フォトルポ「奈良監獄ミュージアム」、2500円で「美しき監獄」と「自由」について知る

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 前回、「星のや奈良監獄」についてリポートした。「行きたい!」と思った人は多いと思うが、全室スイートのホテルに宿泊するのはなかなかにハードルが高い。奈良に行くならまずは「奈良監獄ミュージアム」がお薦めだ。県外からの日本人は大人2500円(奈良県在住者大人2000円、海外在住者大人3500円)。それくらいの価値は十分にある。

ミュージアムのアプローチ(北西側)から見る。ホテル側だけを利用する人は、五翼の舎房や中央看守所の外観が見えない(写真:特記以外は宮沢洋)

 ホテルと両方見て回ってわかったのだが、「ハビランド・システム」の五翼の外観は、ミュージアムの動線を体験した方がよくわかる(宿泊客はミュージアムも見られるので、宿泊すれば両方堪能できる)。

ミュージアムにはホテルとは別の北側の門から入る(写真:星野リゾート)
門を入ると、右方向に塀沿いを歩く(写真:星野リゾート)
矢印がミュージアムの動線。北の門を入って、北東側の壁沿いを歩き、保存された第三寮を抜けて北西側の展示エリア(A~D棟)に進む
ぐるっと塀沿いを歩いて、敷地の広さと建物の遠景を見せる
五翼の中央、第三寮(保存棟)から建物内へ

 ミュージアムはすでにかなり人気があって、土日は7月末まで予約が満杯のようだ。平日ならば、数日先でも空いているようなので、予約ページをのぞいてみてほしい。

 旧奈良監獄そのものについては、前回のリポートでかなり詳しく書いたので、奈良監獄ミュージアムの内容はプレスリリースからの引用(太字部)を主にさせてもらう。

奈良監獄ミュージアムは、歴史展示にとどまらずデザインやアートを通じて監獄を語り、来館者が自らの生き方や価値観を考えるきっかけを提供するミュージアムを目指します。美しい赤レンガ建築と共に紡がれてきた歴史と対峙し、規律に支配された空間や時間から「問い」を受ける。来館者自身が想像を広げ、日々の生活と重ねながら「自由」について捉え直す。当たり前の日常を揺さぶる美しき監獄ミュージアムです。

シンボルマークは鍵がモチーフ。アートディレクター:佐藤卓/TSDO(資料:星野リゾート)

「保存エリア」となる全96室の独居房が連なる「第三寮」は、ヴォールト状の天井や高い場所に設けられた窓から自然光が差し込み人権への配慮がうかがえます。監視窓を備えた重厚な木製扉に堅牢(けんろう)な鍵、近代監獄の面影とその場の空気感を直接肌で感じることができます。

独房内。狭いけれどきれい。壁・天井とも、しっくい仕上げの下はレンガ積み
入り口側を見る。ホテルの客室は、左右の壁を9~11室つなげて1室とした
旧浴室。このあと、展示エリアへ

「展示エリア」のA棟では、8つの展示室で奈良監獄の歩みを日本の行政制度と共に紹介します。明治政府は、不平等条約改正を見据え、諸外国に法治国家として認められるため、人権を重んじる監獄を目指しました。展示では、その一大プロジェクトを担った設計者の山下啓次郎氏の足跡や、中央看守所から全容を見渡す構造と当時の先進技術が集結した構造について、1/420の再現模型で知ることができます。耐火性と耐久性を重視したレンガで造られた奈良監獄は、職人の指導下で受刑者自らが製造・積み上げたもので、1906年だけで延べ15万人以上がこの大事業に携わりました。その後の「奈良少年刑務所」時代には、日本初の総合訓練施設として改善・教育の指導だけでなく、高校通信制課程が導入され、受刑者は「生徒」と呼ばれていました。地域住民向けの「若草理容室」やスポーツ交流など、社会との接点が数多く設けられています。A棟では、当時の作業やレクリエーションの様子を、イラストや写真で展示しています。

