内藤廣連載「赤鬼・青鬼の建築真相究明」第3回:「マジで建築論パート2」

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今回の亡霊は、ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライト、吉阪隆正、黒川紀章……と、超豪華メンバー。さてどんな話?(ここまでBUNGA NET編集部)

延長戦、お願いします

[青] 前回は無駄話しが多すぎたんで、長くなりすぎた。収まらなかったんで今回はパート2にした。まだ、言いたいことが山のようにあるからね。

[赤] 気まぐれで場当たり的な会話だけど、少しは分かりやすさってのも必要だからなー。どうしよう。赤とか青とか、それを建築に結び付けたらどうだろう。

[青] まあもともと無理を承知の上での対話だからな。ヤケクソでいいんじゃないの。

[赤] 思いついたんだけど、「赤い鬼社会」と「青い鬼社会」ってのもあるかもしれないね。

[青] また、変なこと考え始めたな。それって国旗の色か。あぶないあぶない。やめとけやめとけ。政治的な匂いがしてきた。話をひろげすぎだよ。

超高層ビルで埋まっていく都心の風景 ※編集部注:本文の内容と直接関係はありません…(写真:宮沢洋)

[赤] じゃあ、「赤い建築」と「青い建築」ってのはどうだ。

[青] まあ、それならギリギリありかもねっていう気もしてくる。

[赤] たとえば、、、、、、組織事務所やゼネコンの設計部、、、とかは青いよねー、みたいなのはどうかな。

[青] 彼らだって扱っている物件が大きいから仕方がないんだよ。関係者も多いし、まとめるのがたいへんなんだよ。青いからって、それを理解してやらなきゃ。

[赤] やっぱりオマエ、かなり肩を持つなー。

[青] しょうがないよ青なんだから。納得はできないけど、理解はできる。

[赤] プロジェクトをやってる担当者も、それがわかっていて、それで時たま鬱積している赤が顔を出すんだね。だけど慣れてないから、とかくトンチンカンなことになりやすい。

[青] ちゃんとした自己表現の意味と役割を心得ている人は滅多にいないな。みんな怖さを知らない。こわがっていない。

[赤] いないねー。なんかプレゼをする時も、自分たちがやっていることは大変なことなんだぜ、っていう目線が抜けないね。

[青] でもそれって、サラリーマン的使命感なんじゃないの。

[赤] プロジェクトの図体がデカいんだから、歴史的なこととか地域のこととか、もっと言えば未来のこととか、全部責任を負っていることなんだけどね。

[青] だから中途半端な超高層や巨大建築ができちゃうんだよ。

[赤] 青い建築超高層群、ってとこかな。半ば諦めの境地かな。これがこの時代の無意識なんだよ。だってみんな不満に思ってないんだもん。

[青] オマエ、それでいいのか。

[赤] 組織って、勤めている人たちはサラリーマンなんだから、組織の論理をトレースするのが宿命なんだよ。

[青] 見たところ、大型プロジェクトなら、上司の許可をどうとるのか、会社の役員会をどう通すか、ってなことにほとんどのエネルギーを費やしているね。

[赤] 彼らに発注するクライアント側やディベロッパーもみんな組織だから似たようなもんだね。似たような人たちの集団だと思えば、これも動かしているのは組織的な無意識だね。あぶないあぶない。

[青] どういう街にするか、どういう時間が流れるか、未来はどうなるのか、なんて話はスッポリ抜け落ちている。

[赤] たぶん、売れるのが正義だ、って思っているんだよ。売れるってことは、世の中の需要に答えていることで、同時に自分の組織の要求にも合ってる。だから、それが正義だ、って思っている。

みんなで滅びりゃこわくない

[青] でもそれって、一昔前のクルマメ―カーや家電メーカーがやってたことと同じだよね。どんなデザインでも売れるものが正義、結果はマーケットが判断しているんだから、っていう理屈。

[赤] その居直りと傲慢さがプロダクトデザインの長期停滞を招いたんだけどね。いまだに反省する感じはないけどね。

[青] 2000年あたりから完全にやられたね。2007年から09年までグッドデザイン賞の審査委員長をやってたからよくわかるよ。委員長ってのは全体が見えるからね。

[赤] 韓国勢との負け戦のリアルな実況中継を見ているような気分だったな。まったく暗くなるね。だいたいそういう損な役割をやらされる宿命にあるみたい。

[青] 子供の頃からだよ。新国立競技場の時もそうだったし、そして今も。

[赤] これが定めか。

[青] グッドデザイン賞に関しては立て直しにはずいぶん知恵を絞った。応募分野の見直しと再構築なんかをかなりやった。その成果が最近はずいぶん出てきて、あの頃の倍の応募があるみたいだね。まだまだだけど、少しはマシになってきたかな。

