今年4月にリニューアルオープンした山形県の鶴岡市立加茂水族館を見てきた。リニューアルと同時に、ネーミングライツにより通称「東北エプソンアクアリウムかもすい」となっている。リニューアルの設計は、既存部分と同じく日本設計が担当した。



筆者(宮沢)は大の水族館好きで、ここに来るのは3回目だ。日本の建築系編集者で水族館に一番詳しいと自負しており、2022年には『イラストで読む建築 日本の水族館 五十三次』という本を出している。
加茂水族館(以下、かもすいと略す)は「クラゲ」の人気でV字回復した水族館として有名だ。1930年開館と歴史は古い。90年代後半には閉館が噂される特徴のない施設だったが、当時の村上龍男館長(現・名誉館長)がクラゲの飼育・繁殖に力を入れて大人気に。2012年にはギネス記録(世界最多のクラゲ展示種類数)に認定され、その勢いを得て、2014年に日本設計の設計により建てられたのが既存施設(本体棟)だ。


今回新たにつくられたのは、既存施設の南側の新研究所棟「T-JERI(ティージェリー)」。地上3階建て、延床面積5340㎡。



新研究所棟は1階がレクチャールーム、2階がマイクロアクアリウム、3階がクラゲ研究所(繁殖室)で、2階部分が展示動線の一部として公開されている。2階のクラゲ展示は、既存部分も併せて「クラネタリウム」という名前になった。

マイクロアクアリウムは、小さなクラゲの世界を、より近く、より深く知ることのできる展示空間。顕微鏡やモニターを通してクラゲ誕生の瞬間など繊細な姿や動きをリアルタイムで観察できる。壁に掲示された手描きの解説ボードが圧巻だ。飼育員の伝えたい思いがびっしりと書き込まれている。リニューアル前にもこれに近い「鶴岡市クラゲ研究所」という部屋があったが、パワーが増している。


既存施設の2階にあったレクチャールームや繁殖室を新研究所棟に移したことで生まれたスペースに、クラゲ用の2.5mの水槽を6基新設。クラゲの展示面積を約1.8倍に拡大した。



個人的な感想を言うと、クラゲの満足度が面積に比例して2倍くらいに増している。というのは、この施設、見に行く人は大抵、“クラゲ専門の水族館”を想像して行ってしまうわけだが、過半は他の生物のためのスペースで、クラゲは動線の後半にギュッと密度高く展示されている感じだった。

海のさまざま生き物を見て、後半にクラゲの小さい水槽をひたすら見続けた後、最後に直径5m、水量40トンの巨大クラゲ水槽がドンと現れる──。そんな流れだった。起承転結としては大変素晴らしいのだが、総面積としてのクラゲ部分はそれほど広くはなく、筆者も初めて訪れたときには「あれ?これで終わり?」と思ってしまった。そう思うのは、「新江ノ島水族館」(神奈川県藤沢市)のクラゲ面積が結構大きくて、頭の中でそれと比較してしまうからかもしれない。
それが今回、直径5mのラスボス水槽の前に、2.5mの水槽を6基並べたことで、見終わった後に「もうお腹いっぱいです!」という気持ちになった。2.5mの水槽もかなり大きいのだが、直径5mは本当に他では見たことのない大きさなので(クラゲ単独の水槽としては)、ラスボス感が減じたということはない。

数でも面積でも胸を張れるようになった「かもすい」、ぜひ見に行ってほしい。建築好きは「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE」(2018年、設計:坂茂)↓に宿泊を。ここから車で20分ほどで着く。(宮沢洋)

■建築概要(日本設計のサイトより)
名称:鶴岡市立加茂水族館リニューアル(増築及び展示改修)
建築主:鶴岡市
所在地:山形県鶴岡市
主用途:水族館
竣工:
2025年7月(増築研究所棟竣工)
2026年2月(本体改修竣工)
2026年4月(リニューアルオープン)
延床面積:5,340㎡

