説明不要の伝わりやすさ、ギャラリー・間の「大西麻貴+百田有希 / o+h展」で“大化け”への通過点を記憶に刻む

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 「大西麻貴+百田有希 / o+h展:⽣きた全体――A Living Whole」が9月4日(水)から始まる。9月3日午後に行われたプレス内覧会に行ってきた。この展覧会は説明不要だと思うので、まずは会場写真をざっとごらんいただきたい。

(写真:宮沢洋)

 以下は、展覧会のコンセプト文だ(太字部)。

生きた全体――A Living Whole

ひとつの建築をつくる時、 その建築を含む「生きた全体」をどのように考えられるでしょうか

営みの全体

建築をつくるという営みは、私たちが生きることそのものです。その場所にふさわしい建築を、人々とともに掘り起こし、考え、つくり、育てていく。私たちは、そうした営みをも含めた全体を、建築だと捉えています。 空間的全体 建築をつくると、その内側にひとつの世界が生まれます。一方で、建築はその外側の世界にとっての一部分です。もしも建築が、内側と外側の世界をつなぐ存在となりえるならば、小さな居場所から大きな環境までを連続的に捉えることができます。建築をつくるとは、スケールを横断して、単体では取り出せないひとつながりの関係性を生み出すことです。

時間的全体

建築は、今目の前にあるものとしてだけではなく、過去、そして未来の建築とともに存在しています。それゆえに、ひとつの建築の中には過去と未来の人々の生が含まれます。建築の材料ひとつにもまた、土地の一部として育まれてきた長い時間が内包されています。そのように、過去、現在、そして未来の人々、さらにはその土地の時間とつながる建築を、私たちは今、どのようにつくることができるでしょうか

存在のかけがえのなさ

建築を含む「生きた全体」を考える時、私たちは、建築を自然から離れた人工物というよりは、生き物として捉えるところから始めてみたいと思います。人間にコントロールされるものとしてではなく、自立した存在として建築と向き合うことで、その存在を機能や性能で測ることを超え、欠点や未完成な部分も含めて愛しみ、育てていくことができます。建築を生き物と捉える視点は、建築の存在論的意味を問い直す試みです。

ひとつの建築をつくる時、その建築を含む「生きた全体」をどのように考えられるでしょうか。その問いを、多くの人々とともに、考え続けていきたいと思います。(大西麻貴+百田有希 /o+h)

変転するこの先に向けての通過点?

季刊『ディテール』240号(2024年春季号)の連載「イラストでわかるディテール名手のメソッド」

 筆者(宮沢)は最近、この2人がなんだか気になっていて、連載をやっている季刊『ディテール』240号(2024年春季号)で2人を取り上げ、『Casa BRUTUS』2024年8月号特集内の「エモ建築家図鑑」でも取り上げた。前者の見出しは「軽やかに面を浮かす」。後者の見出しは「クシャッとつぶせそうな柔らかさ」。本展でもそういう感覚が存分に味わえる(本当にどれも「軽やか」で「クシャッとつぶせそう」)。

『Casa BRUTUS』2024年8月号特集内の「エモ建築家図鑑」の一部

 「エモ建築家図鑑」にも書いたのだが、最初の頃は2人の建築の良さがよくわらかなかった。それが、「多賀町中央公民館 多賀結いの森」(2019年)↓の頃から、気になるようになってきた。

「多賀町中央公民館」の実物。多賀町は滋賀県にある(写真:宮沢洋)

 近作の2件、「熊本地震震災ミュージアム KIOKU」と「さくらんぼ畑のオフィス」(下記の記事参照)を見ると、間違いなく今後の日本建築界をリードする人たちだとわかる。

丹下健三を乗り越えた“柔らかい軸線”、o+hらの「熊本地震震災ミュージアム KIOKU」開館

o+hの新作に驚嘆、山形「さくらんぼ畑のオフィス」の“突き抜け感”

 展示されているプロジェクトで規模の大きいのは山形の「コパル」だが、それでも大きな平屋みたいな建物だ。

「コパル」の実物。これで2人は若くして日本建築学会賞作品賞を受賞した(写真:宮沢洋)

 これから中規模ビル、大規模ビルを手掛けるようになってもこの感覚は維持できるのか。あるいは別の「生きた」表現手法を見つけるのか。彼らが尊敬する伊東豊雄氏がそうであるように、彼ら自身もドラスチックに変転していくタイプなのではないかと筆者は想像している。「愛される」とか「生きた」とか、自分たちの方法論を限定しないキャッチフレーズを掲げるのは、常にそういう予感があるからなのではないか。そんな2人の通過点を記憶に刻む展覧会として見る価値大だと思う。会期は11月24日(日)まで。(宮沢洋)

展覧会情報
展覧会名(日):大西麻貴+百田有希 / o+h展:⽣きた全体――A Living Whole
展覧会名(英):onishimaki+hyakudayuki / o+h: A Living Whole
会期:2024年9月4日(水)~11月24日(日)
開館時間:11:00~18:00

休館日:月曜
入場料:無料
会場:TOTOギャラリー・間
〒107-0062 東京都港区南青山1-24-3 TOTO乃木坂ビル3F
東京メトロ千代田線乃木坂駅3番出口徒歩1分
TEL=03-3402-1010

主催:TOTOギャラリー・間企画TOTOギャラリー・間運営委員会
特別顧問=安藤忠雄、委員=貝島桃代/平田晃久/セン・クアン/田根 剛後援一般社団法人東京建築士会 一般社団法人東京都建築士事務所協会 公益社団法人日本建築家協会関東甲信越支部 般社団法人日本建築学会関東支部
公式サイト
 https://jp.toto.com/gallerma/ex240904/index.htm