5月中旬、福井県若狭町・熊川宿(くまがわじゅく)にある「八百(やお)熊川」に泊まってきた。遅いGW(自由業なのでGWは自由設定)に、「今まで行ったことのないところに休みに行こう」と考え、今年3月に知り合った時岡壮太氏(デキタ代表)の顔が浮かんだ。


時岡氏は今年3月6日、東京・乃木坂の国立新美術館講堂で行われた「文化庁 建築文化サミット ~まちづくり×ビジネス×デザインのシナジー~」というイベントに登壇した(「建築文化フェロー」が集結した「文化庁建築文化サミット」が初開催、自走する仕組みづくりへの一歩)。筆者はこのトークイベントをメディア兼関係者(文化庁建築文化フェロー)の立場で見に行った。錚々たる登壇者の中でも、筆者は特に、「八百熊川」を運営する時岡氏の話に興味をひかれた。
こんな若くて優秀な人が地方都市の空き家再生にこれほど生き生きと取り組んでいるのは、日本の建築界も捨てたものではない──。そんな感想を抱いたのは筆者だけではないと思う。
八百熊川は、現在4つの宿泊施設で構成される。いずれも街道沿いの空き家を再生したものだ。そのひとつである「ほたる」に予約を取った。「風情ある前川のせせらぎをお楽しみください」というフレーズに惹かれた。偶然にもそれが八百熊川の再生第一号の宿泊施設だった。

休暇目的で行ったのだが、一応、時田氏に連絡しておいたら、3時間くらい熊川宿を案内してくれた。いいものは人に伝えたくなる性分なので、ざっと写真を見ていただこう。
Jターンで熊川宿に本社を構える
その前に、時岡氏について。
デキタのnote「時岡壮太 | DEKITA | その土地と生きていく。」(https://note.com/dekita_tokioka)に時岡氏の自己紹介(2025年10月4日公開)が載っていて、それがわかりやすかったので、まるっと引用する(太字部)。

はじめまして、株式会社デキタの代表取締役、時岡壮太といいます。
1980年生まれの45歳、福井県のおおい町というまちの出身です。
(株)デキタ、という変な名前の会社を2011年に東京で創業しました。登記日が東日本大震災の4日前というすごいタイミングでした。理工系の大学の建築学科を卒業していたこともあり、(株)デキタも創業後から建築設計や建築開発コンサルティングなど、建築の開発にかかわる業務を生業としていました。
転機が訪れたのは2018年、37歳の時。
過疎集落での古民家活用という学生時代からの目標に挑戦したいと、地元福井の若狭町という自治体に本社を移転しました。生まれ故郷であるおおい町とは車で30分程度の距離。正確にはUターンではなく、Jターンというそうです。
その若狭町の熊川という小さな集落で、築160年の大きな古民家をシェアオフィスにリノベーションし、そこに新しい本社を構えました。初めての自社事業であり、投資でもありました。
熊川という集落はそのほとんどが「熊川宿」というかつて宿場であった村です。宿場であった町並みが保存されており、文化庁から「伝統建造物群保存地区」という歴史街区として選定されています。ただご多聞にもれずここ熊川でも人口が大きく減少し、空き家が問題となってしまっていました(熊川の現場についてはまた別記事でふれます)。高齢化も進み数字上はすでに限界集落とよばれる状況になっています。ただ限界集落という言葉はちょっときつい言葉だなとも感じてまして、noteでは「過疎集落」という言葉をつかおうかと思います。

本社を移転してから約8年、(株)デキタはここ熊川において、古民家ホテルや複合アウトドア施設、食品加工所などを運営する、地域に密着した事業会社として日々忙しく仕事をさせてもらっています。
正社員が8名、パートさんが16名と、まだまだ小さな会社ですが、地域に雇用を生みながら、空き家問題に向き合いながら、なんとか8年間経営を頑張ってきました。
デキタは「その土地と生きていく」というコピーをメインステイトメントに掲げています。凄腕コピーライターの友人と何度も相談しながらつくった大切なコピーです。
8年間、過疎集落での事業開発、事業運営を経験し、「その土地と生きていく」ためには、歴史的建築や伝統野菜など、いわゆる地域資源を活用し、安定した雇用を生む、良き中小企業を集落内につくることが大切だと感じるようになりました。
2025年は国の地方創生が始まってちょうど10年の節目の年です。この間、古民家ホテルやシェアオフィスなどの場所づくりや、農産品や工芸品などのプロダクト開発など、地方都市でも活かせる知見がたくさん蓄積されてきました。ここからの10年はこれらの知見をうまく組み合わせながら、小さな集落であっても安定した雇用を生み出せる、過疎集落ならではの中小企業のあり方を模索する必要があるのではと感じています。
noteでは(株)デキタの経営を通じて学んできた過疎集落の中小企業論をがんばって言葉にしていきたいと思います。
ここまで読んでくださりありがとうございました。
(ここまでデキタのnoteより)
「理工系の大学の建築学科」と本人はぼやかして書いているが、言いたくないのをあえて言ってしまうと、早稲田大学大学院修了、後藤春彦研究室の出身だ。都市計画の王道を学んだ人なのである。
食品加工やキャンプを事業に加え、相乗効果を生む
では、ここから時岡氏による熊川宿ツアーと宿泊体験のフォト日記。

























実は、筆者はこれまで空き家再生について記事を書いたことがなかった。人が書いた記事を読んで「難しいんだろうなあ」「自分の知識ではうかつには書けない」と敬遠していた。もちろん、実際は難しいのだろうと思うが、今回、「八百熊川」と「山座熊川」を見て、大きな可能性とともに身近さを感じた。「自分も20歳若かったらやるかもなあ」と思った。及び腰だった筆者が見てもそう思うのだから、こうした取り組みに関心のある人には学ぶことがすごく多いと思う。次の休みに熊川宿、超お薦めである。(宮沢洋)
