「2027園芸博」に向けて“転生宣言”続々、「三菱未来館」「ノモの国」「ウーマンズ パビリオン」はここをこう使う

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 横浜市で2027年に開かれる「国際園芸博覧会 GREEN × EXPO 2027」(会期:2027年3月19日~9月26日)は、大阪・関西万博で建てられたパビリオンの“転生”を見ることも楽しみ方の1つになりそうだ。

2027園芸博での“転生”を宣言しているパビリオン3つ。まずは左の「三菱未来館」から(特記以外の写真:宮沢洋)

 三菱グループが大阪・関西万博で出展している「三菱未来館」で9月25日、国際園芸博覧会(以下、園芸博)に向けて資材を再利用する取り組みが発表された。

三菱未来館。東ゲート(写真左方向)の近くにある。夢洲駅を利用する人は見ているはず

 設計したのは三菱地所設計。このパビリオンに使われている木材を、閉幕後に粉砕して粉状にし、樹脂と混ぜて新たな素材とする。3Dプリンターで再成形し、園芸博の会場内の大型オブジェなどとして生まれ変わらせる。園芸博で三菱グループが出展するパビリオンの外装にも活用する。

 発表会場となった三菱未来館の「サンカクパーク」にはこの日から4日間、説明のパネルと、木材を再利用したアーチ形のオブジェの試作品が展示された。

サンカクパークと名付けられた休憩スペースに展示されたオブジェ。園芸博では、上部に架かる木材の格子を原料とする計画
展示された説明パネル。木材を木粉化し、ペレットとしたものを射出成型して外装材にしたり、3Dプリントしてオブジェにしたりして活用する。木材として使えるものは粉砕せずに加工して使う

 展示されているオブジェは、あくまでイメージとしてつくった小型のもの。三菱地所設計では、以前から木質系材料の3Dプリント技術(「Regenerative Wood」)を研究していて、昨年のイケフェス大阪ではこんな茶室が展示されていた。

 園芸博では雨にあたる場所で使用することになるため、耐久性の検証が今後の課題となる。

 両パビリオンの設計の中心になっている三菱地所設計デザインスタジオの荒井拓州氏は、「木材以外の材料も、大阪・関西万博のときの記憶が喚起されるような形で使うことを検討している」と話す。

 本サイトではまだ三菱未来館をリポートしていなかったので、今さらだがご覧いただきたい。説明文は荒井氏らが執筆した『ディテール』246号(彰国社)からの引用(太字部)。

©Nacasa&Partners

万博施設に代表される仮設建築は、従来「一時的で消費的な存在」と見なされがちだったが、2025年大阪・関西万博の三菱未来館では、それを刷新する小さな資源循環を実践した。

©Nacasa&Partners

建設から解体・再資源化までを一体の設計対象とし、杭基礎や再利用可能な資材、敷地内を循環する掘削土、仮設部材の外装転用など、限られた期間でも環境負荷を抑えた資源循環を実現。さらに、展示と建築を統合し、来館者の身体的移動を通して物語を体感させる空間構成により、短期間の存在でありながら高い文化的価値を生み出し、「建てる」「還す」「使い回す」が連動する循環の仕組みを提示している。

©Nacasa&Partners

「一時性」は消費ではなく価値生成の契機となり、社会や環境の変化に応答しながら持続可能な未来像を摘く「ショートサーキユラー・アーキテクチヤー」の提案である。(三菱地所設計/荒井拓州、中村教祐)

2025年大阪・関西万博三菱未来館
三菱地所設計/松井章一郎十根本大祐十荒井拓州十中村教祐
構造設計:三菱地所設計
施工:竹中工務店・南海辰村建設・竹中土木共同企業体
主要用途:博覧会施設(展示場)
構造:S造、一部木造

