建築士事務所
協力/構造設計 建築構造設計アンド・アール
   内装 ローバー都市建築事務所 照明計画 u.L.s
   サイン・グラフィックデザイン mondo
施工/田中工務店

 アポなしで行ったので、勝手に中の写真を撮るわけにいかなかったが、こんなものが各地にできたら、日本の文化レベルはすごく上がりそうな気がした。京都に行く人はぜひ。(宮沢洋)

「高架下建築図鑑」のまとめページはこちら↓