小堀哲夫氏や藤本壮介氏ら現役エースが生解説! 白井晟一、東畑謙三、槇文彦ら“巨匠の技”にもうっとり──東京建築祭2026中間ルポ

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 5月16日(土)から24日(日)まで開催中の「東京建築祭2026」。平日も贅沢ぎるツアーや特別公開・特別展示がバンバン行われている。5月19日(火)と20日(水)の様子をリポートする。(初日2日間のリポートはこちら

建築界の最前線で活躍するこの2人が目の前で解説してくれる贅沢さ。左は小堀哲夫氏@メキシコ大使館、右は藤本壮介氏@JINS銀座店(写真:宮沢洋、以下も)

■5/19(火)10:30-12:00
【メキシコ大使館】大江宏のモダニズムを味わう

 第3回となる「東京建築祭2026」の目玉の1つは大使館施設の参加だ。カナダ大使館、駐日メキシコ合衆国大使館、スペイン大使館、フィンランド大使館、デンマーク大使館…と一気に5か国の大使館が初参加している。このなかで、筆者(宮沢)が全く知らなかったのが「和の巨匠」のイメージが強い大江宏(1913~89年)が設計したというメキシコ大使館(1963年)。高倍率を当選した幸運な参加者約60人とともに見学してきた。

 以下の太字は東京建築祭の公式サイトの説明文のコピペ。

永田町にある駐日メキシコ合衆国大使館は、戦後のモダニズムをリードした建築家・大江宏の作品です。普段は立ち入れない敷地に入り、大江宏の建築について研究している法政大学・小堀哲夫ゼミの学生による解説を通して、完成した模型を鑑賞します。最後は、大使館職員の案内で外観の見どころを回ります。建築の考え方や工夫を、具体的に捉える時間となるはずです。

在日メキシコ大使館(カサ・デ・メヒコ)
竣工年│1963年
設計│大江宏建築事務所
   ギリエルモ・ロッセル(メキシコ)
施工│竹中工務店

 まずは法政大学・小堀哲夫ゼミの学生による実測調査(2025年)の成果の発表を聞く。

 実測の話だけでなく、「混在並存」や「間」といった大江宏を知るうえでのキーワードも解説。筆者は大江についてはさほど詳しくないので勉強になった。

 あれ、予定になかった小堀哲夫先生が!

学生らが制作した模型。コの字の平面で、西側に中庭があり、東側はHP(双曲放物面)シェルが4方向にめくれ上がるダイナミックな造形

 そして実物見学へ。中庭は残念ながら撮影禁止。写真はこちら側(南側)のみ。

 小堀氏が注目するねじれ柱↓。構造設計は青木繁氏(1927~2024)で、形がねじれているだけでなく配筋もねじれている。そして、ねじれによって座屈を抑える働きがありそうだとのこと。なるほど。

5/19(火)13:00-15:00
【壺中居・ブラッスリーTOYO】甲斐みのりさんと巡る、東畑謙三の古美術商建築と老舗洋食店のいちごパフェ

 続いては、“おいしい建築鑑賞”という新領域を一人で切り開いた文筆家の甲斐みのり氏のツアーへ。甲斐氏は第1回から東京建築祭に協力してくれているが、筆者は3回目にしてようやく、噂の“デザート付き名建築ツアー”に同行することができた。第一目的地は、東畑謙三(1902~98年)が設計した日本橋の「壺中居」。甲斐氏のほか、東畑建築事務所設計部門統括の中村文紀氏と、同事務所入社7年目の山田一彰氏もガイドとして参加。

壺中居。場所は日本橋髙島屋の南側

1924年創業の古美術商「壺中居」。重厚なマンサード屋根と螺旋階段が印象的なこの名建築内部を特別見学。文筆家の甲斐みのりさん、 東畑建築事務所の中村文紀さん、山田一彰さんと共に、書籍『建築技師という生き方 東畑謙三との対話』の世界を辿ります。その後、境沢孝・健次親子のインテリアデザインが楽しい老舗洋食店ブラッスリーTOYOのいちごパフェを味わう特別な時間をお届けします。

