みんなで探るアフター・ポストモダン02:プランニングの進化──せんだいメディアテーク以降、大型複合施設 が学会賞の“常連”に

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連載の初回では、ポストモダンの時代が終わって以降の建築デザインについて、主要プロジェクトのプロット図を通して10のイズムの全容をお伝えした。2回目は、そのうち、冒頭の3つについて着眼点など、もう少し詳細を説明しよう。

▲せんだいメディアテーク(2000年)。設計は伊東豊雄建築設計事務所。図書館やイベントスペース、ギャラリー、スタジオからなる複合施設。構造体は、鉄骨独立シャフトと鉄骨フラットスラブで構成。各階は間仕切り壁を極力なくしたひとつながりの空間としている(写真:磯達雄)

 説明に入る前にお断わりしておくと、下図でイズムの頭に「1.プログラム➀」などとあるのは分類軸として分かりやすそうなキーワードを記したもの。実際のイズムは、それ以降が表している。よって、実際のイズムの1つ目は「余白・可動・共有を加えてダイアグラムに幅」となる。1990年から2025年までの35年間を対象に、今もつながる“流れ”をピックアップしているため、かなり説明的になっている。今後、建築家・歴史家の皆さんに意見を聞いて修正していきたい。

▲「アフター・ポストモダンのイズム10」(最終版01/2026年4月10日作成)(資料:磯達雄+森清/Office Bunga)

イズム1/プログラム➀=余白・可動・共有を加えてダイアグラムに幅

 イズムの最初に挙げた2つは、建築のプランニングに関係する項目だが、1つ目のプログラム➀は、なかなかまとまらず、最終的にこうなった。1990年代後半は、“ダイアグラム建築”といわれるように空間の図式をそのまま建築化したようなプロジェクトが目立った。妹島和世氏による「再春館製薬女子寮」(1991年)が代表例だ。大きなワンルームの両側に4人部屋が整然と並び、緩やかに仕切られたワンルーム空間を寮生が自由に使うことができる。

 同時に、1990年代後半から2000年代前半にかけては、独自のプランニングや建築空間の概念が言葉で語られている。青木淳氏による「動線体」や「原っぱと遊園地」、小嶋一浩氏による「スペースブロック」や「白と黒」が挙げられる。

▲「潟博物館」(1997年)。設計は青木淳建築計画事務所(現AS)。「動線体」の概念を用いてスロープと展示が一体化した空間をつくった(写真:磯達雄)

 青木氏による「動線体」とは、移動動線を単に通路として捉えるのではなく、活動の場などと一体化しようというもの。例えば、「潟博物館」(1997年)では、スロープによるらせん動線が展示空間にもなっている。一方、「青森県立美術館」(2005年)を代表例とする「原っぱ」という概念は、機能や順路をあらかじめ決めることなく、利用する人が自由に楽しみ方を見いだせる場にしようという考え方だ。遊園地のように楽しみ方が準備された場に対する視点で、建築に広場のような「余白」をつくる。原っぱという概念は、今でも広く用いられている。

 小嶋氏の「白と黒」も青木氏の概念に通じている。従来は機能が決められた部屋(黒)の集まりになることが多かったプランを、それらをつなぐ空間(白)を配置することで、まちのような活気や活動の自由度を生み出そうという考えだ。「ヒムロハウス」(2002年)などで実現した。小嶋氏については、シーラカンスとして設計した「千葉市立打瀬小学校」(1995年)の頃から、アクティビティを重視した設計を志向しており、後に人の流れまで考慮したフルイドダイレクションという設計アプローチも提唱している。小嶋氏による一連の試みは、改めてまとめてみたい。

 原っぱなど、余白をつくろうという試みに加えて、2010年代後半以降には「可動」の仕組みを用いたプランも見られる。ヨコミゾマコト氏による「釜石市民ホールTETTO」(2017年)のほか、西澤徹夫氏や浅子佳英氏、森純平氏による「八戸市美術館」(2021年)が代表例だ。

 TETTOでは、ホールAの1階客席を収納し、ロビーとの間を仕切る高さ約4mの建具を開けると、ホールAとロビーが一体になる。さらにその先のホールBで両側の建具を開放すれば、ホールAから広場まで長さ70m超の平土間空間になる仕掛けだ。ヨコミゾ氏は「新発田市新庁舎」(2016年)で、1階広場に大型シートシャッターを設けてまちと一体になる場をつくるなど“可動建築”を複数設計している。

 一方、八戸市美術館は、「ジャイアントルーム」と呼ぶ天井高約17mの大空間を中央に据えており、可動間仕切りや家具で用途に合わせて自由に空間を仕切ることができる。

 もう1つの「共有」を用いた例といえるのが、乾久美子氏設計の「共愛学園前橋国際大学4号館 Kyoai Commons」(2012年)だ。片廊下型の建物を複数、寄せ集めたようなプランで、各棟の間は基本的に間仕切りなしのため、廊下を挟んで向き合う部屋をまたいで利用できる。例えば、レストランは、食事の時間以外は学習空間や学生の居場所にもなる。様々な人が空間を共有し、コミュニケーションが生まれる。

