保存版!必見ミュージアム22件総まとめ、コロナでどうなった?

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 前回の記事(「京セラ美術館ついに開館」「隈研吾展は1年延期」必見ミュージアム総まとめ(前編))では、コロナ拡大防止のために中断・再開、あるいは延期公開された建築系の展覧会を整理した。後編の今回は、これから開幕予定の展覧会の現状を整理する。まずは、前編で紹介した分も含めて、タイトルと会期をリスト化してみた。

<開始日が公表されている展覧会>(終了が早い順)
◆「坂茂建築展 仮設住宅から美術館まで」@大分県立美術館 2020年5月11日~7月5日
◆「日本を超えた日本建築―Beyond Japan―」@谷口吉郎・吉生記念金沢建築館 2020年6月2日(再開)~8月30日
◆「開校100年 きたれ、バウハウスー造形教育の基礎ー」(巡回)@東京ステーションギャラリー 2020年7月17日~9月6日
◆「マル秘展 めったに見られないデザイナー達の原画」@21_21 DESIGN SIGHT 2020年6月1日(再開)~9月22日
◆「石元泰博(タイトル未定)」@東京オペラシティ アートギャラリー 2020年7月18日~9月22日
◆「建築をみる2020 東京モダン生活(ライフ) 東京都コレクションにみる1930年代」@東京都庭園美術館 2020年6月1日~9月27日

◆「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」@東京都現代美術館 2020年6月9日~9月27日
◆「杉本博司 瑠璃の浄土」@京都市京セラ美術館 2020年5月26日~10月4日
◆「Under 35 Architects exhibition 2020」@うめきたシップホール 2020年10月16日~26日
◆「建築家・浦辺鎮太郎の仕事」@横浜赤レンガ倉庫 2020年11月14日~12月12日
◆「分離派建築会100年展 建築は芸術か?」@パナソニック汐留美術館 2020年10月10日~12月15日
◆開館記念春夏プログラム「Thank You Memory ―醸造から創造へ―」@弘前れんが倉庫美術館 2020年6月1日~(終了日未定)
◆「隈研吾展(仮称)」@高知県立美術館 2020年11月3日~2021年1月3日
◆「菊竹清訓 山陰と建築」@島根県立美術館 2021年1月22日~3月22日
◆「隈研吾展(仮称)」(巡回)@長崎県美術館 2021年1月22日~3月28日
◆「隈研吾展(仮称)」(巡回)@東京国立近代美術館 2021年7月~10月
◆「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築へ」@森美術館 2023年1月~3月

<開幕・再開時期未定>
◆「妹島和世+西沢立衛/SANAA展『環境と建築』」@TOTOギャラリー・間
◆伊東豊雄監修「公共建築はみんなの家である」(会場未定)
◆「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」@髙島屋史料館TOKYO
◆「建築家・瀧光夫の仕事―緑と建築の対話を求めて」@京都工芸繊維大学美術工芸資料館
◆「クラシックホテル展開かれ進化する伝統とその先」@建築倉庫ミュージアム
◆「アンサンブル・スタジオ展」@TOTOギャラリー・間
◆「中川エリカ展」@TOTOギャラリー・間
◆「吉阪隆正展」@東京都現代美術館

 自分でまとめておいて何だが、なかなか有用なリストではなかろうか。ここだけ出力して、壁に貼っておいてはいかが?

SANAA展は会期検討中──TOTOギャラリー・間

 では、開幕が延期されている展覧会の現状に移ろう。まずは、東京・乃木坂のTOTOギャラリー・間で5月14日から始まるはずだった「妹島和世+西沢立衛/SANAA展『環境と建築』」。同ギャラリーでは2003年以来、17年ぶり2回目の個展だ。間違いなく今年の建築系展覧会の目玉の1つだが、6月に入ってもまだ始まっていない。

SANAAの設計で2019年春に完成した日立市庁舎の屋外広場の屋根(写真:宮沢洋)

 当初の会期は「8月9日(日)」まで。ウェブサイトには「展覧会会期・講演会開催日を変更いたします」と書かれているので、中止ではないようだ。まずはひと安心。念のため、館に聞いてみたが、現在、会期を調整中で、中止ではないとのこと。

 SANAAの最新プロジェクトでは、パリの老舗百貨店「サマリテーヌ(LA SAMARITAINE)」の改修計画が世界から注目されており、おそらくこの展覧会でも展示物の1つになると思われる。下の写真は2018年に筆者がパリで撮った施工現場の写真。2020年春のオープンが予定されていたが、パリもコロナで工事が遅れていると聞く。展覧会では新生サマリテーヌの詳細が見られるだろうか。開幕が楽しみだ。

