コロナ夏の必見展03:建築みやげで世界を巡る、掌(てのひら)の建築展@大阪市立住まいのミュージアム

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 「建築好き」にお薦めするこの夏の展覧会。第3回は、7月10日から大阪市立住まいのミュージアムで開催されている「掌(てのひら)の建築展」だ。「出張のついでに見に行きます」と伝えたら、なんと監修者のお2人が出迎えてくれた。建築史家の橋爪紳也氏と建築家の遠藤秀平氏である。贅沢!

企画者の2人。建築史家の橋爪紳也氏(右)と建築家の遠藤秀平氏 (左)(写真:宮沢洋、以下も)

 「橋爪紳也+遠藤秀平 建築ミニチュアコレクション」のサブタイトルで分かるように、2人が所有する建築ミニチュア、庶民的に言えば「建築みやげ」を紹介する展覧会だ。橋爪氏のコレクター熱の高さはすでにこちらの記事(建築の愛し方03:「村野藤吾×建築ミニチュアギャラリー」で、誰もが「建築LOVER」!─橋爪紳也氏)でリポートした。遠藤氏のコレクションもその世界では有名である。

 「建築ミニチュア」の世界は、この2人が顕在化させたと言って過言ではない。それまでは、一部の建築好きが密かに集めていたものを、「展覧会」という形で世の中に公認させた。筆者もそこそこ集めていたので、「あっ、集めている人、他にもいっぱいいたんだ」と知った。

 始まりは、2015年に開催された「ENDO SHUHEIワールド・ミニチュア・ワールド」展。それから5年ちょっとの間に、2人で組んだ企画展、仲間を引き込んだ企画展など、東京、大阪、京都、滋賀、岡山と日本各地で開催されてきた。

本展の会場入り口。タイトルの「掌の建築」は川端康成の「掌の小説」をもじったもので、遠藤氏の発案という
会場全景

 今回の展覧会は、「コロナ禍で海外に行けない」という社会状況を踏まえ、世界各国の建築ミニチュアをエリア別に展示。観覧者に世界旅行気分を楽しんでもらう趣向だ。以下、どこのエリアなのかは、ミニチュアを見て想像を。

 青い布で緩く仕切られた外側のエリアは、写真家川村憲太氏と橋爪紳也氏のコラボレーションによる写真展「ミニチュア・ワンダーランド」。「KAJIMAダイジェスト」の連載のために撮った写真群だ。

  本展のためにつくった世界地図の前で2人をパチリ。

色が付いた国は、どちらかが所有するミニチュアのある国

 「地図をつくったら、余白を意地でも埋めたくなってきた。早く海外に行けるようになってほしい」と橋爪氏。「こんなに世界中のものを集めたのかと改めて驚いた。学生たち(神戸大学大学院)のお土産も貢献している」と遠藤氏。ちなみに遠藤氏は、今年3月で神戸大学大学院教授を退職した。これからは設計活動に専念できるわけだが、「こういう展覧会は学生の力を借りないとなかなか難しいかも」と、ちょっと寂しそう。 

 建築ミニチュアで世界を巡る──。まるで東武ワールドスクエアのような展示を私物で実現してしまう。この2人がいなかったら考えられなかった企画展だ。建築の新たな楽しみ方はきっとまだまだ眠っている。(宮沢洋)

■開催概要
掌(てのひら)の建築展 橋爪紳也+遠藤秀平 建築ミニチュアコレクション
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:火曜日(ただし祝日を除く)
会場:大阪市立住まいのミュージアム(大阪くらしの今昔館) 企画展示室(大阪市北区天神橋6丁目4-20 住まい情報センタービル8階。地下鉄Osaka Metro谷町線・堺筋線、阪急電鉄「天神橋筋六丁目」駅下車、3号出口より直結)
入館料:企画展のみ300円、常設展+企画展一般800円
主催:大阪市立住まいのミュージアム(大阪くらしの今昔館)
協賛:鹿島建設株式会社、淀鋼商事株式会社
協力:鹿島出版会、一般社団法人日本建築設計学会、神戸大学光嶋裕介研究室、生きた建築ミュージアム大阪フェスティバル実行委員会、海洋堂、大阪府立大学観光産業戦略研究所、株式会社橋爪総合研究所、遠藤秀平建築研究所
監修:橋爪紳也 遠藤秀平
公式サイト・http://konjyakukan.com/kikakutenji.html