東京・三田の慶應義塾大学アート・センター (KUAC)で開催中の「アート・アーカイヴ資料展XXIX:慶應義塾の谷口吉生 交差するまなざし」展を見てきた。2026年5月11日に開幕し、7月24日まで開催されている。


慶應義塾大学アート・センターでは、2008年から「慶應義塾の建築」という調査研究のプロジェクトを進めており、本展はその一環だ。プロジェクトは渡部葉子 慶應義塾大学アート・センター教授が中心となっており、これまで「谷口吉郎と日吉寄宿舎」(2013年2月18日〜22日)、「ノグチ・ルーム再び」(2015年3月2日~4月17日)、「信濃町往来——建築いま昔」(2017年12月9日~2018年3月31日)、「槇文彦と慶應義塾Ⅰ:反響するモダニズム」(2021年2月1日~3月26日)といった展示を行ってきた 。

日本で一番「建築展」を見ているとさえ思っていた筆者だが、恥ずかしながら「慶應義塾大学アート・センター (KUAC)」の存在を知らなかった。これからチェックせねば…。
1室だけの展示なので、展示数は多くない。本展で展示されているのは、大きくは2つ。
①慶應義塾幼稚舎:谷口吉郎の本館、自尊館と谷口吉生の新館21、新体育館
②谷口吉生の慶應義塾湘南藤沢中等部・高等部校舎と槇文彦の湘南藤沢キャンパス
谷口吉生氏は「美術館の名手」ということで、これまでの展覧会(主に谷口吉郎・吉生記念金沢建築館)では美術館・博物館など一般公開されている建築にスポットが当たってきた。それに対して本展は「学校」という渋い切り口。原図(慶應義塾所有)が見られるのも貴重だ。そして、最近撮った写真(新良太氏の撮影)がどれも竣工写真のように美しいのにびっくりする。


以下、プレスリリースの主旨文を引用する(太字部)。
建築家の谷口吉生は、慶應義塾のキャンパスにおける建築設計に際し、他者の建築との共鳴のもとで新たな環境を生み出した。谷口は父・吉郎が1937年に完成させた幼稚舎本館に対して、50年後の1987年に新体育館を建設し、さらに2002年に竣工した新館21では、父の建築と直接つながるに際し、本館の様式に寄せたモダニズム・スタイルを選択している。また湘南藤沢キャンパス(SFC)では盟友・槇文彦がグランドデザインを描いた大学キャンパスの外郭に接続するゾーンのひとつに中等部・高等部の校舎を設計した。

そこでは中庭形式を採用することでひとつの領域としての独立性を保ちながら、本体に接続する建築群としての洗練された統一性を谷口の建築がみせていることに気づくだろう。本展では慶應義塾における谷口吉生の建築をテーマに、建築物を取り巻く環境を活かした設計を行う谷口吉生が、建築を通して両先達とどのような対話を重ねたのかを探る。

谷口吉生は建築設計の基本姿勢として、敷地や設計条件への応答を強調している。しかしそれは、所与の条件に発想が規定されるということを意味しない。むしろ彼は、そうした前提となる敷地や周囲の環境といった条件を、どこまで自らのコントロール下に置き、新たな「場」を築きうるか、という点を追求している。その「場」とは、動線に沿って常にシークエンシャルに展開する空間として建築を捉え、構築していく「作法」によって獲得される環境や雰囲気である。これらを踏まえ、本展は谷口建築を単体としてだけではなく、幼稚舎や湘南藤沢キャンパス(SFC)においてどのように他者の建築と協働し、谷口が望んだ建築体験を創出したかに光をあてていく。
入場無料で、なんとタダで図録がもらえる。

なお、会場の慶應義塾大学アート・センターは、三田キャンパスの正門の向かい側(桜田通りを渡る)にある建物(南別館)なので、初めて行く人はご注意を。(宮沢洋)

■展覧会概要
慶應義塾大学アート・センター主催「アート・アーカイヴ資料展XXIX:慶應義塾の谷口吉生 交差するまなざし」
会期:2026年5月11日(月)〜 2026年7月24日(金) 土日祝休館 ただし 6月27日(土)、7月18日(土)は開館 7 月13日(月)は休館
開館時間:11:00 〜 18:00
会 場 慶應義塾大学アート・センター(三田キャンパス南別館1階アート・スペース)
入場:無料
主催:慶應義塾大学アート・センター
企画:慶應義塾大学アート・センター
住所:東京都港区三田 2-15-45
交通アクセス:田町駅(JR山手線/JR京浜東北線)徒歩8分、三田駅(都営地下鉄浅草線/都営地下鉄三田線)徒歩7分、赤羽橋駅(都営地下鉄大江戸線)徒歩8分
WEB: http://www.art-c.keio.ac.jp/news-events/event-archive/artarchive29/ ※ 最新情報は上記、展覧会ウェブサイトをご確認ください。(6月27日(土)には三宅理一 谷口吉郎・吉生記念金沢建築館館長と岩井祐介 慶應義塾幼稚舎教諭が登壇するトークイベントも予定)
本展で展示されている「慶應義塾幼稚舎」(本館・自尊館・新館21・新体育館)については、本サイトでもリポートしているので、予習にどうぞ。

