予想通り「長野県立美術館」が学会賞・建築大賞をW受賞、そのすごさは周辺の劇的変化

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 やはり、の結果だった。日本建築学会は4月19日、2022年の日本建築学会賞の各賞を発表した。「作品」部門の受賞は以下の3件(以下 敬称略、学会発表順)だった。

「旧富岡製糸場西置繭所」
齋賀英二郎(公益財団法人文化財建造物保存技術協会事業部保存管理計画担当技術主任)
斎藤英俊(京都女子大学名誉教授)
木村勉(長岡造形大学名誉教授)

「太田市美術館・図書館」
平田晃久(京都大学教授/平田晃久建築設計事務所)

「長野県立美術館」
宮崎浩(プランツアソシエイツ代表)

 何が「やはり」かというと、「長野県立美術館」が作品賞に選ばれたことだ。

(写真:宮沢洋、以下も)

 既報のとおり、私は今年の2月、「JIA日本建築大賞」の審査員の1人として、この長野県立美術館を大賞に選んだ。

速報:審査白熱!宮崎浩氏の長野県立美術館が「日本建築大賞」に

 JIAの大賞に選ばれた時点で、「学会の作品賞も取るだろうな」と確信していた。毎年、多くの名建築が生まれるわけだが、この建築のすごさは、建築単体のすごさにとどまっていないことだ。周辺環境が明らかに良くなっている。例えば上の写真は、紹介記事でよく見る霧の彫刻の写真だが、奥に写っている建物はこの美術館ではなく、既存の東山魁夷館(設計:谷口吉生)である。

 東山魁夷館だけでなく、隣接する公園、山側の道路と接続する屋上、善光寺から向かう道路。それらの変化は、建築関係者が現地審査に行ったら、誰でも心を打たれる。「1つの建築でこれほど周りに影響を与え得るのか」と。

 この建築は当サイトで何度か取り上げているので、今まで使っていない写真をいくつか。

善光寺の本堂から見る。私はこの見え方の変化に一番びっくりした。以前はこんなにまっすぐな抜けではなかった
レストランは大人気で、私は開館後、2度行ったが、2度とも予約で満席で食べられなかった(涙)
でも、屋上の軽食がおいしい! 天気が良い日はぜひ屋上で

 ちなみに両賞の選考委員は下記のとおり。

■日本建築学会賞「作品」部門
部会長
・坂牛卓(東京理科大学教授)
幹事
・青井哲人(明治大学教授)
・乾久美子(横浜国立大学教授、乾久美子建築設計事務所主宰)
委員
・金子尚志(滋賀県立大学准教授)
・川口健一(東京大学教授)
・車戸城二(竹中工務店常務執行役員)
・小堀哲夫(法政大学教授、小堀哲夫建築設計事務所主宰)
・小松尚(名古屋大学教授)
・塚本由晴(東京工業大学教授)
・中本太郎(日建設計設計部門ダイレクター)

■JIA日本建築大賞
・佐藤尚巳(建築家、審査委員長)
・松岡拓公雄(建築家)
・原田真宏(建築家)
・田原幸夫(建築家/建築保存再生学)
・宮沢洋(編集者)

残り2つの建築も必見

 私は今回、学会の作品賞を受賞した残り2つの建築も実物を見ている。どちらも素晴らしく、建築としての挑戦を書けば、いろいろ書ける。ただ、その素晴らしさは建築単体としての素晴らしさにとどまっていると思う。なので、私はこの3件の中でも、どれが1つ選べと言われれば、長野県立美術館を選ぶ。

 旧富岡製糸場西置繭所は、下記の記事もご参考に。以下の写真はそのとき(「レゴブロックで作った世界遺産展」)に撮ったもの。

ツウ好みの「レゴ世界遺産展」、改修終えた富岡製糸場「西置繭所」で開催中

 太田市美術館・図書館はこんな感じ。2018年に撮影。

 長野がイチオシ、というのはあくまで私の主観なので、このGW、ぜひ3件巡ってみていただきたい。車があれば1泊2日で回れる。(宮沢洋)