速報ひろしま国際建築祭!①まずは福山出身・前田圭介氏監修の藤井厚二展へ、イラストが建築展の敷居をさらに下げる?

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 本日10月4日(土)、いよいよ第1回目となる「ひろしま国際建築祭2025」が開幕する。パスポートで見られる展覧会の1つ、「後山山荘(旧・藹然荘(あいぜんそう))の100年とその次へ|福山が生んだ建築家・藤井厚二」@ふくやま美術館をどこよりも早くリポートする。

(写真:宮沢洋、以下も)

 なぜBUNGA NETのような小メディアがどこよりも早く書けるかというと、筆者(宮沢)が展示の一部を担当している“当事者”だからだ。

 その前に、本展の内容を建築祭の公式サイトから(太字部)。

左:藤井厚ニ、右:前田圭介(ⒸKoji Fujii / TOREAL)

「藹然荘」(竣工年不詳)は、福山の豪商「くろがねや」12 代当主・藤井与一右衛門が鞆の浦に構えた別邸です。1932年頃、弟で建築家の藤井厚二の自邸「聴竹居」の写しといえるサンルームを増築したと考えられています。しかし長らく人々に忘れられ、77年後に崩壊した姿で発見されました。それが2013年には「後山山荘」(改修・設計/前田圭介)の名で、多くの協力者により再生され、現在では多目的に活用されています。本展は、福山が生んだ建築家・藤井厚二の建築をめぐる100年の物語です。

泊まったホテルからふくやま美術館(左)がよく見えたので位置の参考に。右(東)に見えるのは福山城。手前がJR福山駅で、駅から美術館までは徒歩数分

 本展の会場構成を担当する建築家の前田圭介氏(UID)から、「展示を補足するイラストを描いてほしい」と頼まれたのだ。今年の3月だったと思う。建築展のハンドアウト(無料の案内図)は何度か描いたことがあるが、展示物そのものは未経験だったので、「なんか面白そう」と思い引き受けた。まさかこんなにイラストのウエートが大きいとは思わずに…。

 展示室はワンルームで見やすい。中央にどんと置かれているのは、前田氏が現地を初めて訪れたときの山荘。縮尺10分の1の段ボール製。目玉の展示物が「廃墟の模型」って珍しい。でも、これは完成後の静的な模型を見せるよりも、インパクトがある。

 壁の資料展示は、全体が段ボールの絵巻物になっていて、前半が「藤井厚二」に関するもの。後半が山荘の発見から改修完了後まで。

 どちらにも筆者が内容を「柔らかくする」イラストを描いた。

後半の山荘エピソード。「鳥獣戯画みたいに切れ目なく続くイラストにしよう」ということで、どんどん横に読む形で描いた。子どもが見やすい低い位置に配置

 前半の史実を描くのはお手の物なのだが、後半はつい最近のどこにも書かれていない話なので、イラストに落とし込む(整理して取捨選択する)のが結構大変だった。

 でも、後半もライブ感があってなかなかいい。

 こういうものなら子どもも面白がって見てくれるかな、と期待している。

■展覧会概要
名称:後山山荘(旧・藹然荘)の 100 年とその次へ|福山が生んだ建築家・藤井厚二
会期:2025 年10月4日(土)- 2025 年11月30日(日)

会場:ふくやま美術館 ギャラリー 広島県福山市西町 2-4-3
出展建築家: 藤井厚二、前田圭介
企画監修・会場構成: 前田圭介(UID)
特別協力:谷藤史彦、藤井英博、松隈章、後山山荘倶楽部、竹中工務店、聴竹居倶楽部、宮沢洋(BUNGA NET)
公式サイト:https://hiroshima-architecture-exhibition.jp/exhibitions/kojifujii/

 ここには名前が書かれていないが、ほかにも功労者がいるので紹介しておく。

 まず、目玉の廃墟模型をつくったZOUZUO MODELの諏佐遥也氏だ。イラストは模型との接点がなかったので、諏佐氏とは面識がない。

ここ、写真の通りでびっくりする

 筆者も同じ廃墟の写真を見ながらイラストを描いたので、あの断片的な情報からこの精度の模型をつくれるって何者?と思った。調べたら、早稲田大学の建築出身! しかも中谷礼仁先生の教え子!

 諏佐氏のサイトを見ると、あの模型も、この模型も…と、近年の記憶に残る模型がぞろぞろ出てくる。

 隠れた功労者その2は、段ボールの絵巻風展示台や模型台を設計・制作した前田尚武氏とタカムラ産業。この段ボール群は、イラストとともに、会場に柔らかさを与えている。それでいてチープさが全くない。それはディテールの精緻さによるものだろう。

 皆さんは見ることができないが、宙に浮いたように見える絵巻風展示台の裏側に回ってみてびっくり。これは1つの「建築」! 

 ちなみに前田尚武氏は、「ひろしま国際建築祭」のチーフキュレーターで、六本木ヒルズの設計にも参加したどっぷり建築畑の人。見えない部分の構造が美しいのは当然か。

 最後に、デザイナーの榊原健祐氏。絵巻物のように切れ目なく続く展示が、違和感なく会場の端から端にぴったり収まるようにミリ単位でデザインしていくさま(しかも多様な意見が飛び交う中で…)は、神がかって見えた。

 ということで、ここに書いた讃辞が単なる身内びいきかどうか、ぜひ会場に足を運んで確かめていただきたい。会期は11月30日(日)まで。

 なお、岐阜県多治見市の「多治見市モザイクミュージアム」(設計:藤森照信)では、本日10月4日(土)から「山内逸三と藤井厚二—聴竹居で育まれたものたち—」が始まる。詳細はこちら。東京方面から福山に向かう人は、途中で寄り道してこれも見てみたい。(宮沢洋)

実物の後山山荘(旧・藹然荘)
山荘の蔵で展示すべきものを探す両前田氏(左が圭介氏、右が尚武氏)。2人とも苗字が同じなのはたまたま。2025年4月13日撮影。これは筆者も同行した