直島に安藤忠雄氏10番⽬の「直島新美術館」が開館、9番⽬の「ヴァレーギャラリー」以来3年ぶり

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 5月31日、ベネッセアートサイト直島に、安藤忠雄氏設計による10番⽬のアート施設となる「直島新美術館」が開館する。

(写真:GION)
(写真:GION)

 遠からず、現地を訪れて実体験を含めたリポートを本サイトで掲載するつもりだが、まずはプレスリリース(太字部)と広報用画像で概要をお伝えする。

■直島新美術館の建築について

建築は、1992年開館のベネッセハウス ミュージアム以降、30年以上にわたり直島の数々の建物を⼿掛けてきた安藤忠雄⽒が設計を担当しました。

(写真:GION)

丘の稜線をゆるやかにつなぐような⼤きな屋根が特徴的な建物は地下2階、地上1階建てです。トップライトから⾃然光が⼊る階段室は地上から地下まで直線状に続いており、階段の両側に4つのギャラリーが配置されています。地上フロアの北側にはカフェを併設し、瀬戸内海を臨むテラスから、豊島や⾏き交う漁船など、瀬戸内海らしい景観を眺めることができます。

(写真:GION)
(写真:GION)

直島の集落内に初めてできる美術館建築のため、外観は本村の集落の景観になじむよう、焼杉のイメージに合わせた⿊漆喰の外壁や本村の⺠家から着想を得た⼩⽯が積まれた塀などが特徴的で、美術館までのアプローチや建築からも直島の歴史や⼈々の営みと体験が緩やかに繋がるようデザインされています。

(写真:GION)
(写真:GION)

■直島新美術館(※ベネッセアートサイト直島における安藤忠雄設計による10番⽬のアート施設)
設計:安藤忠雄建築研究所
建築:地上1階、地下2階の3階建て、カフェ併設
敷地⾯積:6,018㎡、延床⾯積:3,176 ㎡
ギャラリー:(1)373㎡、(2)300㎡、(3)320㎡(4)494㎡ カフェ:144 ㎡(キッチンは除く)※⼩数点以下四捨五⼊
設⽴・運営:公益財団法⼈ 福武財団(⾹川県・直島 理事⻑:福武英明/名誉理事⻑:福武總⼀郎)

館⻑:三⽊あき⼦
開館⽇:2025年5⽉31⽇(⼟)

住所:⾹川県⾹川郡直島町 3299-73
開館時間:10:00〜16:30(最終⼊館16:00)
休館⽇:⽉曜⽇(ただし、祝⽇の場合開館、翌⽇休館)
※不定休あり。ベネッセアートサイト直島ウェブサイト開館カレンダーにて随時更新。
鑑賞料⾦:オンライン購⼊(⽇にち指定) 1,500 円/窓⼝購⼊ 1,700円/15 歳以下無料
※瀬⼾内国際芸術祭 作品鑑賞パスポート対象施設
駐⾞場:⼀般⾞両(20台)、⾃転⾞(15 台程度) いずれも無料
施設URL:https://benesse-artsite.jp/art/nnmoa.html
⼀般問合わせ先:info-newmuseum@fukutake-artmuseum.jp

■安藤忠雄(建築家)
直島での体験は、ここを訪れた⼈たちの記憶に永遠に残るものだろうと思います。⼦どもの頃に聴いた⾳楽や鑑賞した芸術はいつまでも記憶に残っています。多くの⼦どもたちが直島を訪れることによって、新しい世界を切り開いていくような感性を磨いてもらいたい。私は“感動”こそ、⼈間を育てる⼤きな⼒だと考えていますが、感性を磨くことは、この“感動”の機会を増やすきっかけなのです。直島は、この“感動”を喚起させる類のない島であり、 直島新美術館の建築もまた、⼈々の感性を育み、“感動”を⽣むものであると信じています。

 「安藤忠雄展|青春」の内覧会での安藤氏。2025年3月19日撮影(写真:宮沢洋、以下も)

 このプロジェクトは、グラングリーン大阪「VS.(ヴイエス)」で7月21日まで開催中の「安藤忠雄展|青春」でも、模型やスケッチなどが展示されている。

「安藤忠雄展|青春」での「直島新美術館」の展示。以下の2点も

 プレス内覧会の際に、安藤氏にこのプロジェクトについて質問すると、「福武總⼀郎さんのエネルギーにはいつも圧倒される」と話していた。あのエネルギッシュな安藤氏をしてそう言わしめる福武總⼀郎氏のコメントはこちら。

■福武總⼀郎(公益財団法⼈ 福武財団名誉理事⻑)
直島新美術館ではアジアの現代美術を中⼼に展開します。それは今後アジアの現代美術がさらに興味深いものになっていくだろうという期待のほかに、⽇本は地政学的にも⽂化的にもアジアの⼀員であることを意識していくべきだと考えているからです。私にとってのアジア的な感性とは、⼈間も⾃然の⼀部ととらえ、⾃然と共に⽣きる姿勢です。これまでの欧⽶のコレクション作品は既存のアート施設において展⽰され、⽇本を含むアジア地域の現代美術は直島新美術館で展⽰されることによって、ベネッセアートサイト直島全体としてみればバランスのとれた展⽰の展開になるのではないかと思います。

 ちなみに、ベネッセアートサイト直島における安藤忠雄設計による「9番⽬」のアート施設は、2022年3月に開館した「ヴァレーギャラリー」。規模は小さいが、こちらも実に安藤氏らしい建築だ。

「ヴァレーギャラリー」。2022年3月に撮影(写真:宮沢洋)

 安藤氏はこの建築について、「原点に立ち返るために、光をテーマにした」と語る。「原点」というのは、安藤氏が若き日に見たローマのパンテオンを指している。

 近年は海外でのプロジェクトが多い安藤氏だが、今年は7月に坂の上の雲ミュージアムに増築される形で「こども本の森 松山」がオープンするなど、建築界の話題の中心になりそうだ。(宮沢洋)