池袋にかなり詳しい人でも、サンシャイン60よりも東側に行ったことのある人は少ないのではないか。実は池袋に20年以上住む私にも、その辺りはうっすらとしか記憶がない。そのサンシャイン60の東隣、2016年まで造幣局東京支局があった一帯に、このようなものができる。
正確に言うと、上のパースの手前側に広がる公園は既にできている。豊島区が整備した防災公園「IKE・SUNPARK(イケ・サンパーク)」で、2020年夏にオープンした。
上の写真の中央がサンシャインシティとサンシャイン60、左の超高層ビル群は、手前からアウルタワー、ライズシティ、エコミューゼタウン(豊島区庁舎)だ。池袋駅はサンシャイン60の奥の方向。こんな位置関係になる。
広々とした芝生がなんとも気持ちのいいイケ・サンパークだが、現在は巨大な工事現場の仮囲いによって、サンシャイン側と分断された状態。利用者の多くは、「ここには高層マンションが建つのかしら…」「つまらないオフィスビルができるの?」と心配になっているはず。
そこで、ここに建つ「東京国際大学池袋キャンパス」を設計している大成建設設計本部建築設計第五部の皆さんに話を聞いてきた。
設計テーマは「ステージ型キャンパス」
現場事務所に行くと、こんな人たちが出迎えてくれた。もう、話を聞く前から楽し気な感じがする。
東京国際大学池袋キャンパスは、2023年9月の開校を目指し、大成建設の設計・施工で2020年11月に着工した。造幣局跡地の約3分の1の敷地(約1万m2)に、鉄骨造・免震構造・地上22階建て・延べ面積3万4486.5m2の建物を建てる。敷地南側にある現場事務所から見ると、こんな感じ(↓)。免震層の下の基礎工事の段階だ。
造幣局跡地全体の開発を進めるのはUR都市機構。東京国際大学と大成建設は、URが実施した事業コンペにチームを組んで参加し、当選した。
東京国際大学は東武東上線・霞ヶ関駅(埼玉県川越市)の西側に第1キャンパスがある大学で、「国際社会が求めるグローバル人材」の育成に力を入れている。駅伝の強い大学としても有名だ。
池袋の新キャンパスには、イングリッシュ・トラック・プログラムをはじめ、同大学のグローバル教育機能を集約する。川越キャンパスの収容定員約7000人のうち3500人が移転する計画だ。学生数3500人のうち2000人は、100ヵ国超からの留学生で構成するとのことで、各国の若者たちが集まる活気のあるエリアになりそうだ。
建築計画上のポイントは「ステージ型」のキャンパス。これは従来の「オフィスビル型キャンパス」(効率は良いが交流が少ない)と「オープン型キャンパス」(交流は多いが大学と街との境界がない)の長所をいいとこ取りしたもの。
具体的には、地上2階レベルを多様な人々が交流する「ステージ」と位置付けてアトリウムやカフェなどを配し、その上にオフィスビル型の超高層をつくる。1~2階にあるカフェや食堂は、学生だけでなく、地域の人々も利用できるものとする予定だ。2階のステージには、公園方向からも緩やかな階段で上れる。2階の一部から上は学生だけが利用できるセキュリティーゾーン。低層棟の屋上や、超高層の中間部分には、学生のためのステージ(交流スペース)も設ける。
一番絵になる外観は公園側?
面白いなと思ったのは、一番絵になりそうな外観が、公園のカフェテリア側であること。学生は池袋駅、東池袋駅、大塚駅と、3方向からやってくるので、そのいずれからもキャンパスに入れるようにそれぞれにゲートがあり、ステージに上る階段がある。
それでも、公園側を閉鎖的なつくりにはせず、むしろ一番かっこいい部分を公園に向けていることに、池袋民としては拍手を送りたい。
多目的ホールには本邦初の回転ルーバー
校舎の内部はこんな感じ。
公園に面した低層棟の多目的ホールは、木調パネルの回転ルーバーを採用する。180度回転するルーバーは、表裏それぞれの面に吸音と反射の機能を持たせている。これは担当者の1人、滝村菜香氏が力を入れている本邦初の仕組みで、公園側から見たときに開け閉めの変化がどう見えるのかが楽しみだ。
工事がもう少し進んだら、施工プロセスもリポートしたい。
ちなみに、我がOffice Bungaのある池袋西口からこのキャンパスまでは、2019年に開業した「IKEBUS(イケバス)」1本で行ける。
「10輪駆動8輪操舵」の電気駆動ミニバス。デザインは水戸岡鋭治氏。速度がゆっくりなので30分くらいかかるのだが、歩いてもそのくらいかかる微妙な距離なので、とても楽ちん。新キャンパスで「現代建築の一般化と国際化」みたいな講義が必要であれば、ぜひお声がけいただきたい(英語で講義はできないけれど)。(宮沢洋)
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