[赤] グッドデザイン賞はアジアでも信頼される賞に育ったってことだよね。よかったよかった。

[青] でも、あの頃は、SAMSUNGやLGにすっかりマーケットを奪われてしまっていた。やがて、サンヨーがなくなり、シャープが解体され、東芝は窮地に落ちいっている。

[赤] 若い世代は、もはやサンヨーなんて名前すら知らないものね。けっこういいメーカーだったんだけどね。最後の頃はデザインの重要性に気がついて、充電再利用ができるエネループなんて電池を商品化して頑張ったんだけど、時すでに遅し、だったね。

[青] 売れるものが正義、っていうのは、マーネージング中心の経理や営業的な考え方で、まるでデザインの役割と本質を理解していないってこと。これが企業のビジョンを弱くするんだね。

[赤] つまり文化を理解していない。ってことは、世の中の人が何を求めているのか理解していない、ってことだよね。カネに気を取られて大切なことを置き去りにした報いだね。世間てのは怖いぞ。見てないようで、ちゃんと見ているんだから。 

社会は全て相似形

[青] どうも、今のディペロッパー中心の再開発は、似たようなところに来ている気がしてならないな。組織の中でも勘のいい人や賢い人たちはわかっているんだろうけど、止められない。それも組織の性だね。行くとこまで行くんだよ。

[赤] わかっちゃいるけどやめられない、って植木等状態。

[青] 植木等っていっても今の人にはわからないよ。

[赤] こりゃまた失礼しましたー。

[青] それも通じないって。

[赤] 要は、「建築」って価値がものすごい勢いで空洞化しているってことだよね。でも、そんなことにこだわっていたら商売にならないからね。

[青] 売値の相場を作って、手早く売りさばく。そんなことの繰り返しで、街なんかできるはずがない。

[赤] 「建築」って価値は、歴史的な時間、風土や人、に深く関わっている、なんて古くさいこと言ってたら変人扱いされる世の中だからなー。

[青] 組織的承認を得ようとすれば、問題のないもの、何か言われたときにも言い逃れできるもの、ってことで、無事是名馬、みたいな凡庸なものがスタンダードになるんだよ。これがこの業界の無意識の正体なんだね。

[赤] だれかこの空気に「水を差す」奴はいないかー。

[青] みんな疑問に思ったりもしていない。疑問に思うようなやつは、クビになるか転職するかだね。

[赤] 東京都の審議会で審議対象の巨大プロジェクトを見てうんざりするのは、みんなおんなじだってこと。

[青] 景観審の計画部会は、ここを通さないと特区案件の行政手続きに入れないことになっているから、まあ言ってみれば門番みたいな役割なんだね。だからディベロッパーは必死になってここを通そうとしてくる。

[赤] それはそれでいいんだけど、ときたま本当にいやになるね。プレゼは判で押したように、同じやり方で承認をとりにくるからね。多分、関連企業や自分の会社の役員会にプレゼしたのと同じもの。

[青] やっぱり会社員なんだねー。巨大プロジェクトなのに、志のかけらもない。

[赤] 最近では、盛り込まれている内容も画一的で姿形も似たようなものばかり。

[青] このあいださすがに心の広いオレでも、これでいいのか、と叫びたくなることもあったよな。

[赤] 赤坂の超高層のプレゼを受けて、日本橋の超高層のプレゼを受けて、何ヶ月後かに渋谷の超高層のプレゼを受けたんだけど、ほとんど同じ形をしていたのには驚いたね。

[青] ちょっとブチ切れた。大人気なくてオレは反省してるけど。

[赤] どれも、地元や地域のコードを大切にデザインを決めました、なんて涼やかな顔で言ってる。言葉を失いましたね。

[青] いい加減にしろよ !!!!

[赤] まあまあ落ち着いて !!

[青] なんにせよ、こちらの心に訴えかけてくるようなものはほとんどないね。あまりの無神経、できるだけ抑えるようにしてるけど、申請してくるみなさん、必死で耐えてるの分かってくださいね。

[赤] どうしてもこれは公共の利益に反する、と思った時は断固として戦う姿勢は見せるけどね。これは立場上仕方がない。

[青] でも、いつもそんなことやってたら東京の都市再開発は止まってしまうからね。

[赤] だからほとんどは、ほどほどにアドバイスするだけ、ってことになる。これはしょうがないね。

[青] ガマンガマン、どこまで耐えられるか、の修行だよ。でも、限りなく身体と心と脳ミソの健康には悪い。

親子丼がカツ丼に

[赤] 小泉内閣の時にできた都市再生緊急整備地域、いわゆる特区制度ができてから加速度的に増えたからね。特区制度そのものはわるくない。

[青] それ以前の十年間を思い出してみれば、1992年あたりにバブル経済が崩壊して以降、都市が不活性化した。森ビルをのぞいて、だれも大きな投資をしようとはしてこなかったんだから。

