ポストモダンの時代が終わりを告げた1990年代、ダイアグラムをそのままプランにしたような建築が目立った。それに行き詰まった建築デザインは様々な分流となり、デザイン潮流はなくなったともいえる。果たしてそうか。この連載では、そんな中でも読み取れる“イズム”を、皆さんの力をお借りして探っていきたい。初回から3回目までは、デザインに見どころのある500作を基に読み解いた10のイズムを解説する。
2025年10月ごろ、「26年はBUNGA NETの連載記事を通してOffice Bungaとして情報を発信していきたい」と、宮沢洋編集長から提案があった。そろそろ連載を自分で書くのもありかなと考えていた矢先だったこともあり、前向きに受け止めた。
与えられたお題は「ポストモダンが終わって以降のデザイン潮流」。前置きが長くなるので詳細は省くが、磯達雄と共に25年11月から構想を練り始め、26年3月末に初案がまとまった。最初はイズムとして5つを示そうと話していたが、大ぐくりにするのはなかなか難しく、10に収束させた。その全体像をまとめたのが下の図だ。ざっと眺めていただきたい。

対象は国内の建築と集合住宅に定めた。10のイズムの明確なグループ分けは難しいが、関連性がありそうな項目を順に並べてみた。市場性などを踏まえた重要度・注目度を円の大きさで表現している。例えば、1990年ごろはまだ目立たなかったリノベーションは徐々に普及し、なくてはならない手段になっている。そのため、大きな円にしている。
デザイン性、環境や構造などの技術、社会性を重視
他はわかりにくいが、ダイアグラムとプランの関係に着目した「プログラム➀」より、複合施設のプランに焦点を当てた「プログラム②」のほうを大きくするなど、現在の重要度を表現した。TOD(公共交通指向型都市開発)に代表される商業施設を中心とした再開発にも注目して円を大きくした。これらは、(1)デザイン性、(2)環境や構造などの技術、(3)市場として社会に受け入れられか——といった3つの視点を重視したものだ。
10のイズムをまとめるのに、25年11月から5カ月かかった。空き時間を見つけての作業だったこともあるが、最初に1990年から2025年までの代表プロジェクトをピックアップするのに時間を要した。1年あたり10プロジェクト強を目安に選んでいったところ、ちょうど500プロジェクトに達した。このリストは別の機会に紹介しよう。
その次に、参考資料※1を基にイズムとなるようなキーワードをAI(人工知能)も活用しながら調べていった。レトロフィットの成熟、機能の兼用・重ね合わせによるプラン、コンピュテーショナルデザイン、自然素材による土着的な表現、意匠と構造・設備の一体化、図書館を核とした施設の複合化、スポーツによる地域振興——といったキーワードを抽出した。
これらをベースに具体的なプロジェクトをプロットしながら確認し、10のイズムにたどり着いた。これらが正解だとは考えていない。建築家や歴史家の論客の皆さん、読者の皆さん、それぞれの立場からアドバイスをもらって完成させていきたい。ちょうど1年後には、満足いくものになっていることを目標にしている。

上の図がプロジェクトのプロットによる「アフター・ポストモダンのイズム10」。次回から2回に分けて、10のイズムの詳細を説明する。興味をお持ちの方は、PDFデータをダウンロードできるようにしたので、次回までに“予習”をお願いしたい。(森清)
※1:参考資料は以下の通り。日経アーキテクチュア『デジタル画像で見る 日本の建築30年の歩み 1976-2005』(日経BP、2006年)、安井昇+日経アーキテクチュア『都市木造デザイン大全』(日経BP、2018年)、内藤廣+日経アーキテクチュア『検証 平成建築史』(日経BP、2019年)、『新建築2025年8月号 建築100年PART1』(新建築社)、『新建築2025年9月号 建築100年PART2』(新建築社)
