速報:旧香川県立体育館の解体工事が一時停止、「躯体解体」に入る直前で「証拠保全」を受け入れ

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 2026年4月に開始した「旧香川県立体育館」(1964年竣工)の解体工事がいったん停止されることが9月3日に明らかになった。当初は9月以降に、躯体の解体工事に入る予定だった。

▲旧香川県立体育館の現状。2026年8月26日に撮影(写真:旧香川県立体育館再生委員会)

 旧体育館の利活用を提案している民間団体「旧香川県立体育館再生委員会」は公金支出の差し止めを求める住民訴訟を2025年11月に起こしたが、その裁判が進む中で解体工事が進められていた。これまで原告が求めてきた「証拠保全」を裁判所が認め、県もそれを受け入れた形だ。

 これまでの経緯をざっと振り返る。

 旧香川県立体育館は、丹下健三+都市建築設計研究所と集団制作建築事務所による設計で、1964年に竣工。湾曲した縁梁から双曲放物面の屋根を吊るという独自の構造で、その形により「船の体育館」と呼ばれた。地域のスポーツ拠点として愛されてきたが、天井落下のおそれから2012年にアリーナへの立ち入りが禁止され、耐震改修工事の入札不調もあって、2014年に閉館する。サウンディング型市場調査で民間からの活用アイデアも出されたが、採択されることはなく、2023年に県は解体を決定した。

 2025年7月、建築家の長田慶太氏を委員長とする「旧香川県立体育館再生委員会」(以下、再生委員会)は、旧体育館を民間で購入した上で利活用する案を県に提案。文化的な価値が高い旧体育館を民間側で耐震補強し、ホテルなどとして活用することを求めた。それに対して県は、解体の姿勢を崩さず、「大地震などによる倒壊の恐れがある」との説明を繰り返してきた。

▲再生委員会が2025年7月23日に開催した旧体育館の利活用に関する記者会見の様子(写真:磯達雄)
▲同会見での旧香川県立体育館再生委員会委員長の長田慶太氏(長田慶太建築要素代表)(写真:磯達雄)
▲再生委員会が提案した2案のうちの1つ「ブックラウンジ併設ホテル案」のイメージ図(資料:旧香川県立体育館再生委員会)
▲再生委員会が提案した2案のうちの1つ「1棟ホテル案」のイメージ図(資料:旧香川県立体育館再生委員会)

 県は2025年9月に解体工事の一般競争入札を実施し、合田工務店(高松市)が落札した。解体費用は約8億5000万円。同年12月の県議会で可決され、県は合田工務店と工事請負契約を締結。再生委員会は、2025年11月27日付で、高松地方裁判所に対し、香川県知事を被告とする旧香川県立体育館の解体費用等の支出の差し止めを求める住民訴訟を提訴。しかし県は2026年4月10日に外構の解体工事を開始。6月からは内装の工事を進めてきた。

▲外構工事が始まって間もない頃の旧香川県立体育館。2026年5月10日に撮影(写真:宮沢洋)

 再生委員会は、耐震性を鑑定するために現状を維持する「証拠保全」を裁判所に求め、6月23日の弁論準備手続で、裁判官に専門的な知見から助言などを行う「専門委員」5人が選任された。専門委員には、日本建築学会の会長・副会長経験者が含まれる。

 7月15日に行われた進行協議で、高松地方裁判所から、体育館の耐震性能を鑑定するための「現地調査」(証拠保全)の必要性について言及があり、県が裁判所の要請を受け入れる形で調整が進められた。

 池田豊人知事が、任期満了に伴う8月30日の知事選で再選。県は9月3日、旧体育館裁判の証拠調査のために解体工事を一時停止することを明らかにした。調査の期間は9月15日から10月14日まで。この期間に原告側が業者を選定し、調査を行う。県は「裁判所から原告に必要な調査を行わせることについての提案があったこと を受け、内装解体工事の区切りが付くタイミングで、解体工事を一時中断することと したものです。なお、中断期間が終了した後は、直ちに解体工事を再開します」と発表した(元の資料はこちら)。

 再生委員会の長田委員長によれば、「今回認められた現地調査の期間は10月14日までであり、その後の『鑑定』(構造計算)期間については、建物の維持が確保されているわけではなく、鑑定結果が明らかになる前に、現地調査終了後の10月14日以降、解体工事が再開される可能性が高いと推測できます」とのこと。状況が厳しいことに変わりはないが、モダニズム建築の保存をめぐる住民訴訟において「証拠保全」が認められたケースは今回が初めて。建築界にとっては、モダニズム建築を利活用する意味を改めて社会に発信する大きなチャンスとなる。(宮沢洋)

▲解体が進む現場に掲示されていた工程表。2026年9月から地上部の躯体解体に入る予定だった(写真:宮沢洋、赤丸は筆者が加筆)
▲解体工事に入る前の2025年7月23日に撮影した旧香川県立体育館(写真:磯達雄)

※BUNGA NETでは2026年9月4日(金)から以下の緊急連載をスタートします。

アーキテクトボイス50─旧香川県立体育館に思う/Thoughts on Kagawa Prefectural Gymnasium