池袋建築巡礼18:旧丸ノ内線車両を抱き込む「豊昭学園6号館ラーニングセンター」、北川原温氏+新生「MET」の案内で見学

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 池袋の建築好きにとって、「存在は知っているけれど実はよくわかっていない建築」の第1位は、これではないか。

知らずに通りかかったら目が点になる。そうか、昭和鉄道高校の豊昭学園なのか。と、わかると納得(写真:特記以外は宮沢洋)

 ああ、あれか! そう思った人は多いはず。池袋駅西口から北に向かって徒歩15分ほどの住宅地(豊島区池袋本町2丁目)。一部が川越街道に面する形でその北側に広がる「豊昭学園」のキャンパスだ。豊島学院高等学校と昭和鉄道高等学校と東京交通短期大学の3校で構成される。

川越街道や首都高5号池袋線を通ると、こんな景色がちらっと見える

 不定期に続けてきたこの「池袋建築巡礼」も18回目にしてやっとここを取材することができた。しかも設計者である北川原温氏の案内付きで…。

北川原温氏(右)と、北川原温建築都市研究所のスタッフとして担当した西内元省氏(現・MET共同代表)※METについては後述する

 北川原温建築都市研究所は、約30年にわたる一連のキャンパス整備に設計者として携わってきた。

 今回、まずリポートするのは、2022年9月に運用を始めた「豊昭学園6号館ラーニングセンター」だ。

右が6号館ラーニングセンター

 この場所にあった交通短大の旧校舎とシミュレーター棟の建て替え事業である。キャンパス整備の第5期に当たる。学園側から求められた機能は、約500人の収容が可能なレクチャーホール、図書室、シミュレーター室(鉄道実習室)だ。前述の3校は体育館などを共有しており、この校舎も3校の共用施設となる。

 設計に当たっては、「無限の成長・発展」をテーマに設定した。外観は、放物線をモチーフに「どこまでも続くこと」を表現した。

エントランスにも放物線
赤線で囲った部分が6号館ラーニングセンター。文化的なアクティビティーやコミュニケーションの核となる

 他の校舎とは街路で分断されており、敷地は3辺を街路で囲まれた三角形だ。敷地形状や法規制とともに重要だったのが、敷地西側に設置した旧丸ノ内線車両。この車両は、鉄道高校や交通短大の鉄道実習で車両の構造などを学ぶため、旧施設の屋外にもともとあった。解体撤去するにもかなりの費用がかかるため、位置をずらした上で新施設でもシミュレーター室と連携する形で活用することにした。

旧6号館の東側に置かれていた旧丸ノ内線車両(写真:北川原温建築都市研究所)
クレーンで車両の位置を西側に動かす様子(写真:北川原温建築都市研究所)
新施設では軒下の半地下空間にすっぽり収まった

 重量の重い車両を地上部に設置するため、ホールの大空間は上部に確保し。開放的な図書室を1階に配置した。

1階の図書室。2階のガラス越しにシミュレーター室(鉄道実習室)がちらりと見える
2階のシミュレーター室(鉄道実習室)。右手のガラスの下に車両の屋根が見える

 地上3~5階に配置したホールは、斜線制限や高度地区規制の規定ぎりぎりに計画した屋根形状の内側に納めた。

 必要な機能をこのボリュームに納めるため、垂直に立ち上がる約12mの鉄筋コンクリート壁と、鉄骨造の巨大なマンサード屋根という構成によって、容積の最大化を図った。

 内部空間がいびつな形なので、ステージから発した音の成分の大半が傾斜した側壁に入射し、吸音面である客席に返り吸収される。音の響きが損なわれないよう、FRPで成形した特注の音響拡散板「花びらパネル」を設置した。大きさや形の異なる3種類計96枚が空間を彩る。

 ところで、北川原温建築都市研究所は2025年6月に組織改編を行い、「MET」となった。北川原氏は代表を外れ、3人のパートナー、北口智浩氏、西内元省氏、アンヘル・エステベス氏の名前(頭文字)を取って新事務所名とした。下記は、そのときの挨拶文である。

ご挨拶
2025年6月9日

拝啓 
陽春の候 皆様におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます
これまで弊事務所は「株式会社 北川原温建築都市研究所」の名称で皆様から格別のお引き立てを賜り厚く御礼申し上げます

この度 弊事務所では以下の通り社名および組織改編を行うこととしました新体制ではこれまでチーフとして事務所を牽引してまいりました北口 智浩および西内 元省が代表取締役に アンヘル エステベスが取締役に就任し 若い力によるチーム体制でさらなる飛躍を目指す所存です
私は今後 フェローとして様々な場面で引き続きサポートを続けてまいります
今後とも変わらぬご支援とご厚誼を賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます
皆様の益々のご健勝とご繁栄を心よりお祈り申し上げます

敬具
株式会社 北川原温建築都市研究所
代表取締役所長 北川原 温
(東京芸術大学名誉教授)

 新パートナー3人の平均年齢40歳という若いチームだ。

西内元省氏、アンヘル・エステベス氏、北口智浩氏(写真:MET)

 一応言っておくと、1951年生まれの北川原氏は元気でピンピンしている。だが、組織の今後を考えて、若手に主導権を委ねることを自分から提案したという。アトリエ系設計事務所の創設者としては珍しい決断だ。北川原温建築都市研究所改め「MET」、覚えておいていただきたい。

 今回、北川原温建築都市研究所のこれまでの活動を振り返る意味で、豊昭学園の第4期までの施設も案内してもらったので、それは後編(2026年7月21日公開)でリポートする。

南側に立つ1号館の屋上から見下ろす

■建築概要
豊昭学園6号館ラーニングセンター

主用途:高等学校
所在地:東京都豊島区池袋本町2-9-1
地域・地区:準防火地域、第3種高度地区、第1種中高層住居専用地域、池袋本町地区地区計画(許容建蔽率80%、許容容積率218.16%)
前面道路:東4.36m 西5.45m 南5.00m
発注者:豊昭学園
設計・監理者:北川原温建築都市研究所
設計協力者:TECTONICA(構造)、建築エネルギー研究所(設備)、四元音響設計事務所(音響)
施工者:熊谷組

施工協力者:朝日工業社(空調・衛生)サンテック(電気)
敷地面積:989.08m2
建築面積:688.37m2(建蔽率69.60%)
延べ面積:1992.85m2(容積率201.49%)

構造・階数:鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造、地上5階
耐火性能:耐火建築物
基礎・杭:杭基礎
設計期間:2016年11月~2020年12月
施工期間:2021年1月~2022年8月

後編(2026年7月21日公開)はこちら↓
https://bunganet.tokyo/hosho2