50代も後半になると大半の建築家に“若手”という形容をつけてしまい、校正するときに消すことが多い。でも、この2人はまだ“注目の若手ユニット”と書いて差し支えないだろう。1983年生まれの大西麻貴氏と1982年生まれの百田有希氏のユニット「o+h」の新作、「さくらんぼ畑のオフィス」のリポートである。
昨年夏に見た「熊本地震震災ミュージアム KIOKU」(o+h、産紘設計)は筆者(宮沢)の2024年一押しの建築で、当サイトでは下記の記事を熱く書いた。
o+h熱が高まり、連載をやっている季刊『ディテール』240号でも2人を取り上げ、7月上旬に発売予定の『Casa BRUTUS』8月号特集内の「エモ建築家図鑑」でも2人を取り上げている。
「さくらんぼ畑のオフィス」は、今年の話題作の1つであることは間違いないと思うが、筆者の知る限りまだ建築専門誌には載っていない。o+hの2人に取材したわけではないので技術的な情報はまだ書けない。それでも、写真を見ればその“突き抜け感”は一目瞭然だと思うので、詳報は専門誌に任せて、まずは写真で感じてほしい。
山形県東根市を拠点とする建築施工会社Otias(オティアス、旧齋藤管工業)の新オフィスだ。プロジェクトの中心になったOtiasコミュニティーデザイン事業部の板垣将一統括部長に案内してもらった。
筆者が訪れたのはオフィスを使い始めて1カ月ほどたった昨年の12月。そのときは外構がまだ工事中だった。
春になり外構工事が終わったとのことで、外回りの写真を送ってもらった。
建物はさくらんぼ畑を横切るように細長く枝分かれしている。
o+hのサイトでは、「働くことと学ぶこと、楽しむことと考えることが一体となった、地域に開かれた新しいオフィスのかたち」を目指したと説明されていた。学生が書いた文章だったら、「何を夢みたいなことを…」と思いそうだが、確かにこれはそういう夢みたいなことを目指さないと生まれない空間だ。目標が突き抜けているから、リアルに見ても突き抜けたものになるのだ。
建築主:Otias
設計:大西麻貴十百田有希/o+h(建築)、佐々木睦郎構造計画研究所(構造)、Otias(設備)
施工:Otias(建築、設備、空調)
延床面積:937.65m2
階数:地下1階・地上1階
主体構造:鉄骨造
施工期間:2021年7月~2023年9月
建築専門誌に発表されるとどんな反響を呼ぶのかが楽しみだ。(宮沢洋)