パリの老舗百貨店「サマリテーヌ(LA SAMARITAINE)」の工事風景。2018年10月に撮影。さすがパリ、仮囲いもおしゃれ
サマリテーヌは既存の外装が波打つ透明ガラスで覆われる。一部見えていた部分を2018年10月に撮影。ガラスがすべて設置された姿を一刻も早く見たい方はこちら

 

世界が注目する「ヘザウィック」は大幅延期──森美術館

 4月8日から森美術館(東京・六本木ヒルズ)で開催されるはずだった「ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築へ」は、2023年1月~3月に会期が変更された。書き間違いではない。3年後の「2023年1月~3月」である。

 ヘザウィック・スタジオ(1994年創設)は、トーマス・へザウィック(1970年、英国生まれ)率いるデザイン集団。ロンドンを拠点に世界各地で革新的な建築などのプロジェクトを手掛ける。私事になるが、今年2月にニューヨークに行った際、ヘザウィック・スタジオの新作「ヴェッセル」(2019年、ハドソン・ヤード)を何も知らずに見て、びっくりした。

(写真:宮沢洋、下も)

 巨大な松ぼっくりのようなこの建築、上って下りるだけで「機能」がない。だが、今までに見たことない質感と形。ホテルに帰って調べて、へザウィックの設計だと知った。そんなこともあり、森美術館のこの展覧会(当初会期は2020年4月8日~6月14日)はとても見たかったのだが、仕方がない。3年待とう。

伊東豊雄氏「公共建築はみんなの家」は別会場で仕切り直し──LIXILギャラリー

 「3年待つ」くらいはよしとしなければいけない。東京・京橋のLIXILギャラリーで4月16日~6月30日に開催予定だった「公共建築はみんなの家である」は、中止が決まった。しかも、あろうことか、ギャラリー自体が閉館になってしまう。5月15日、突如ウェブサイトに掲載された「閉廊のお知らせ」には、こう書かれている。

 「この度、1981年伊奈ギャラリーとして開廊以来、40年に亘り活動を続けてきたLIXILギャラリーは今秋をもちまして閉廊いたします。2013年よりLIXILギャラリーと名称変更した後も『建築とデザインとその周辺をめぐる巡回企画展』(東京・大阪)、『クリエイションの未来展』、『やきもの展』と977回もの展覧会を開催してまいりました。皆さまの多大なるご支援により、これまで継続してこられましたことを改めて厚く御礼申し上げます」(ここまでウェブサイトから引用)

 977回! すごい歴史。「今秋をもちまして」とあるので、まだギャラリーで展覧会を見られる可能性はあるわけだが、先の「公共建築はみんなの家である」については、「中止」と明記されている。「新型コロナウィルス感染拡大防止のため、お客様の安全を最優先とし、本展覧会を中止とさせていただきました。同テーマでの展覧会を、伊東豊雄建築設計事務所主催にて都内にて開催予定です」。伊東事務所主催でもやる、というのはさすが伊東氏。決まったらすぐにお知らせしたい。そして、TOTOギャラリー・間や森美術館のような民間ミュージアムには、本当に頑張ってほしいと思う。

五十嵐太郎氏「日本橋の建築」展は開幕待ち──髙島屋史料館TOKYO

 民間ミュージアムということでいえば、「髙島屋史料館TOKYO」をご存じだろうか。1970年創設の髙島屋史料館(大阪)の分館として、2019年3月、日本橋髙島屋S.C.本館の4階に開館した。小さなミュージアムだが、企画の着眼点やこだわりのある展示が面白い。ここで4月29日から始まる予定だった五十嵐太郎氏(建築史・建築評論/東北大学大学院教授))監修の展覧会「装飾をひもとく~日本橋の建築・再発見~」も、開幕が延びている。

史料館のある日本橋髙島屋S.C.本館(写真:宮沢洋)

 同展について、ウェブサイトではこう説明している。「本展では日本橋高島屋を中心に、日本橋地域の近現代建築を取り上げます。なかでも建築の細部・装飾に焦点をあて、西洋の古典主義が日本橋界隈の建築にどのように導入されているかを検証します。知られざる装飾の歴史をひもとき、新たな建築の楽しみ方を提案します。※会場では日本橋建築MAPを配布予定です」(ここまでウェブサイトから引用)

