日本科学未来館と国立極地研究所、ドリームスタジオ、テレビ朝日、朝日新聞社が主催する「南極観測70周年記念」の特別展「大南極展」が7月1日、日本科学未来館1階企画展示ゾーンで始まった。6月30日に行われた内覧会に行ってきた。BUNGA NETでなぜ南極展なのかというと、筆者(宮沢)が大の「南極昭和基地」ファンだからだ。


展示はこんな感じ↓。









さすがは子どもの来館が多い日本科学未来館の展示で、普段、建築展ばかり見ている筆者は、子どもの興味をそそる見せ方にいちいち感心した。
しかし、正直に言うと、筆者が一番見たかったものの情報がほとんどないまま展示が終わってしまった。展示のメインエリアには「南極昭和基地」の「建築」に関する展示がほとんどないのだ。
本題から少し離れるが、筆者が南極昭和基地ファンになったのは、ある時、この本↓を手に入れたからだ。

『南極建築1957-2016』。タイトルからしてすごいが、この本は内容もエディトリアルデザインも本当にすごい。日本初のプレファブ建築が誕生した第一次観測隊の1957年を起点に、2016年までを5期に分け、観測船の代替わりと重なるエポックメイキング的な建築物の変遷を追っている。モリナガ・ヨウ氏による緻密な図解は圧巻。他国の南極基地の写真比較も面白い。それらをかっこよく見せるエディトリアルデザインがあまりに素晴らしくて、誰がデザインしたんだろうと改めて奥付を見たら、今年3月に亡くなった祖父江慎氏がADだった。さすが。
この本は2016年から2017年にかけて,大阪と東京のLIXILギャラリーで企画・展示されたものの図録だ。東京のLIXILギャラリー(2020年に閉廊)の展示は見ていないのだが、おそらくあの展示スペースにはこの情報量をすべて盛り込むのは無理だったと思われるので、建築好きは今からでも中古本を探して入手することをお薦めする。
筆者が昭和基地ファンになったのは、この本の素晴らしさに加えて、初代昭和基地の設計の中心になったのが、浅田孝(1921~1990年)だと知ったからだ。

建築好きはよく知っていると思うが、浅田は丹下健三のもとで戦後の初期プロジェクト、広島平和記念公園や図書印刷原町工場、旧東京都庁舎などを担当した。丹下の懐刀(ふところがたな)だ。
この本に載っている「昭和基地を設計した建築家・浅田孝」(笹原克著)によれば、プロジェクトのキーマンであった朝日新聞の記者・矢田喜美雄が早稲田大学山岳部の吉阪隆正と武基雄に相談に行いったところ、武が当時、講師として東大から来ていた浅田孝をプロジェクトに引き込んだという。一般的な設計クレジットでは、「基本設計:日本建築学会南極建築委員会、実施設計:竹中工務店」となっているので、この話は知らなかった。
話を今回の「大南極展」に戻すと、筆者が見たかった南極昭和基地の建築情報は、展示のメインエリアを出た後にあった。お土産売り場との間に、展示会の企業ブースのような一画があって、現在の南極昭和基地に関わっている企業が自ら情報発信していた。


1968年の第10次隊から参加しているミサワホームのブースも、もちろんある。ここで、筆者が立ち話をした福田真人氏(ミサワホーム総合研究所領域創成センター極地住環境技術研究室室長兼R&D戦略室)が、なんと南極で越冬したことがあるということが判明! 名刺を見ると「一級建築士 南極地域観測隊第57越冬隊」とあるではないか。かっこいい!

ブースにいたもう1人の手塚啓氏(ミサワホーム総合研究所領域創成センター極地住環境技術研究室専任室長兼マネジメントセンター住文化資産活用研究室)は、こんなものを見せてくれた。

うわっ、これって初期南極昭和基地で木質パネルをつなげるときのコネクター!!


ほかにも、KDDIの人に通信技術の話を聞いたり、レンゴーの人に段ボールの進化の話を聞いたりしてとても面白かった。家族でこの展覧会に行く建築好きは、家族がお土産コーナーにいる間に、この企業コーナーでたっぷり情報収集してほしい。会期は9月27日まで。詳細は公式サイトを。

ところでこの記事をここまで読んでくださった南極観測関係者の皆さん、「南極でのリアルなイラストルポ執筆」(BUNGANETで生発信)というミッションはいかがでしょう。モリナガ・ヨウさんのイラストは素晴らしかったですが、やっぱり現地に行かないと…。来年還暦の私でよければ、いつでも行きますよ。まずは夏隊かなと思いますが、「南極は越冬してこそ」ということであればいきなり越冬隊でも。ご検討くださいませ。(宮沢洋)

