年明け4日間限定の上野「本格模型」巡り、“3展一気見”は1月8日まで

Pocket

 東京・上野にある3つの国立ミュージアムで、「日本のたてもの」と題した連携展覧会が行われている。3つの施設「国立科学博物館 」「東京国立博物館・表慶館」「国立近現代建築資料館」は会期が微妙にずれており、最注目で最後の登場となった「東京国立博物館・表慶館」の「古代から近世、日本建築の成り立ち」が12月24日に開幕した。3施設は徒歩20分圏内。 1月8日までは3つの展覧会が1日で回れる。ただし、始まるや否や3施設とも年末休館に入ってしまったので、“3展一気見”ができるのは、1月5日(火)〜8日(金)の4日間のみだ。

東京国立博物館表慶館のエントランスで出迎えるのは法隆寺五重塔の10分の1模型(中央)。1932年、「昭和の大修理」に先立って制作されたこの模型は、実際の修理の中心になった大工棟梁の西岡常一が制作に関わった。模型自体が文化財級の精緻さだ(写真:宮沢洋、以下も)
法隆寺五重塔って本当はこんな色なのか…

 国立科学博物館と東京国立博物館は、1月2日、3日も開館している。都内の人は正月休みの気分転換にいいかもしれない。東京国立博物館で会場となる「表慶館」は、片山東熊設計の重要文化財(1908年竣工)なので、建物を見るだけでも価値がある。

東京国立博物館・表慶館の外観

 ただし、国立科学博物館と東京国立博物館はコロナ対策のため事前予約制。当日フラリと行っても見られないのでご注意を。

東博が「古代から近世」、科博が「近代の日本」

 で、これらは一体何の展覧会なのか。全体タイトルが「日本のたてもの─自然素材を活かす伝統の技と知恵」とざっくりしていて分かりづらいが、大きくは「模型と図面で見る日本の建築技術」の展示だ。文化庁が東京オリンピック・パラリンピックの開催に合わせて実施している「日本博」という企画の1つだ。国連教育科学文化機関(ユネスコ)で「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」が無形文化遺産に登録内定したことも契機となっている。

 分担としては、東京国立博物館が「古代から近世」を、国立科学博物館が「近代の日本」を、ともに建築模型を使って紹介する。国立近現代建築資料館は両展をつなぐ意味で、近世から近代への移行期に木造建築の伝統技術で進んだ「近代化」の実態を、図面を中心とする建築資料を用いて紹介する。

 3展の内容詳細、場所、会期は以下のとおり(公式サイトから引用)。

◆近代の日本、様式と技術の多様化@国立科学博物館
内容:国立科学博物館会場では、「近代の日本、様式と技術の多様化」をテーマとして、主に近代以降の日本の建築やその様式について、12点の「建築模型」や図面・建築素材といった関連資料を展示し、紹介します。

国立科学博物館の会場風景

会期:2020年12月8日(火)~2021年1月11日(月・祝)*事前予約制
休館日:月曜日、2020年12月28日(月)~2021年1月1日(金・祝)*ただし、1月11日(月・祝)は開館
会場:国立科学博物館 日本館1階 企画展示室(東京都台東区上野公園7-20)

◆古代から近世、日本建築の成り立ち@東京国立博物館・表慶館
内容:政府・文化庁は2018年より、国連教育科学文化機関(ユネスコ)にて、「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」を無形文化遺産へ登録するための活動を進めています。本展は、1964年の東京オリンピックに併せて当館で開催された「日本古美術展」出品模型や、文化庁が国宝・重要文化財建造物を修理する際に、形態、技法などを検討し、その技を伝承するために製作してきた模型を活用し、古代から近世までの日本建築の成り立ちについてご紹介します。

東京国立博物館表慶館の会場風景

会期:2020年12月24日(木)~2021年2月21日(日)*事前予約制
休館日:月曜日、2020年12月26日(土)~2021年1月1日(金・祝)、1月12日(火)*ただし、1月11日(月・祝)は開館
会場:東京国立博物館・表慶館(東京都台東区上野公園13-9)

◆工匠と近代化―大工技術の継承と展開―@国立近現代建築資料館
内容:本展のテーマ設定に関連して強調したいのは、西洋では世界のどこよりも早く近代化が進み、後発の日本は、その近代化された西洋に倣う、つまり「西洋化」することによって「近代化」を推し進めたことです。従来の研究や展示では、外から、上から、急激に進められたこの「西洋化」が注目され、そこでスポットライトを浴びたのは、西洋建築の知識・技術・様式を実践できる西洋人・日本人の「建築家」たちでした。しかし、他方には、日本の木造建築の伝統技術を継承する「工匠」たちが、あくまでも内から徐々に進めた「近代化」がありました。本展では、この「工匠」たちの例として、代々大工を家業とした岩城家(富山県)、久保田家(愛媛県)、内田家(岐阜県)に着目し、残された図面・彫物絵様・文書・書簡・建築技術書・大工道具などの建築資料を使って、彼らの歩んだ軌跡を浮かび上がらせます。

国立近現代建築資料館の会場風景

会期:2020年12月10日(木)~2021年2月21日(日)
休館日:2020年12月26日(土)・27日(日)・29日(火)~2021年1月3日(日)・9日(土)~11日(月・祝)
会場:国立近現代建築資料館(東京都文京区湯島4-6-15 湯島地方合同庁舎内)

建築模型の楽しみ方

 模型自体のすごさでは東京国立博物館、一般の人へのとっつきやすさでは国立科学博物館、知らなかったことの多さでは国立近現代建築資料館と、それぞれに特徴がある。

 実は、3展の開幕前に「日経おとなのOFF」の美術館特集の取材を受け、建築模型の面白さについてコメントした。

 要点を拾うと、
・普段は見られない方向の外観が見られる。
・断面模型では、内部のつくりが分かる。
・実際の建築の技が分かりやすく表現される。

 プレスリリースを見てコメントしたものだが、大きく外れてはいなかった。例えば、こんな模型。

織田有楽斎がつくった茶室「如庵」の5分の1模型@東京国立博物館表慶館。裏側の外壁のつくりもじっくり見ることができる
旧北村家住宅の10分の1模型(断面)@東京国立博物館表慶館。わら葺き屋根や竹の断面まで表現されていて萌える!
安藤忠雄氏設計、「光の教会」のコンクリート製模型@国立科学博物館。実物や写真では分かりにくい、斜めの壁の貫入の仕方がよく分かる。模型をコンクリートでつくってしまうのも安藤氏らしい

 会期のずれも含めて「連携感がいまひとつ」なのはひとこと言いたくなるが、各時代の建築模型をこんなにまとめて見られる機会は2度とないかもしれない。年明けにお時間のある方は見ていただきたい。行く時間のない方は、図録の購入をお勧めする。中身を勝手に見せるわけにいかないが、3展共通のこの図録は、実に楽しく分かりやすくできている。Office Bungaでは「保存版」決定。図録はアマゾンなどで購入できる。(宮沢洋)

会期、開館時間などは変更する場合がありますので、最新情報は各館ホームページ、展覧会公式サイト等でご確認ください。