壺中居
竣工年│1973年
設計│東畑謙三(東畑建築事務所)
施工│竹中工務店

ガイド:甲斐みのり。文筆家。日本文藝家協会会員。旅、散歩、お菓子、地元パン®️、手みやげ、クラシックホテルや建築、雑貨や暮らしなどを主な題材に執筆。ドラマ「名建築で昼食を」に携わる。著書に『東京建築 みる・あるく・かたる』『歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ』など。Casa BRUTUSのwebにて「甲斐みのりの建築半日散歩」を連載。

階段がエレガント!
店内。会員制ではないので、ちょっと勇気を出せば普段も入れる

建築鑑賞の後、5分ほど歩いて第二目的地の「ブラッスリーTOYO」へ。

ブラッスリーTOYOの2階を借り切ってデザート会。昭和特有のンテリアについて説明する甲斐氏(中央)。インテリアデザインは境沢孝・健次
筆者もいちごパフェを満喫(自腹)

■5/20(水)9:00-10:00
【JINS銀座店】設計者と感じる、やわらかな和とアートの共鳴

 20日(水)は、開店前のJINS銀座店へ。予想外の好天。白い左官の外壁が映える。

アントニン・レーモンド設計による教文館ビルに、2026年3月、JINS銀座店が誕生。設計を担った藤本壮介さんの案内による特別ツアーを開催します。鏡の破片を練り込み、和紙のようなやわらかな白の質感を生み出した左官壁の外観は、歴史的建築に現代の“和”を重ねます。1階から地下1階のアートギャラリーへと続く吹き抜けには、名和晃平氏の《Snow-Deer》を常設。開店前の静かな時間に、建築と彫刻が交差する空間を体感してください。

教文館・聖書館ビル
竣工年│1933年
設計│アントニン・レーモンド
施工│清水組(現・清水建設)

外観の丸っこさは「和菓子」もイメージにあるそう。それにしても、多忙な藤本氏がこんな朝早くから…

 1階の説明の後、地下へ。

 1時間、よどみなく話す藤本氏。今さらながら、「藤本さんって説明するのうまいなあ」と感心した。金沢から来たという大学生の質問に、誠実に答えていたのも印象的だった↓。

「日本的なもの」について質問した学生に、5分くらいかけて答える藤本氏。学生もナイス質問!

 JINS銀座店について詳しく知りたい方は下記の記事を。

■5/20(水)11:00
【ノアビル】正面玄関・地下エントランス前エリア(特別公開)

 続いて、この日から3日間行われる「ノアビル」の特別公開へ。ノアビルは今回初参加。個人的に今回の東京建築祭でこれを一番楽しみにしていた。筆者と同じことを考えた人は多いようで、朝7時開始の順番待ち申し込みは5分ほどで埋まったらしい。

麻布台・飯倉交差点のランドマーク、ノアビルディングは、哲学的建築家と称される白井晟一の作品です。割肌レンガの基壇と硫酸銅仕上げの楕円筒形の塔が、都市に彫刻のような緊張感をもたらします。今回、正面玄関と地下エントランス前エリアを特別公開。アーチを多用した意匠や、黒御影石に映り込む光が生む奥行き、蛇行する動線、星空のような照明など、柔と剛、光と影が交錯する内部空間の魅力を体感できます。

ノアビルディング
竣工年│1974年
設計│竹中工務店
施工│竹中工務店
構想│白井晟一
その他│第9回SDA賞金賞受賞

警察車両が停まっているのは右側にロシア大使館があるからで、東京建築祭の見学は何の問題もなく行われているのでご安心を

 前職時代の職場が近くにあったので、この階段まではよく見ていた。今回は玄関の中が見られる!

階段上からの見返し。うおおっ、イリュージョン!
玄関なのにぐるっと回れる

 玄関以上に驚いたのが、「地下エントランス前エリア」と説明されているスペース。

 筆者が見た限りでは、このスペース、地下駐車場への車の通り道でしかない。それなのにヨーロッパの都市のようなゴージャス感…。おそるべし、白井晟一。

これは外からも見える通称「ノア地蔵」
地蔵なのか! 建築好きの東京建築祭スタッフに聞いて初めて知った。建築祭スタッフ、恐るべし

残りの公開日
05/21(木)10:00-17:00(要順番待ち申込み

05/22(金)10:00-17:00(要順番待ち申込み

5/20(水)12:00
【カナダ大使館】レイモンド・モリヤマルームほか(特別公開)

