みんなで探るアフター・ポストモダン04:地域活性化への期待──アリーナやスタジアム、駅前ビルなどが地域ににぎわいを呼ぶ

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連載の4回目は、今回ピックアップした10のイズムのうち、最後となる3つについて説明する。スポーツ施設についてみると、スタジアムやアリーナはプロ野球やプロバスケットボールの本拠地だけでなく、コンサートやイベントの会場にもなり、エンターテインメント性のある集客空間として地域活性化の期待を担っている。

▲「エスコンフィールドHOKKAIDO」(2023年)。設計はHKSと大林組。北海道北広島市の北海道ボールパークFビレッジ内に完成した開閉式屋根付き野球場。同ビレッジには宿泊施設や商業施設、レストランなどがある(写真:磯達雄)
▲「アフター・ポストモダンのイズム10」(最終版01/2026年4月10日作成)(資料:磯達雄+森清/Office Bunga)

イズム8/スポーツ=スタジアムやアリーナを地域の象徴に

 これから説明するイズムの8から10までは、一般の人にとってもより身近なテーマを集めた。最初がスポーツ施設について。イズム8として「スタジアムやアリーナを地域の象徴に」とした。ここ数年、巨大スクリーンを備えたアリーナが次々と誕生し、プロバスケットボールの本拠地としてのみならず、コンサートやイベントの会場としても人を集めている。外観にシンボル性が求められるのはもちろん、大空間のエンターテインメント化が大きな流れとしてある。

 例えば、佐賀市に2023年に完成した「SAGAアリーナ」は最大8400人を収容できる九州最大級の多目的アリーナで、B.LEAGUEの男子バスケットボールチーム、佐賀バルーナーズなどがホームアリーナにしている。設計は梓設計と石橋建築事務所、三原建築設計事務所の共同企業体(JV)が手掛けた。ランドマークとなる象徴的な景観を生み出している。

 1990年代にさかのぼれば、現在5大ドームと呼ばれるプロ野球のホームグラウンドが相次ぎ完成している。雨の多い日本の気候でも、プロ野球の試合を予定通り開催できるようにドーム化し、同時に人工芝のグラウンドとしたものだ。最近、5大ドームとしてよく耳にするのは、著名ミュージシャンによるドームコンサートツアーの影響が大きいだろう。

▲右手が「福岡ドーム(現・みずほPayPayドーム福岡)」(1993年、設計:竹中工務店・前田建設工業JV)。左手の高層ビルは「ヒルトン福岡シーホーク」(1995年、設計:シーザー・ペリ&アソシエイツ、竹中工務店)(写真:森清)

 今回の対象外ではあるが、90年代に入る直前、1988年に完成したのが日本初の全天候型野球場である「東京ドーム」で、設計を日建設計と竹中工務店が担当した。それに次ぐのが93年完成の開閉式ドーム「福岡ドーム(現・みずほPayPayドーム福岡)」(設計:竹中工務店・前田建設工業JV)だ。97年に「大阪ドーム(現・京セラドーム大阪)」と「名古屋ドーム(現・パンテリンドームナゴヤ)」が出来上がった。設計は前者が日建設計(協力:竹中工務店、大林組、電通)で、後者は竹中工務店が担った。

 もう1つの「札幌ドーム(現・大和ハウス プレミストドーム)」は、2002年のサッカー日韓ワールドカップの会場として使用するため、2001年に誕生した。設計は、原広司+アトリエ・ファイ建築研究所とアトリエブンクのJVが手掛けた。天然芝ピッチを浮かせて内部に移動し、人工芝の野球場をサッカー場に入れ替えて使う仕組みだ。その後、2004年から22年まで北海道日本ハムファイターズが本拠地として使用した。この頃、竹中工務店を中心に大型ドームの構築技術やデザインが確立されたといえる。

 一方、米国では天然芝のオープンなグラウンドが主流となり、ボールパーク化している。試合を見るだけの場所ではなく、飲食や娯楽、周辺のまちづくりまで一体の「滞在型」にする試みだ。日本では2009年の「MAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島」(設計:環境デザイン研究所)を先駆けに、最近では2023年に「エスコンフィールドHOKKAIDO」(設計:HKS、大林組)が誕生した。日本初の開閉式屋根と天然芝フィールドを持つ野球場で、付帯施設も充実している。

 サッカースタジアムに関してデザイン面から注目されるのは、2001年完成のサッカー等球技専用スタジアム「豊田スタジアム」だ。黒川紀章氏などが設計した開閉式の吊り屋根構造を持つ。Jリーグ・名古屋グランパスのホームスタジアムの1つになっている。Jリーグのスタジアムでは、日本建築学会賞(作品)を受賞した建築もある。竹中工務店の設計・施工による「市立吹田サッカースタジアム」(2015年)だ。ピッチと観客席の距離が近く、スタンドの傾斜が大きく臨場感ある観戦を楽しめる。企業や個人からの寄付金や助成金を元手に建設され、完成後に大阪府吹田市へ寄贈された。