[赤] 90年代後半は世相が暗かったね。阪神大震災、地下鉄サリン事件、山一証券の破綻などなど、この先どうなるんだろう、って思ったよ。都市もなんとなく元気がなかったよね。

[青] それに風穴を開けたのが都市再生緊急整備地域、いわゆる特区制度なんだから、これはいいことだったんだと思うよ。都市にカツを入れて動かすってことだよね。

[赤] あっ、親子丼がカツ丼になったみたいな感じかな。

[青] そのカツじゃないって !!! 禅坊主の「喝」だよ。

[赤] わかってるけどボケてみました。

[青] だけど、一旦その流れができると、みんなイケイケになる。これがこの国のダメなところ。そして、急速に無意識化する。立ち止まって考えもしない。おそろしいね。

[赤] このあいだ都の事務局にどれくらいの件数を審議したのか聞いてみたんだけど、2006年から今までで65プロジェクト、つまり65本もの超高層案件を審議したらしい。

[青] 毎年3~4本を審査していることになるけど、ほとんどが記憶にも残っていないな。

[赤] そのとっかかりから委員をやっているから、だいたいのことは分かっているつもりだったけど、65もの案件をやったなんて忘れてた。

[青] 超高層は一本1000億から1500億、最近じゃあ工事費高騰でこれの倍ぐらいのも出てきたね。ともかく莫大な金が投下されるわけだけど、いつもこんなんでいいのか、と思っちゃうよ。

[赤] オレたちも巻き込まれたザハの新国立競技場なんか、国家プロジェクトなんだけど、ほぼこれと同じ額なんだからね。今の状況を見ると、あの時は建物一つであれだけ大騒ぎしたのに、なんか複雑な気持ちになるよね。

[青] まったくな。まあ、それは忘れよう。世間なんてそんなもんだよ。

[赤] でも、超高層は背が高くて目立つし、周囲のどこからでも見えてしまうんだから、自分の敷地なんだから何をやってもいい、ってことにはならないよ。これは公共だよね。だから景観行政が必要なんだよ。

[青] いわばわがまま勝手な「赤な気分」を抑える役割だな。

[赤] いやいや、カネと組織、これは「青の世界」だからね。だから出来上がるのは「青の建築」なんだよ。でも、それも行き過ぎると無味乾燥になる。

[青] そんなのばっかりじゃあ都市の文化は滅びるからな。

[赤] それも抑えなきゃ。

[青] そう考えれば、「青」って社会が成り立つための必要悪ってことかー。

[赤] うーん、少なからずそうかもね。その比較でいきゃ、「赤」は個人が成り立つための必要悪ってことになるぞ。

[青・赤] おーー、オレたち悪の二人組かー。

都市は輝かなくちゃ

[ル・コルビュジエ] なにをバカなこと言ってるんだ。人類は進歩するんだよ。都市は輝かなくちゃ !!!

[赤] あれはアイロニイじゃなかったんですか。

[コルビュジエ] 大真面目だよ。

ル:コルビュジエが計画したチャンディガール(インド)のキャピトル・コンプレックス(写真:倉方俊輔)

[青] でも、チャンディガールはほぼ中層までですよね。

[コルビュジエ] 古い社会をブチ壊すくらいの気持ちがないと何も変わらないんだから。超高層くらいいいじゃないか。もっとも今のガラス張りのやつには納得していないけどな。もっとヒューマンなやつをやってみたかった。

第170回芥川賞を受賞した九段理江著『東京都同情塔』(新潮社)。 建築家が主役で、“現代版・バベルの塔”とも評されている

[赤] たぶんうまくいきませんよ。『東京都同情塔』みたいな終末感が漂うものになっちゃいますよ。

[コルビュジエ] ひとつくらい誰かたのんできてほしかったなー。そしたら、こういうのだったらいい、ってサンプルを残せたんだけど、、、。

[フランク・ロイド・ライト] マイルハイタワーは絶対に意味があるぞ !!! あのプロジェクトは人類の夢なんだから。

[青] 高さ1600mですか。いかになんでも、ちょっと強引な気もするけど、、、。

[ライト] 周りは田園都市にすれば都市問題はすべて解決する !!!

