4月19日は「飼育の日」、葛西臨海水族園を写真32枚で私的バーチャルツアー

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 4月19日が「飼育の日」に正式認定された。もともとは多摩動物公園の飼育係が発案。10年ほど前から葛西臨海水族園など都立の動物園・水族園4園が連携し、4月19日にさまざまなイベントを開催してきた。そしてこの2020年4月12日、一般社団法人日本記念日協会は、4月19日を「飼育の日」として認定登録した。日本記念日協会なんていう組織があったのか!

 それはさておき、新館建設(建て替え?)の話題で注目される葛西臨海水族園(設計:谷口吉生、1989年竣工)も、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、臨時休園が続いている。無観客で今も魚たちの世話を続ける飼育係の方々を思い浮かべつつ、過去に筆者が撮りためた写真でバーチャルツアーへとご案内したい。

都内で必ず見るべき建築!

 個人的にこの葛西臨海水族園という施設は、「建築」としても「水族園」としても大好きで、「東京都内で必ず見るべき建築を10挙げろ」と言われたら、迷わずこれを入れる。過去に何度行ったか分からないくらい行っている。

 今回の記事の写真は、デジカメを使うようになったここ10年ほどの間に、水族園で撮った写真の中からチョイスした。どうせならいい写真で見ていただこうと古いデータも引っ張り出した。なので、同じ日に撮った写真ではないことをご了承いただきたい。冒頭に載せた夜のガラスドームは、後述する夜間特別開園で撮ったもので、かなりレアな写真だ。

 さて、この建築の良さを知るには、まずロケーションを知っていただいた方がよいと思うので、場所はここだ。

 

 グーグルマップを適宜、拡大縮小したり、「航空写真」のボタンを押したりしてみてほしい。敷地は東京都の最も東寄り。東京ディズニーランド(千葉県浦安市)の西側対岸だ。何もない埋め立て地に1989年10月10日に開園した。「水族館」ではなく「水族園」なのは、広い公園全体で水の生き物を学ぶという意図からだ。これは以前、設計者の谷口吉生氏に話を聞いたときに、谷口氏が強調していた。なので、この記事ではガラスドームの建物を「本館」と呼ぶことにする。

 まずは同じ谷口吉生氏の設計で1995年に竣工した「レストハウス」から本館を眺めよう。

 レストハウスは、海や園の植生を眺めるためのものであるが、明らかにガラスドームに目が行くように施設の軸線が設定されている。

ガラスドームの本館へ

 レストハウスを出て本館へと向かおう。

 円形の屋上広場に上ってから、館内に降りる動線。筆者はこの施設を見て、初めて「インフィニティ・プール」というものを知った(直訳すると「無限の水盤」。自然の水面や空と連続して見える水盤を言う)。

 切符売り場は屋上広場の手前にあり、ガラスドームの下は、純粋に「景色と空を眺める」ための空間だ。横長の開口部によって、水平線が強調される。

 対岸の舞浜も額に入った絵のように見える。

高低差を利用して水槽を見せる

 エスカレーターを降りると一気に暗くなり、大水槽が出迎える。

 施設の目玉の1つ、マグロの回遊水槽。この写真は、マグロがドーナツ状の水槽をぐるぐる回っていた頃の、今となっては貴重な写真(現在は水槽内がネットで仕切られている)。

 館内には中小の水槽がたくさんあるが、写真的には変化に欠けるので割愛する。そして、いったん屋外へ。

 海辺の生き物たちのコーナー。階段部を利用して、水槽をさまざまな高さから見る。徐々に地上へ。ナイスアイデア! この水槽も含め、高低差を利用して1つの水槽を別の目線で見せる動線が実によく考えらている。

 谷口建築には珍しい、グネグネの壁。ポストモダンの影響が少しはあった?

最後は機械設備も見せる

 屋外のペンギンゾーン。

 動線の最後は、2層吹き抜けの空間で、水槽を横と上から眺められる。筆者が初めて行ったときに一番感心したのはここ。2階のルートでは、水槽の設備機械を見せる。これぞ教育!

 ヨットの帆のような日よけが立つ屋外休憩ゾーン。

 本館から少し離れたところにある淡水生物館。行く人が少ないが、これも谷口吉生氏の設計。建築的にどうのという感じではないけれど、展示はいい。

期間限定「夜のガラスドーム」も必見

 水族園の開園時間は9時30分~17時までなので、ガラスドームの夜景は通常、間近では見られない。だが、毎年8月の指定日(近年はお盆休みの頃の6日間)に夜間特別開園「Night of Wonder」を実施している。この期間は、開園時間を3時間延長して20時まで開園する。

 近くで見るガラスドームのライトアップは本当に美しい。ルーブル美術館(パリ)のガラスピラミッドのライトアップといい勝負かもしれない。

 上の写真はガラスドームと三日月。今年のゴールデンウイークは休園となるが、夏にはまたこんなドラマチックなシーンが見られることを祈りたい。(宮沢洋)