山下啓次郎が設計した五大監獄の門の比較模型。左は鹿児島、右が奈良

B棟では、刑務所という特殊な社会での生活を「規律」「食事」「衛生」「作業」「更生」「お金」「自由」7つのテーマをデザインを通じて紹介します。「規律」は、起床から就寝、布団の畳み方に至るまで厳格なルールが定められた様子を展示で紹介。「食事」では、全国の刑務所の個性が現れる献立や食器を展示。「衛生」は、受刑者は清潔を保つこともルールとされ、「トイレに行くには。」、「入浴時間は。」など、決められた時間に定められた方法で身を清めた様子をグラフィカルに紹介しています。管理された刑務所での生活をたどるうちに、分刻みのスケジュールや固定観念にしばられる現代の生き方に気づき、「自分は本当に自由か」の問いを提供します。

かつての医務所を改装したC棟では、「罪と罰」「時間と命」といった普遍的なテーマのもと、5組のアーティスト作品と受刑者による刑務所アートを展示。アートが投げかける鋭い問いに触れることで、鑑賞者の感性を揺さぶり、日常を捉える視点をアップデートするきっかけを提供してくれます。また、展示の締めくくりとなる「むすびの部屋」では、アーティストや身近な人へ言葉を届ける「プリズン ポストカード プロジェクト」を実施しています。

展示を堪能した後は、カフェで余韻に浸るひとときを。おすすめは、赤レンガをモチーフにしたカレーパンとご当地ソーダです。明治の洋食文化を映したカレーは、少年刑務所時代に人気のメニューでした。ザクッとした食感とスパイシーな味わいが楽しめます。ほかにも明治のレシピに着想を得たチーズケーキもあり、赤レンガの先に広がる空や庭園を眺めながら、思索を深める時間を過ごせます。ミュージアムショップでは、建築美を収めたポストカードや雑貨、アパレルなど、オリジナルアイテムが充実。また、全国の刑務所作業製品を紹介するギャラリーも併設しています。アートディレクター佐藤卓氏がデザインの視点で選りすぐった逸品の数々は、実際に購入することも可能です。

しまった、赤レンガ風カレーパン食べなかった! 不覚…(写真:星野リゾート)

 通常ルートはこんな感じだが、知っておいた方がいい“特別枠”が2つある。

 1つは毎日行われている「中央看守所見学」。所要時間 約15分で無料。要予約。これに参加すると、ホテル側のセキュリティエリアとなっている中央看守所にホテル側から入ることができる。ただ、この見学は大人気のようで、空き状況を見ると11月まで満杯だった(予約はこちら)。

(この写真と下の写真は開業前の6月23日に行われた星のや奈良監獄の「先行メディアレセプション」で撮影したもの)

 もう1つは7月3日からスタートする「監獄と自由を巡るツアー」。これは大人 2000円で土・日1時間のみ行われる。このツアーは最後の部分で、宿泊客でも入れない「表門」の2階に入れる。(予約はこちら

ここからの景色は、このツアーに参加した人しか見られない

 前回も書いたように、奈良市内には古建築に加え、戦前の近代建築の名作、現代建築の話題作がたくさんある。まだ行ったことのない人、しばらく行ってない人はぜひ旅の候補に加えてほしい。(宮沢洋)

奈良監獄ミュージアム by 星野リゾート
所在地 :奈良県奈良市般若寺町18
開館時間:9:00~17:00(最終入館 16:00)
定休日 :なし
料金  :大人 2,500円~(税込)
予約  :公式サイト予約ページより。事前予約を推奨
アクセス:直通バスで「奈良監獄ミュージアム前」下車徒歩1分

     近鉄奈良駅より18分/JR奈良駅より25分
URL  :https://hoshinoresorts.com/nara-prison-museum/ja

前回のホテルリポートはこちら↓。

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