[赤] それはないような気がするけど、、、、。集めりゃいいってもんでもないと思うけどなあ。第一、そのタワーに閉じ込められてる気分は、いくら景色が良くてもたまらない感じがすると思うけどなあ。

[ライト] まあ、実は仕事がなくて暇だったからヤケクソでやってみただけなんだけどね。

[青] 巨匠なんだから気まぐれはやめてください !!!

吉阪隆正(写真提供:アルキテクト事務局)

[吉阪隆正] 都市っていう存在は、人類という生き物が生きていることの現れであるべきなんだよ。今の都市にはそれが感じられないのが不満なんだけどね。

[赤] 人も都市もなんか味が薄くなってきてますよねー。

[吉阪] 生命感や躍動感がないんだよ。生きてる感じかしないね。その中で文句も言わないで暮らしている人もどうかと思うよ。

[青] ひょっとして人類として退化しているのかもしれなませんねー。

[吉阪] だから、評論家みたいにグダグタ言っていないでなんとかしろよ、生きてるうちに。こっちに来てからじゃ何にもできないんだから。

[青・赤] はい、がんばります。でも、なんか負け戦の予感もするけど。

青っぽい時代の赤い黄昏時

[赤] 今の建築界は相当青いね。青一色、オレの出番は本当に少ないね。

[青] ザハ以来かな。あれが建築界のトラウマになってる気がする。

[赤] 建築の姿形を通して何かを表現をする、意志を表明する、そんなことを目論むと袋叩きにあうからね。

[青] だから、「負ける建築」っていうやり方は今の社会を生きる絶妙な手段なんだよ、特にこの国では。

[赤] わかるけど、そんなんでいいのかなー。毒気を抜かれた赤なんて意味ないじゃん。オレにはできない。だいたいBUNGAの宮沢さんがレポで取り上げるものってかなり赤いよね。

[青] それも毒気のあるやつが好きだよね。毛綱毅曠とかTeam ZOOとか。

[赤] 考えようによっては、青い部分てのは、つまりオマエが守ろうとしていた部分てのは、資本主義社会の中でどんどん消費されて、最後はオレの赤味だけが残るってことが多いような気がする。

[青] たしかにね。青は強そうだけどもろいかもしれないねー。

[赤] マグロも赤身の方がうまいしね、高いけど。

[青] ほどよい中トロの方が上だと思うけど。要するに、刺身のランクなんて所詮は付加価値の高い低いで身分が決まるだけのこと。記憶に残るのは極上の中トロの味だけってことよ。

[赤] 夕暮れ時に林立する丸の内の超高層を眺めていると、建築っていう文化の黄昏を見てるような気になることがあるなー。匿名性、無意識、無常感、いろんな言葉が浮かんでくるな。

[青] この時代の文化の行き止まりかぁ。まだまだ、っていう気もするけどね。

[赤] そういえば、黄昏時の「たそかれ」って、「誰なんだ彼は」ってことだよね。

[青] 匿名性の皮を被った超高層の群れを見ると、まさに「黄昏時」、「誰なんだ彼は」っていうのがボーッと林立している風景なんだなー。

[赤] よくわかんねー。あっ、また脱線、建築論に戻らなきゃ。

赤い時代の青春建築

[青] 赤っぽい話でいうと、中銀カプセルタワービルなんてどうだ。

中銀カプセルタワービル(写真:宮沢洋)

[赤] あー、ついに壊されちゃったよねー。よく今まで頑張ってた、って感じだよ。

[青] 壊される前、知り合いが見せてくれた。ボロボロだったけど、必死で未来を描こうとしていた健気さが漂っていて、けっこう泣けたな。

[赤] あれはコンセプト勝ちの建物だから基本的にはオマエのテリトリーだけど、あまりにコンセプトがぶっ飛んでいたんで、黒川さんの中の赤鬼が柄にもなく調整役に回ったって感じだな。ディテールの辻褄が合ってないのに形に落とし込まなきゃいけないだろ。

[青] とくに、ユニットの設備まわり、かなり強引だな。でも、あの建物には意味があったんだよ。最先端をやって社会を驚かせようって企みが全てに優先されている。

[赤] そんな社会だったんだね。竣工は72年だけど、なんてったって考えたのは60年代なんだから。取り壊される前にカプセルユニットの中を見せてもらったんだけど、すごく面白かった。それと時代を感じたな。

[青] まず、狭いけどオレたちぜんぜん住めますね。印象的だったのはやっぱり丸窓だけど、それより気になったのは、ビルトインされているオーディオとテレビ。

[赤] ソニーのテープレコーダーとトリニトロンのカラーテレビだからねー。カッコいい。まさにあの時代の最先端を必死で表現しようとしていて泣けてくる。そしてあれをやろうとした気持ち、わかる。

