速報!全長300mのレンガ商業「日比谷OKUROJI」、実は内部のRCアーチもすごい

Pocket

 これまで気にも留めなかったものが、新たな意味を与えられることで、その輝きを急激に増すことがある。9月10日に開業する「日比谷OKUROJI」はそんなプロジェクトだ。JR有楽町駅~新橋駅間、帝国ホテル東側に延びる高架下、約300m。100年以上の歴史を刻むレンガアーチ高架橋「内山下町橋」(明治43年完成)を再生した。

「日比谷OKUROJI」の最も新橋寄りの店舗の外から、有楽町方向を見る(写真:宮沢洋)
有楽町方向から見る。右手が帝国ホテル。高架下の手前側の一部は、JR東海と東京ステーション開発が開発した「日比谷グルメゾン」で、先行オープンしている

 「帝国ホテル東側」と説明しても、「え、どこどこ?」という感じだろう。山手線と京浜東北線が往来するレンガアーチの高架下空間は、長い間ほぼ閉鎖された状態で、誰も気に留めなかった。それを東海道線、東海道新幹線の高架下(これらは鉄筋コンクリート造)と併せて開発。回遊性を高め、約1万m2の商業施設とした。9月10日のオープンに先立って9月7日に報道内覧会が行われた。

アーチのディテールがじっくり見ると面白い!
新橋側の高架下入り口。中央部分、東海道線の下がメインの通路となっている

 事業主はジェイアール東日本都市開発。設計は東鉄工業と交建設計、施工は東鉄工業とジェイアール東海建設が担当した。

 当初は2020年6月下旬の開業を目指していたが、コロナ禍の影響で約3カ月遅れての開業となった。開業する店舗は30店舗(物販・食物販14店舗、飲食16店舗)。その他6店舗は2020年度冬頃までに開業予定。(各店の詳細は、公式ホームページを参照)

 ジェイアール東日本都市開発事業本部開発調査課の大場智子氏(右の写真)は、計画の初期段階からこのプロジェクトに関わっている。大場氏はこう話す。

 「日比谷OKUROJIには“高級すぎない、上質で大人な店”が集まっています。最も特徴的なのは、新橋寄りの“大人のナイトタイムを楽しめるゾーン”でしょう。ここには様々なバーに出店いただきました。他の飲食店や物販店も個性豊かです。テナントリーシングで、オーナーさんたちにどういう考えでお店を運営しているのかをお聞きすると、あっという間に1~2時間たっていました。それくらい、こだわりの強いお店が勢揃いしています」

 大場氏は学生時代に、JR秋葉原駅~御徒町駅間の高架下商業施設「2k540 AKI-OKA ARTISAN」を見て、「このような高架下の開発に携わりたい」と希望し、JR東日本都市開発に入社した。だから、この日比谷OKUROJIの開発担当者が社内で募集されたときには、即座に手を挙げたという。

300m続くコンクリートアーチが壮観!

 レンガアーチが連続する西側外観が印象的だが、空間的に面白いのは、内部通路となる東海道線の高架下だ。この部分はレンガではなくコンクリート(RC)だが、アーチの連続が一直線に300m続くさまは壮観。中世ヨーロッパのコリドーのようだ。

 コンクリートアーチとレンガアーチが重なって見える部分も面白い。これは狙ってつくれる空間ではない。原設計を生かしたリノベーションならでの光景だろう。

雨がレンガをつたって落ちるさまがダイナミック!


 東海道線の高架橋を生かした通路は天井高が5mほどあり、照明が雰囲気づくりに一役買っている。また、風通しもよく、歩いていて気持ちがいい。「日比谷OKUROJIは動線が内部にあり、各店舗の入り口も内部通路に面しています(一部店舗は公道側にも入り口がある)。有楽町側から新橋側まで、高架下をずっと歩いていただけるようになったので、人の流れが変わるでしょう。これは大きな意味があると思います」(大場氏)

 以前はこの高架下に「インターナショナルアーケード」があった。1964年の東京オリンピックに合わせてオープンした商店街で、訪日外国人観光客をターゲットにしていた。時代の変遷とともに空きテナントが目立つようになるが、今回の開発のための工事が行われる前までは、昭和の匂いが残る銀座の秘境(?)として、廃墟好きな人など一部には知られた場所だった。

 高架下の内部通路は公道より低い。「新橋側の入り口に立つと、高架下の長い通路を奥(有楽町側)まできれいに見通すことができます」と、大場氏がお勧め撮影スポットを教えてくれた。

アーチと開口部の生かし方を比較!


 各店のインテリアは様々だが、建築好きには、やはりレンガアーチ下の店舗の“アーチの生かし方”が気になる。そして、もう一つのポイントは、道路側(西側)の開口部の生かし方。この部分の床は公道より低い位置にあり、景色の見え方が面白い。その2点からいくつかの店舗を見てみよう。

上の写真2点は「酒肴日和アテニヨル」の店内
上の写真2点は「teppanyaki 10 steak & lobster」の店内。店舗の内装は「豪華客船」がモチーフとのこと。この店は道路側からも出入りできるようになっている
上の写真2点は「炭焼 うな富士」の店内。道路側のカウンター席で、ミニうな重を試食させていただいた。とてもおいしい!
上の写真2点は、多国籍ダイニング「SOLEIL」の店内
有楽町寄りには物販店が集まる。上の写真は「VAN SHOP」の店内。
出入り口部分のアーチの約半分を利用した店舗も。上の写真2点は「KUSKA &THE TANGO」の店内。天井ギリギリに織り機が収まって良かった! 「本当に織れます」と実演してくれた

銀座・有楽町・日比谷・新橋の結節点

 このプロジェクトは、歴史遺構の再生ということに加えて、地理的にも大きな意味を持つ。敷地周辺の地図を見ると、銀座・有楽町・日比谷・新橋の中間地点。4エリアの「結節点」ともいえそうな場所だ。

<地図入る>

 コロナ禍の厳しい幕開けとはなったが、ここに回遊性が生まれると、周辺4エリアの波及効果が大きい。先の話にはなるが、同じジェイアール東日本都市開発が事業を担う東京駅北側の高架下(いわゆる大手町ガード下)開発への期待も高まる。三菱地所が2027年完成を目指して開発を進める「東京駅前常盤橋プロジェクト」と、大手町・丸の内を結ぶ重要エリアだ。

 

 高架下には面積以上の大きな価値が眠っている。(宮沢洋、長井美暁)

関連記事:2020年は“高架下3.0”元年、アルーク阿佐ヶ谷が4月1日オープン(2020年4月1日公開)

日比谷OKUROJIの公式サイトはこちら