規模:地上2階、地下1階
竣工:2024年10月

「ノモの国」の∞型リングは植物が絡みつくアーチに転生

 永山祐子氏は、大阪・関西万博の2つのパビリオンを転生を転生させることを表明している。1つはパナソニックグループパビリオン「ノモの国」の∞型リング・ファサードだ。

 永山氏が主宰する永山祐子建築設計は7月29日にこんなリリースを出した(太字部)。

2025年大阪・関西万博から2027年国際園芸博覧会へ
パナソニックグループパビリオン「ノモの国」のファサードリユースについて

有限会社永山祐子建築設計は、パナソニック ホールディングス株式会社および東邦レオ株式会社との協業により、現在開催中の2025年大阪・関西万博のパナソニックグループパビリオン「ノモの国」のファサードをはじめ、ライトアップ演出用照明やミスト設備を、2027年に横浜で開催される『2027年国際園芸博覧会(以下、GREEN×EXPO 2027)』の「Urban GX Village」に出展する東邦レオ株式会社の STUDIO(仮称)においてリユースすることを決定いたしました。

東邦レオ STUDIO(仮称)のイメージ図(リリースより)

GREEN × EXPO 2027 では、会場で整備される建築物を環境に配慮された「GREEN サーキュラー建築」とし、本博覧会の主役である花や緑と調和した風景の一部として開催理念やテーマを表現、発信する役割を果たしつつ、素材の調達から建設、運用、撤去、再利用まで建築が循環するプロセスに着目した試みを積極的に取り組むことを目標としています。

 リリースに補足すると、大阪・関西万博では建物に寄りかかるように使われているアーチが、園芸博では純粋なアーチのパーゴラとして使われる見込み。現在開催中の個展「確かにありそうなもの」の内覧会で永山氏がそう話していた。

永山氏の個展に展示されていた「ノモの国」の模型(俯瞰)。アーチが建物本体に寄りかかる形となっているが、園芸博では地面から地面に架かるアー状のパーゴラとする計画という

「ウーマンズ パビリオン」はリース材も併用して転生へ

 もう1つは、「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」の組子風ファサード。これについてはリユースの構想が今年5月に明らかになっており、本サイトでもすでに記事にしている。

 このときの情報に1つ付け加えると、ドバイ万博由来のファサードを再度リユースするほか、本体部分は「リース材」を使ってつくることになるそう。異なる形状のリユース材とリース材がある部分でまじり合うようなものになる見込み。これも現在開催中の個展「確かにありそうなもの」の内覧会でそう話していた。

永山氏の個展に展示されていた「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」の模型。園芸博では平面形が変わるのに加え、本体部分をリース材を使ってつくる計画という。どんどん進化していく!
「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」。下も

 園芸博はこんなイベントだ。

三菱未来館に展示されていたポスター

2027年国際園芸博覧会
(International Horticultural Expo 2027, Yokohama, Japan)
開催場所:旧上瀬谷通信施設(神奈川県横浜市)
開催期間:2027年3月19日(金)~ 2027年9月26日(日)
博覧会区域:約100ha(内、会場区域80ha)
クラス:A1(最上位)クラス(AIPH承認+BIE認定)
参加者数:1500万人
地域連携や ICT(情報通信技術)活用などの多様な参加形態を含む
有料来場者数:1000万人以上

 会場は横浜市の郊外部(旭区・瀬谷区)に位置する旧上瀬谷通信施設で、2015年に米軍から返還された約242ha の広大な土地のうち約100haが博覧会区域となる。長年にわたり土地利用が制限されてきたことから、農地や緩やかな起伏の草地など豊かな自然環境が広がり、南北に流れる相沢川、和泉川の源流部、谷戸地形等の貴重な自然資本が残っている。

 地図を見ると、会場は相鉄線の三ツ境駅から北に3kmほど。東京の人間でもピンと来ないそんな場所で、しかもテーマが「園芸」で、「有料来場者数1000万人以上」とはななかな強気だなと、計画が公表された頃には思った(招致が決定したのは2022年11月)。が、大阪・関西万博の最終入場者数が2500万人前後の見込みだと聞くと、横浜ならかなり盛り上がるイベントになるのかもしれない。考えてみると、「園芸」というのは、「自然との共生」「持続可能性」「食料問題」みたいな話で、大阪・関西万博の続きのような感じでもある。本サイトでも引き続き注目していきたい(横浜なら出張旅費がかからない!)。(宮沢洋)