イズム2/プログラム②=複合・大型化でプランニングの可能性が拡大

 イズムの2つ目となるのは「複合・大型化でプランニングの可能性が拡大」。皮切りになったのは、図書館やイベントスペース、ギャラリー、スタジオからなる「せんだいメディアテーク」(2000年)だ。13本の鉄骨独立シャフト、7枚の鉄骨フラットスラブで構成した構造体とし、各階は極力ひとつながりの空間としている。こうした建築の構成とそれを生かした運営については、人口減少や自治体の財政難による公共施設の統廃合・効率化、モノ消費からコト消費への消費者ニーズの変化、市民・NPO・企業との協働、地方創生といった多方面から全国の手本となった。「原っぱのような空間」といわれることも多い。

 古谷誠章氏らNASCAの設計で2005年に完成した「茅野市民館」、川原田康子氏と比嘉武彦氏(kwhgアーキテクツ)による「武蔵野プレイス」(2011年)、小嶋一浩氏と赤松佳珠子氏(CAt)による「流山市立おおたかの森 小・中学校 おおたかの森センター こども図書館」、平田晃久氏設計の「太田市美術館・図書館」(2016年)――。せんだいメディアテークも含めて、日本建築学会賞(作品)の受賞プロジェクトが、次々と誕生している。いずれも図書館を複合しており、地域の核施設として図書館は切っても切れない用途になっている。なかには石本建築事務所と畝森泰行氏による「須賀川市民交流センターtette」(2018年)のように「通り」を収めたような施設も完成している。

▲「須賀川市民交流センターtette」(2018年)。設計は石本建築設計+畝森泰行建築設計事務所。図書館と生涯学習・市民活動施設、子育て支援施設、円谷英二ミュージアムが並ぶ「通り」を収めたような施設(写真:磯達雄)

 1点加えておきたいのが市民参加による設計だ。例えば、茅野市民館の設計に当たっては、設計者と市民は50回にも及ぶワークショップを重ねている。太田市美術館・図書館では、デザインを決める際、5カ月間にわたって市民ワークショップを行っている。市民の意見をどういう形で設計に反映するのかという問題はあるが、ワークショップをどのように設計に生かすのかが公共事業では大きなテーマになっている。

イズム3/形態=コンピュータ化の進展で複雑・有機的建築が増加

 1990年代前半には、北山孝二郎氏+ピーター・アイゼンマン氏による「コイズミライティングシアター/イズム」(1990年)を代表例とするデコンストラクティビズム(脱構築主義)のデザインが見られる一方、葉祥栄氏による「ふるさとパレス」(1992年)のようなコンピュテーショナルデザインの先駆例も生まれている。コンピュータを用いて積雪荷重や排水勾配など、複数の環境条件(パラメータ)を演算処理し、波打つ大屋根の最適解を導き出した。

 この他、渡辺誠氏による「地下鉄大江戸線飯田橋駅」(2000年)、foaによる「横浜港大さん橋国際客船ターミナル」(2002年)もコンピュテーショナルデザインの初期の代表例として知られている。後者は1995年の国際コンペで設計案が選ばれており、CADやCGを用いてデザインした3D曲面を特徴とする。施工でも3D統合データを作成することで、設計の忠実な実現を図っている。

▲「横浜港大さん橋国際客船ターミナル」(2002年)。設計はfoa(写真:磯達雄)

 伊東豊雄氏による「TOD’S表参道ビル」(2004年)では、ケヤキの枝の開き方や分かれ方などのスタディをしてエレベーションのモデルを作成。そのモデルを使って構造シミュレーションを重ね、部分的な修正を加えて最適化を図るといった構造の解析方法がとられている。一方、石上純也氏による「神奈川工科大学KAIT工房」(2008年)では、305本のフラットバーによる細い柱を意図的に不規則・ランダムに配置するためにコンピュテーショナルデザインを用いている。意匠と構造の融合にもコンピュータは大きく貢献してきた。

 VUILD(ヴィルド)の秋吉浩気氏のように、デジタル技術と木材加工を組み合わせることで「建築の民主化」を掲げる建築家も登場している。設計から施工までのプロセスをシステム化し、誰もがその地域にある木材を使って家や家具を自由につくれるプラットフォームの構築を目指す。

 最近は、AI(人工知能)の進化が目覚ましく、これまでのコンピュータ化の流れを大きく変える可能性が高い。(森清)

▲VUILDの設計による「学ぶ、学び舎」。東京学芸大学HIVE棟として建設された次世代の学びを探求するためのプロジェクト(写真:磯達雄)