イズム9/再開発=商業コンプレックスで交通結節点などを一変

 イズム9は再開発などで誕生した複合商業施設に着目したものだ。デザインにも見どころがある1990年以降の主要な開発プロジェクトを俯瞰すると、工場や木造住宅密集地域などの再開発と、駅ビルや駅周辺の開発、いわゆるTODと呼ばれる公共交通指向型都市開発に大きく分けられる。

 1990年代後半に話題になったのは、福岡市に96年に完成した「キャナルシティ博多」だ。デザインを米国の建築家・ジョン・ジャーディ氏が担当し、基本・実施設計を日本設計、竹中工務店などが手掛けた。同氏がデザインした商業施設は2000年に入って複数完成している。「リバーウォーク北九州」「六本木ヒルズ」「なんばパークス」(いずれも2003年)などだ。鮮やかな配色による回遊性ある体験型のエンターテインメント空間が特徴だ。

▲「キャナルシティ博多」(1996年)。デザインを米国の建築家、ジョン・ジャーディ氏が担当した(写真:磯達雄)

 海外建築家とのコラボレーションという面で、「六本木ヒルズ」はジョン・ジャーディ氏の起用にとどまらない。商業エリア担当の同氏のほか、六本木ヒルズ森タワーやグランド ハイアット 東京などの建築デザインをKPF(コーン・ペダーセン・フォックス・アソシエイツ)、六本木ヒルズレジデンスなどをコンランアンドパートナーズが担った。

 森ビルによる六本木ヒルズは、木造住宅密集地の開発であり、17年かけて400人の地権者をまとめ、業務・住宅・商業などの機能をもたらした。森ビルや入江三宅設計事務所などを中心に、海外建築家を起用したデザインのみならず、エリアマネジメントで開発のポテンシャルを高めた事例として高名だ。

 都心の跡地開発では、2007年完成の「東京ミッドタウン」も注目される。統括設計を日建設計が担当、マスターアーキテクトを米国のSOM(スキッドモア・オーウィングス・アンド・メリル)が務め、安藤忠雄氏や隈研吾氏、青木淳氏などが各施設のデザインや監修で参加している。

▲「東京ミッドタウン」(2007年)。統括設計を日建設計、マスターアーキテクトを米国のSOM(スキッドモア・オーウィングス・アンド・メリル)が担当した(写真:森清)

 一方、TODに関しては1990年代から徐々に進化している。90年代の代表プロジェクトが97年完成の「京都駅ビル」だ。設計コンペで選ばれた原広司+アトリエ・ファイ建築研究所が担当した。新幹線やJR、地下鉄、近鉄などが集まる交通結節点に、百貨店やホテル、劇場、美術館などを一体化した。古都の景観との調和というデザイン上のテーマにも取り組んだビッグプロジェクトだ。

▲「京都駅ビル」(1997年)。設計は原広司+アトリエ・ファイ建築研究所(写真:磯達雄)

 2000年代に入って話題となったのが、100年に一度ともいわれる渋谷駅周辺の一連の開発だ。9つの鉄道路線が乗り入れる駅と「渋谷ヒカリエ」(2012年)や「渋谷ストリーム」(2018年)、「渋谷スクランブルスクエア」(第1期・東館2019年)、などのビル群を立体的な歩行者デッキで接続して一体化する。デザインアーキテクトとして、日建設計や隈研吾建築都市設計事務所、SANAA、シーラカンスアンドアソシエイツ(CAt)などが参加している。2034年度にすべての工事が完了する予定だ。

 こうした都心の開発に対して地方都市の駅周辺でも重要なプロジェクトが生まれている。例えば、2017年完成の「周南市立徳山駅前図書館」(設計:内藤廣建築設計事務所)や18年完成の「延岡市駅前複合施設 エンクロス」(設計:乾久美子建築設計事務所)。前者はJR徳山駅に直結する賑わい交流施設に図書館などを設置しており、図書貸出機能のほか、カフェや書店が一体となった滞在型の空間としているのが特徴だ。後者はJR延岡駅に隣接した公共複合施設でカフェや書店のほか、市民活動や図書閲覧のスペースなどを備えている。ともに地方の駅周辺ににぎわいをもたらすTODといえる。

 大阪駅周辺ではTODをさらに進化させた開発が進んでいる。2027年度に全体のまちびらきを予定してる「グラングリーン大阪」だ。大阪駅前の梅田貨物駅跡地開発(うめきた2期)で、広大な「うめきた公園」を中心に商業施設やホテル、オフィスなどが集まる。駅・まち・人・自然の融合を図っている。設計には日建設計や三菱地所設計、大林組、竹中工務店、SANAA、GGNが参加している。

