【東京建築祭にも参加決定】角Rの「JINS銀座店」がお披露目、レーモンド→教文館→田中仁→藤本壮介→杉山雅則を結ぶ、時代を超えた「縁(えにし)」 

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3月31日にプログラムが発表された「東京建築祭2026」で、藤本壮介氏が「JINS銀座店」を案内するツアー(5/20)が行われることが明らかに! 詳細はこちらへ。(ここまで3月31日追記)

 本サイトの連載や「みんなの建築大賞」などでお世話になっているジンズ(以下JINS)が銀座・中央通りの教文館ビルに、初のグローバル旗艦店「JINS銀座店」を3月28日(土)にオープンする。3月27日の内覧会に行ってきた。

藤本壮介建築設計事務所の岩田正輝設計部長(左)と田中仁・ジンズホールディングス代表取締役会長CEO(写真:特記以外は宮沢洋)

 プレスリリースの冒頭にはこうある(太字部)。

アイウエア事業25周年という節目を目前に誕生する本店舗は、日本発のクリエイティビティと革新を世界へ向けて発信し、次なる25年への第一歩を踏み出す拠点となります。偶然のようで必然のような出会いを大切にする日本的思想「縁(えにし)」をコンセプトに掲げ、訪れるたびに新しい発見がある唯一無二の体験を、ここ銀座からお届けします。

 ああ、確かに縁(えにし)。現代建築であまり見ることのないこの「角R」(「面取り」とも言う)の背後に、筆者には縁が見える…。

 建築の仕事を長くやっていると、目の前の事象を超えて、過去の広がりをを色々結びつけて楽しめるようになる。うんちくを述べる前に、まずは、リリースの公式説明から(太字部)。

藤本壮介氏が描く「やわらかな和」と名和晃平氏の《Snow-Deer》が共鳴する空間

本店舗の設計を手がけたのは、世界的建築家・藤本壮介氏。近代日本建築の巨匠アントニン・レーモンド氏による1933年竣工の名建築・教文館ビルの歴史を継承しつつ、現代の感性を吹き込みました。和菓子や和紙のようなやわらかさを感じさせる白の外壁で建物を包み込むことで、新たな“和”の表現に挑戦。白の左官材にミラーの破材を混ぜて磨き上げるという、緻密な手仕事が光る仕上げが特長です。

店内1階には、まるで大木をくり抜いたような凛とした空間に商品が広がります。地上1階から地下1階へと続く開放的な吹き抜け構造には左右対称の階段を採用。地下1階は剥き出しの躯体が建物の重層的な歴史を物語り、新旧の時代が交差する独自の空気感を醸成します。

(写真:長井美暁)
(写真:長井美暁)

吹き抜けには、彫刻家・名和晃平氏による高さ5メートルの《Snow-Deer》を常設展示。大阪・関西万博でも注目を集めた本作は、真珠のような光沢を放つホワイトパールの色彩を纏った静謐な佇まいで、銀座に新たなエネルギーをもたらします。これまでの屋外展示とは異なり、地下1階と地上1階をつなぐ階段により作品を上下の視点から360度鑑賞できる、ユニークなアート体験を提供します。

この吹き抜けは今回新たにつくったもの

地下にJINS初のアートギャラリー。第一弾は池坊による、いけばな「立花」の展示

アートを活用し店舗を起点とした地域共生に取り組んできたJINS。本店舗でも、お客さまや銀座のまちと新たな「縁」を育んでいきたいという想いから地下1階にギャラリースペースを創設しました。

地下1階。商品の展示はなく、ギャラリーのよう(写真:長井美暁)

「見る」体験から銀座を訪れる方々の感性を刺激し、新たな交流を育む場として、今後も不定期にさまざまな展示を開催してまいります。その第一弾として、3月28日(土)から4月24日(金)まで、「いけばなの根源」である池坊(いけのぼう)による特別インスタレーション「立花(りっか)」を開催します。

地下1階には既存の構造体を表しにした部分も

田中仁氏に憑依した杉山雅則の思い?

 さて、以下は、この新店舗を見て筆者が感じた縁(えにし)である。

 まずは、リリースにもあるように、1933年竣工の教文館ビル(正確には教文館・聖書館ビル)はアントニン・レーモンドによる設計である。このビルに、戦前のレーモンド事務所があった。

教文館・聖書館ビル時代の集合写真。赤丸が後述する杉山雅則。右後ろがレーモンド。右隣が前川國男、前列右端は吉村順三
昨年の東京建築祭の時期に展示されていたビル(当初)の模型。赤丸部分が集合写真を撮影したと思われる屋上

 そして、このビルに強い愛着を持つ現オーナーが毎年、東京建築祭でガイドツアーを実施してくれている。それもあって、東京建築祭のキックオフイベントに登壇した田中仁氏と親交を持った。

2024年の東京建築祭キックオフでの記念写真

 銀座の一等地ということで、普通なら高級宝飾店などが入ってしまう教文館の1階・地下1階にJINSが店を出せることに。田中氏は、旧知の建築家・藤本壮介氏に声をかけた。

 設計は対話の中で進んだ。あるとき、田中氏が「丸っこいものはどうか」と発言し、そこから設計がドライブした(それまでは白いシャープな外観だったそう)。そうして、レーモンドの直線とはある種、対比的ともいえる外観が生まれた。

聖書館ビル側から見る。左奥がJINS。教文館と聖書館に中は分かれているが、ビルとしては一体

 ここでいったん時代を遡り、戦前のレーモンド事務所へ。教文館ビル時代のレーモンドが全幅の信頼を置いていた番頭格が、本サイトで連載中の杉山雅則だ。杉山はレーモンド建築の曲線階段をほぼ一手に作図していた人でもあった。

レーモンドの下で杉山が担当した旧赤星鉄馬邸の曲線階段(写真:吉田誠)
レーモンドの下で杉山が担当した東京女子大学講堂の曲線階段(写真:吉田誠)

 杉山が戦後に三菱地所で手がけた建築には、ほとんどに角アールのデザインが用いられている。

三菱地所で杉山が担当した新東京ビルヂングの外壁コーナー部見上げ

 そんなわけで、この角アールを見ると、筆者には(田中氏の意図とは関係なく)なんだか杉山の思いが発露したように見えてしまうのである。建築って面白い(宮沢洋)

JINS銀座店入り口見上げ

田中仁氏の連載はこちら↓

https://bunganet.tokyo/category/rensai/rensai-tanaka/

杉山雅則に関する連載(執筆:種田元晴)はこちら↓

https://bunganet.tokyo/category/rensai/rensai-sugiyama/