 カナダ大使館の特別公開は、初日に行列が長くなり過ぎて、2日目から順番待ち申込み制度が導入された。確かにそれもわかる充実の公開っぷり。

日系カナダ人建築家レイモンド・モリヤマが設計したカナダ大使館。カナダの自然観と日本の美意識を反映した空間構成が特徴です。カナダガーデン、高円宮記念ギャラリー、E・H・ノーマン図書館を特別公開します。図書館では、設計図や模型、関連書籍に加え、建築を学べるカナダの大学も紹介します。外交施設として求められる機能と文化的な役割が、どのように空間計画に反映されているかをご覧いただけます。

カナダ大使館
竣工年│1991年
設計│レイモンド・モリヤマ
施工│清水建設

残りの公開日
05/21(木)12:00-17:00(要順番待ち申込み

荷物チェックの後、4階のカナダ・ガーデンへ
カナダ・ガーデンはぐるっと回れる
文書の調印などに使われる4階のレイモンド・モリヤマルーム

 地下のホールや図書館も公開。

顔写真はレイモンド・モリヤマ(1929~2023年)。カナダの日系人建築家。モリヤマは少年だった第二次大戦中に「敵性外国人」として収容所に送られた。建築家としての原体験は、13歳の時に強制収容されたカナダ西部のベイファーム収容所で「ツリーハウス(樹上の家)」をつくったことだという。代表作にオンタリオ科学センター (トロント)、カナダ戦争博物館(オタワ)など。近年、世界に広がる排外主義に警鐘を鳴らしていた。2023年没

トイレに行きたくなって4階のトイレに入ったら、そのビューにびっくり。用を足すのにちょっと緊張する。でも、入ってよかった!

 なお、カナダ大使館は、レイモンド・モリヤマルーム以外は、平常時でも見学できる。なので、無理せず、会期後に訪れるのもよし。(カナダ大使館の公式サイトはこちら

■5/20(水)
【ヒルサイドテラス】「ヒルサイドテラスのあゆみ-完成までの30年」(特別展示)

 これはこの日(20日)から始まった展示。初日だからということもあると思うが、ゆったり見られてお薦め!(今のところ順番待ち申込みもなし)

ヒルサイドテラスは、朝倉不動産と建築家・槇文彦との継続的な対話から、30年にわたり段階的に育まれてきた都市プロジェクトです。本パネル展では、その計画の変遷や各期の思想を丁寧に紹介。建築を「つくる」のではなく「育てる」という姿勢が、いかにまちと呼応しながら成熟していったのかをひもときます。

東京都渋谷区猿楽町29-10 ヒルサイドテラス内
特別展示:ヒルサイドプラザにて「ヒルサイドテラスのあゆみ-完成までの30年」のパネルを展示

ヒルサイドテラス
竣工年│1969年
設計│槇総合計画事務所
施工│竹中工務店
文化財指定│なし
その他│日本芸術大賞、文部大臣芸術選奨、プリンスオブウェールズ都市デザイン賞、JIA25年賞、グッドデザイン・ロングライフデザイン賞、DOCOMOO「文化遺産としてのモダニズム建築100選」、東京都歴史的建造物(AB棟)他

残りの公開日
05/21(木)10:00-17:00
05/22(金)10:00-17:00
05/23(土)10:00-17:00
05/24(日)10:00-17:00

会場はご存じヒルサイドテラスのヒルサイドプラザ(模型の赤丸部分)
ちょっと不安になるが、ここから降りる。駐車場の地下に大空間がある
こんな感じでゆったり見られる。手前側の壁には映像を投影している
受付に並ぶ『代官山ヒルサイドテラス通信』のバックナンバー。今も年に2回出しているそう。基本、1冊110円。安い!
2019年12月号の表紙。槇さん(左)、カッコ良すぎます! 中央はオーナーの朝倉誠一郎氏、右は朝倉健吾氏(撮影は朝倉徳道氏)

 東京建築祭の特別公開や特別展示を見に行く方は、前日の状況によって順番待ち制度(原則朝7時~)が導入される可能性があるので、事前に公式サイト(こちら)で確認のうえ、お出かけくださいませ。(宮沢洋)