5月7日(日)にプレオープンする「まえばしガレリア」(前橋市千代田町5-9-109)の関者向け内覧会が5月6日午後に行われた。

当サイトで一連の前橋建築プロジェクト群の記事を書くのは3度目となる。別にPRをお願いされているわけではないのだが、自腹でも行きたくなる、応援したくなるのである。「一連」が何なのかは書くと長くなるので、ご興味のある方は下記の記事を先にご覧いただきたい。
衝撃の迷宮的吹き抜け、藤本壮介流リノベーション「白井屋ホテル」を見た!(2020年12月7日)
建築の中心は前橋へ? 話題の白井屋ホテルに芦沢啓治氏設計のカフェが開店(2021年9月18日)
今回の「まえばしガレリア」を設計したのは平田晃久氏だ。まずはプレスリリースから概要情報をコピペする。
【施設について】
かつて日本近代化の先駆けとなった前橋。今「めぶく。」まちとして大きな変貌を遂げようとしています。100年以上前から約60年近くに渡り映画館のあった場所、地域の人々が新しい文化に触れ、集い、親しんだ文化と暮らしの交流拠点だった土地に新たな文化の発信源として「まえばしガレリア」が誕生します。

【建築デザインについて】
9つの商店街からなる「前橋中心商店街」の中心に位置する、銀座通り二丁目商店街に面する敷地。かつて大正時代から映画館のあった場所であり、地域住民が新しい文化を求めて集まった場所。近年は市が所有者となり地域の広場として開放されてきました。周辺の街並みが繁華街化したことで広場の役目を終え、民間へ売却されたことをきっかけに本計画がスタートし、約5年間に及ぶ計画と工事によりついに完成を迎えます。

■建築家コメント(平田晃久)
「この場所はどんな新しいひろばに生まれ変わるでしょうか。私たちは大きな樹冠のように緑化されたボリュームを浮かべ、一本の樹の下に人々が集まるように、人々の自由な活動で満ちた場所をつくりたいと考えました。樹冠の中にはたくさんの住居があります。全て、庭のような大きなテラスを持ち、自然と混ざった大らかな住戸です。樹の下にはギャラリーやレストラン、屋外のオープンな居場所が入り混じる、ユニークなひろばができます。めぶく緑や街の生命力とつながった、生き生きとした建築をつくりたいと思います。」

■所在地:群馬県前橋市千代田町5-9-1
■交通:JR両毛線 前橋駅から徒歩12分

■施設使用目的:ギャラリー、レストラン、レジデンス
<1F> パブリックエリア
・ギャラリー1:タカ・イシイギャラリー
・ギャラリー 2:4つのギャラリーによる運営
小山登美夫ギャラリー
rin art association
Art Office Shiobara
MAKI Gallery



・レストラン運営:株式会社GRAPES
店名未定 (フランス料理)
2023年5月末オープン予定。


<2F〜4F>レジデンス26戸
■敷地面積:1241.11m2 375.43坪(登記簿面積)
■延床面積:2018.69m2 610.65坪(確認済証面積)
■構造: 鉄骨造
■規模:地上4階
■前面道路:南西側8m、北西側4m、北東側4m、南東側4m
■戸数:26戸
■総専有面積:1637.91m2 495.46坪
■土地の権利形態:各戸専有面積に応じて所有権を共有
■建物の権利形態:専有部分 区分所有権、共有部分 各戸専有面積に応じて所有権を共有
■事業主:株式会社まちの開発舎
■プロデュース:ジェイ・ティー・キュー株式会社
■設計・監理:株式会社平田晃久建築設計事務所
■施工:宮下工業株式会社
■開発パートナー:株式会社ワンブロック 辻本祐介、株式会社トライクコンサルティング 藤田弘之、株式会社キープブルー 井上尚志





明確な機能がない状態から設計をスタート
設計者の平田晃久氏はこう話す。「声をかけられたときには、『広場』となる場所をつくってほしいという要望で、具体的な要件がほとんど決まっていなかった。話し合いを重ねながら、徐々にプログラムを決めていく過程は、震災後に伊東豊雄さんらと取り組んだ『陸前高田 みんなの家』に似ていた」
参考記事:陸前高田「みんなの家」が惣菜店で新たなスタート、金獅子賞の空間でイートイン(2022年11月13日)

この建築は、既報の「白井屋ホテル」(設計:藤本壮介)から徒歩5分ほどのところにあり、いずれも「緑化」がデザイン上の重要テーマとなっているが、「完成」あるいは「時間」に対するスタンスがかなり違う。

白井屋ホテルは姿を現したそのときから、現状とほぼ同じ量の緑で覆われていてびっくりした。だが、まえばしガレリアの方は、目指す姿と比べると、まだスタート地点という印象だ。「目指す姿」↓を見ると、なるほどと思う。




平田氏は「夏を過ぎたころにはかなり緑に覆われていると思う」と語る。イメージ図のようなモサモサの姿になるのに一体どのくらいの時間がかかるのか、今後も前橋に足を運びたくなる1つの動機になる。
一連の前橋建築プロジェクト群は今後も続く。今回は話を聞けなかったが、中心になっているのは、田中仁氏(株式会社ジンズホールディングス代表取締役CEO)だ。

昭和の時代の建築界では、東京・代官山の「ヒルサイドテラス」(朝倉不動産+槇文彦)が民間による都市再生の成功例とされてきた。もちろんその統一感は今見ても素晴らしいが、令和の時代には、前橋のようなバラバラ感が人を巻き込んでいく原動力となる気がする。その辺りが意図的なものなのか、結果論なのか、田中氏にはいずれ「建築の愛し方」のコーナーでじっくりお話をうかがいたいと思っている。田中さん、よろしくお願いします!(宮沢洋)