[黒川紀章] キミたち今頃わかったの。おそいねー。キミにも言ったことあるだろ、オレの最高傑作は中銀だ、って。言ってる意味、わっかるかなー。わっかんねーだろーなぁ。

[赤] ちょっと先を行き過ぎたんですかね。

[青] ホモ・モーベンス、行動建築論、ヘリックス都市、それとメタボリズム、最先端をいってましたからね。

[赤] でも、誰かのコンセプト、つまり概念には住めない、って思う人もたくさんいたんじゃないですか。日常って矛盾と不協和音の集合体ですからねー。そんな綺麗な世界には住めないって思うのも無理ないですよ。

[黒川] バカだなオマエら。わかる奴だけ住めばいいんだよ。主体は都市にあるんだから、もはや住むって概念も古いんだよ。都市の広がりこそが住まいなんであって、あそこはいわば寝室って考えれば、なんの不自然もない !!!

[赤] そうかぁ、ってわかったような気分になっちゃうのが黒川さんの危ないところですね。説得力ありすぎですよ。本当に、そんなもんか、って思えてきちゃいますからね。あぶないあぶない。

[黒川] 建築って、お金を出す人も建てる人も、その気にならなきゃ建たないだろ。だからそれも建築って価値の本質に繋がっているんだよ。君たちの考え方が青いっていうか、甘いねー。

[青] 青をそういう意味で使わないでください。

[黒川] あっ、言い過ぎかな。

[赤] でも、よくわかります。なにせ半世紀前ですからね。よく壊されずに建っていたもんです。

[青] 「中銀」て、何か銀行かと思ってたら、そうじゃないんですね。「中央区銀座」のこと。地元のディベロッパーの建物なんですね。そんなことも知らなかった。今まで、どっかのバブリーな銀行が道楽で建てた建物かと思っていた。

[黒川] 不勉強きわまりない !!!

[赤] でも、あの形、コンセプト優先で、ちょっとカッコわるくないですか。ユニットはわかるとしても、真ん中のエレベーターシャフト、サビサビのコールテン鋼が丸出しで、ストレートすぎませんか。

[青] たぶん、ユニットは付け替えていくもので、シャフトは存在感、って役割分担を表現しようとしたんですよね。

[赤] それと、シャフトのテッペンが斜めに切られているのも、妙にデザインが顔を出していて好きになれなかったなー。

[黒川] まあ、なんとでも言え。ユニットはサンフランシスコ近代美術館に収蔵されて歴史に残るんだから、それでいいのだ。

[青] 日本の一番いい時期、建築界の勢いのあった時代の遺物になったんだから、すごいことです。

[赤] あっちこっち、建築の話に結びづけようと努力はしたんだけど、やっぱり話は飛びがちで、まだまだ語り尽くした感じはないね。

[青] ってことで、まだ終わんないけど、どうする。

[赤] 次回、もう一回延長戦をするしかないね。BUNGAさん、すみません。

いえいえ、このサイトは「売れる」「売れない」の蚊帳の外なので、赤鬼・青鬼さんも、亡霊さんたちも、本音全開の原稿をお待ちしています! それと、言われてみるとBUNGAの宮沢が取り上げる建築は赤いですかねえ。割と青も好きなんですけど…。(この部分はBUNGA NET編集部)

(今回はここまで!)

内藤 廣(ないとう・ひろし):1950年横浜市生まれ。建築家。1974年、早稲田大学理工学部建築学科卒業。同大学院理工学研究科にて吉阪隆正に師事。修士課程修了後、フェルナンド・イゲーラス建築設計事務所、菊竹清訓建築設計事務所を経て1981年、内藤廣建築設計事務所設立。2001年、東京大学大学院工学系研究科社会基盤学助教授、2002~11年、同大学教授、2007~09年、グッドデザイン賞審査委員長、2010~11年、東京大学副学長。2011年、東京大学名誉教授。2023年~多摩美術大学学長。

【展覧会のお知らせ】
鳴門市新庁舎の開庁を記念し、新庁舎建設の紹介と、本市のまちづくりに関連する模型や映像展示、また庁舎の設計者である建築家・内藤廣がこれまでに設計した代表的な建物を紹介する展示を行います。
※会期中無休、予約申込み不要、入場無料
〇日程:令和6年6月3日(月) ~ 6月29日(土) 
〇時間:9:00 ~ 16:30
〇場所:市役所新庁舎 2階 大会議室 ほか

詳細は鳴門市のサイト↓で。
https://www.city.naruto.tokushima.jp/docs/2024050800043/