 これもなかなか面白そうだ。館に聞いてみたところ、現在、会期を調整中で、中止ではないとのこと。開幕を待ちたい。

史料館を見た後はぜひ屋上へ。正面の丸っこいペントハウスは、かつて屋上で飼われていた象を模したといわれるもので、村野藤吾の設計だ

建築界にファンの多いエリアソン展──東京都現代美術館

 東京都現代美術館で3月14日から始まる予定だった「オラファー・エリアソン ときに川は橋となる」は、会期が6月9日(火)~ 9月27日(日)に変更になった。

 エリアソン(1967年~)はアーティストだが、「空間」を強く意識した作品が多く、建築界にもファンが多い。金沢21世紀美術館の庭に恒久展示されている「カラー・アクティヴィティ・ハウス」が有名だ。日本での大規模な個展は、金沢21世紀美術館での「オラファー・エリアソン – あなたが出会うとき」(2009年11月~2010年3月)以来、10年ぶりとなる。本展のキュレーターは、かつて金沢21世紀美術館のキュレーターだった長谷川祐子氏。以下、館のウェブサイトより。

 「展示室の内外で展開される2つの大規模なインスタレーション、写真のシリーズ、公共空間への介入をめぐる作品など、本展のための新作をご紹介します。また、鑑賞者の目の前に虹を再現する初期の代表作《ビューティー》(1993年)をはじめとする体験型作品やインスタレーションを展示します」

 なお、東京都現代美術館では11月から「吉阪隆正展」が予定されていたが、こちらは「開催時期延期」となり、具体的な日程は公表されていない。

田根剛氏の新作ついにお披露目──弘前れんが倉庫美術館

 当サイトで既報した弘前れんが倉庫美術館(設計:田根剛)も、開館が延びていた注目展の1つ。「2020年開館記念春夏プログラム」と銘打った「Thank You Memory – 醸造から創造へ –」は、「場所と建物の『記憶』」をテーマに、8人のアーティストが新作を中心に展示する。6月1日から、まずは弘前市民限定の事前予約制でプレオープンした。終了時期は未定。美術館の建物については、こちらの詳報をご覧いただきたい。

(写真:長井美暁、下も)

隈研吾氏が高輪ゲートウェイ駅の設計過程を展示──21_21 DESIGN SIGHT

 建築メインではないが、昨年2019年11月22日から「21_21 DESIGN SIGHT」(東京・乃木坂)で始まり、コロナで中断していた「㊙展 めったに見られないデザイナー達の原画」が再開する。6月1日から事前予約制での受付となる。会期は9月22日まで。日本デザインコミッティー(1953年設立)のメンバーたちのスケッチや図面、模型を展示する。建築分野では、内藤廣氏や北川原温氏、隈研吾氏などが出展している。隈氏のJR高輪ゲートウェイ駅(下の写真)は今からでも見ておきたい。

(写真:長井美暁、下も)

夏以降も期待の建築系展覧会が目白押し!

 ここからは、この先に予定されている建築系の展覧会を駆け足で。

・「建築をみる2020 東京モダン生活(ライフ) 東京都コレクションにみる1930年代」@東京都庭園美術館 2020年6月1日~9月27日

東京都庭園美術館(写真:磯達雄)


・「開校100年 きたれ、バウハウス―造形教育の基礎―」(巡回)@東京ステーションギャラリー 2020年7月17日~9月6日

・「石元泰博(タイトル未定)」@東京オペラシティ アートギャラリー 2020年7月18日~9月22日

・「Under 35 Architects exhibition 2020」@うめきたシップホール 2020年10月16日~26日

・「建築家・浦辺鎮太郎の仕事」(巡回)@横浜赤レンガ倉庫 2020年11月14日~12月12日

倉敷アイビースクエア内アイビー学館で2019年10月~12月に開催された浦辺鎮太郎展の会場風景(下の写真も)。2020年11月~12月に横浜赤レンガ倉庫に巡回する(写真:宮沢洋)

・「分離派建築会100年展 建築は芸術か?」@パナソニック汐留美術館 2020年10月10日~12月15日

・「菊竹清訓 山陰と建築」@島根県立美術館 2021年1月22日~3月22日

 いろいろ調べてみたら、なんと来年の年明けには島根県立美術館(松江市)で菊竹清訓展があるではないか! 島根県立美術館といえば、書籍「菊竹清訓巡礼」の表紙を飾った菊竹晩年の名作。そして、まだ見ぬ冬の宍道湖…。これは来年も楽しみだ。(宮沢洋)

▼前編はこちら
「京セラ美術館ついに開館」「隈研吾展は1年延期」必見ミュージアム総まとめ(前編)