「吉備高原Nスクエア」(2024年)、「岡山大学共育共創コモンズ (OUX:オークス)」(2023年)と岡山県の隈研吾CLT建築を巡り(こちらの記事)、今回は三部作の先兵となった「GREENable HIRUZEN(グリーナブルヒルゼン)」である。2021年7月に岡山県真庭市の蒜山高原に完成した。
あれ、そんな名前だったっけ?と思った人。間違ってはいない。東京じゃなかった?と思った人も間違っていない。もともとはこれ↓だった。2020年12月に東京・晴海に完成した「CLT Park Harumi」だ。
これを蒜山高原に移築したのである。
まずは、晴海にできたときの解説文を隈事務所の公式サイトから。
「CLT Park Harumi」
東京晴海の空地に、イベントとパフォーマンスのための、テンポラリーなCLTのパビリオンをデザインした。CLTの板材(160cm×350cm,厚さ21cm)と鉄骨とを編むように組み合わせて、CLTでできた木の葉が、スパイラル状に空へ向かって舞い上がるイメージの半屋外空間を作った。
光を取り入れつつ雨風を防ぐため、CLTのパネルとパネルの隙間を、超高透過なテフカ(高機能フッ素樹脂フィルム)でできた凧のような形状の膜でふさぎ、森の木漏れ日のような光の状態を創造した。
CLTは岡山県真庭市産材のヒノキを材料として、真庭市の銘建工業の工場で作られ、晴海で使われた後、再び真庭の国立公園蒜山に運ばれ、緑の中に再築される。
そして、2021年7月に移築された後の解説文。
「GREENable HIRUZEN」
2020年12月に完成した東京晴海の空地に、イベントとパフォーマンスのためにデザインしたテンポラリーなCLTのパビリオンは、2021年7月に岡山県真庭市の蒜山高原にそっくりそのまま移築して、サステナブルの価値を発信する複合環境施設「GREENable HIRUZEN」として生まれ変わった。
CLTパビリオン「風の葉」はCLTの板材(160cm×350cm,厚さ21cm)と鉄骨とを編むように組み合わせて、CLTでできた木の葉が、スパイラル状に空へ向かって舞い上がるイメージの半屋外イベントスペース。光を取り入れつつ雨風を防ぐため、CLTのパネルとパネルの隙間を、超高透過なETFE(高機能フッ素樹脂フィルム)でできた凧のような形状の膜でふさぎ、森の木漏れ日のような光の状態を創造した。
サイクリングセンターは自転車を活用した滞在・周遊型の観光拠点施設。茅を屋根の上部ではなく、屋根の下部の仕上げ材として用い、上部を金属板で葺くことによって、2-30年に一度の葺き替えをはぶき、メンテナンス不要のサステナブルな材料としての復活を試みた。
このプロジェクト、晴海につくられたとき(仮設時代)には建築メディアが大々的に取り上げていたが、蒜山に移築されてからは専門誌で見た記憶がない。建築関係者は、むしろ移築されて恒久施設となった今の状態を見て評価するべきだと思うのだが……。もし、移築された2021年夏の時点でもっと話題になっていれば、2025年大阪万博も今とは違う様相になったかもしれない……。などとゴールに向かいつつある大イベントに今さら言うべきではないかもしれないので、今後、別の何かのヒントになればと思う。
さて、「吉備高原Nスクエア」、「岡山大学共育共創コモンズ オークス」、「GREENable HIRUZEN」と、岡山県内のCLT建築を3件回った。当初のミッション完了である。気分スッキリ!のはずなのだが、吉備高原Nスクエアでこの展示↓を見て、「しまった…」とやり残し感が急上昇。
それは、この「鳥取砂丘会館タカハマカフェ」(2022年)↓を見なかったこと。そうか、蒜山まで来たなら、鳥取砂丘は車で1時間半ほど。実際には蒜山の後に吉備高原に行ったので、後の祭り。これも隈事務所公式サイトの解説文を引用しておく。
「鳥取砂丘会館タカハマカフェ」
CLTとRCのハイブリット構造で、木をふんだんに使った鳥取砂丘を望む展望台兼カフェをデザインした。温かな質感を持ち、砂丘の砂の色合いとも調和するCLTを用いて、「空へ登る階段」の創造を試みた。
鳥取は日本の民藝運動のひとつの聖地であり、今回製作した、和紙に砂丘の砂をまぶしたペンダントライトやCLTの椅子のデザインは民藝へのオマージュである。鳥取民藝の一つである、ブルーと黒の組み合わせが美しい「中井窯」に、洗面所の手洗い器を依頼した。
これから行く人は筆者と同じ後悔をしないように、周到に計画を練ってから出発してください!(宮沢洋)
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