▲「延岡市駅前複合施設 エンクロス」(2018年)。設計は乾久美子建築設計事務所。「延岡駅周辺整備プロジェクト」として2020年日本建築学会賞(作品)を受賞。エンクロスは受賞の中心となった(写真:宮沢洋)
▲「グラングリーン大阪」(2024年9月に先行まちびらき)の「うめきた公園」。設計は日建設計や三菱地所設計、大林組、竹中工務店ほか。GGNが同公園のランドスケープデザインを主導、SANAAがイベントスペースの大屋根を担当した(写真:森清)

イズム10/リノベーション=コンバージョンが普及、保存から活用へかじを切る

 イズムの最後がリノベーションについて。2000年ごろは大型プロジェクトの完成が相次ぎ、リノベーション自体がほとんど見向きもされていなかった。それから四半世紀がたち、減築も組み合わせてコンバージョン(用途変更して再生)するプロジェクトも増えている。建築賞などを見ても、リノベーションが受賞の“常連”になった。

 2000年ごろのプロジェクトとして注目される1つが1999年の「宇目町役場庁舎(現・佐伯市宇目振興局)」で、青木茂建築工房が設計を手掛けた。同氏が提唱する「リファイニング建築」の代表作だ。同事務所のウェブサイトによれば、「老朽化した既存建物を丹念に調査して建物が本来持っていた価値を見いだし、新築同様の性能に引き上げ、新しい価値を生み出す。リファイニングとはその建物の歴史を尊重しながら、新しく命を吹き込み、未来へ継承するための方法」とある。

 宇目町役場庁舎では、当時、築20年強で使われていなかった研修宿泊施設を、躯体フレームだけ残して耐震補強と用途変更を行い、新築の約半分のコストで開放的な近代庁舎へ再生させた。他方、2002年に新居千秋氏の設計で改修した「横浜赤レンガ倉庫」は、歴史的価値のあるレンガ造建築を保存・活用するのが目的だ。1号館を文化施設、2号館を商業施設に再生させた。

▲「宇目町役場庁舎(現・佐伯市宇目振興局)」(1999年)。設計は青木茂建築工房。青木茂氏が提唱する「リファイニング建築」の代表作(写真:磯達雄)

 赤レンガ建築については、東京・丸の内でも事例が見られる。2009年完成の「丸の内パークビルディング・三菱一号館」(設計:三菱地所設計)や2012年完成の「東京駅丸の内駅舎」(設計:ジェイアール東日本建築設計事務所)だ。ただし、三菱一号館は赤レンガ建築の復元で、当時の部材や工法を現代の免震技術などを組み込んで再現した。一方、東京駅丸の内駅舎は、戦災で失われた南北のドームや3階部分を創建時の姿に復原し、2階以下は既存のレンガ造を保存・再生。加えて基礎部分には免震構造を導入した。東京駅前には外壁保存の事例も見られる。2012年に完成した「JPタワー」(設計:三菱地所設計、マーフィー/ヤーン)では、低層部に旧東京中央郵便局舎の一部を保存・再生している。

 2010年以降は大掛かりなコンバージョンプロジェクトも目立ってきた。代表例が、2012年の「アーツ前橋」(設計:水谷俊博建築設計事務所)や2019年の「テラス沼田」(設計:プランツアソシエイツ)だ。前者は前橋市の中心市街地に立つ旧百貨店を美術館に再生したもの。既存外壁全体を穴が開いたアルミ材で覆って新たな顔とした。 美術館内部は、施設全体を周遊する散歩道のような構成としている。後者は7階建ての旧大型商業施設の床を減築して、沼田市役所を中心に複数のテナントフロアにコンバージョンしたものだ。

▲「京都市京セラ美術館」(2019年)。設計は青木淳・西澤徹夫設計共同体。帝冠様式の既存建築を残しながら、地下を掘り下げて新たなエントランスを設けた(写真:森清)
▲「旧富岡製糸場西置繭所保存整備事業」(2020年)の外観。設計は文化財建造物保存技術協会が手掛けた(写真:森清)

 2019年完成の「京都市京セラ美術館」のように帝冠様式の既存建築に新たな要素を加えて、新旧を見事に融合させた改修事例もある。国内最古の公立美術館建築の歴史的意匠を生かしながら、地下を掘り下げた新たなエントランスを中央に設けて、現代美術の新館などと融合させた。設計は青木淳・西澤徹夫設計共同体が手掛けた。

 国宝に指定された文化財の保存と活用を実現したのが「旧富岡製糸場西置繭所保存整備事業」(2020年)。設計は文化財建造物保存技術協会が担当した。1階の内部に、鉄骨フレームとガラスで囲まれた独立空間を挿入し、耐震と展示の機能を両立しているのが最大の特徴だ。このプロジェクトも京都市京セラ美術館も日本建築学会賞(作品)を受賞しており、リノベーションが普及するとともに、デザインの大きなテーマになっていることを物語っている。(森清)