応募倍率10倍、伊東豊雄×内藤廣×妹島和世のスカイハウス座談会を見た!

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 こんな豪華な建築家の並びは珍しいのではないかと思い、イベントの触りだけ紹介する。いや、「自慢する」が正しいか……。1月21日(土)の夜に東京都庭園美術館で行われた公開座談会、「スカイハウス再読、菊竹清訓氏を語る」だ。この5人、誰だか分かるだろうか。

(写真:宮沢洋)
司会の大西麻貴氏

 見出しをみれば3人は分かったと思う。正解は、左から大西麻貴氏(Y-GSA教授、この日の司会)、内藤廣氏(菊竹清訓建築設計事務所OB)、伊東豊雄氏(同)、富永譲氏(同)、妹島和世氏(東京都庭園美術館館長)だ。富永氏は事前の予告にはなく、当日の飛び入り参加だった。

 東京都庭園美術館にて12月10日から開催中の「スカイハウス再読」展では、Y-GSAの学生たちが菊竹清訓の自邸「スカイハウス」をさまざまな視点から読み解いている。この展覧会のスピンオフとして企画された座談会だ。60人の定員に対し、10倍の申し込みがあったという。この面々なら、さもありなん。

 私(宮沢)は10倍の抽選に見事当選したと言いたいところだが、メディア枠でズルをして入れてもらった。外れた方には申し訳ない。でも、展覧会の初日に速報を書いて宣伝に貢献したので許してほしい(記事はこちら)。

展覧会の会場風景

 私が印象に残ったコメントだけ書く(録音できなかったのでメモに基づく)。まず、伊東豊雄氏。

 「清家清さんの『斎藤助教授の家』(1952年)や丹下健三さんの『丹下邸』(1953年)は、水平性を強調した繊細な住宅だった。ところが菊竹さんの『スカイハウス』(1958年)は、垂直を強調した全く別の表現だった」

 なるほど。我々世代は、ひとくくりに同じ時期の住宅と思ってしまうが、時系列で並べると確かにスカイハウスの衝撃度が想像できる。

繊細で力強いスカイハウス。それは学生たちがつくった10分の1模型からも伝わる

 続いて富永譲氏。

 「スカイハウスは物質的でいて、抽象的。菊竹さんの頭の中で、一瞬にして生まれた建築だ」

 これもなるほど。理詰めで徐々に解いたものでない感じは、設計経験のない私でもなんとなく分かる。何かがスパークしたようなきらめきを感じさせる。

 そして、内藤廣氏。

 「学生たちがつくった模型を見ると、スカイハウスはつくづく変な建築だと思う。例えば、壁柱の上にスラブが載っておらず、ずれている」

 そう、そうなんです。それ、私もスカイハウスのデザインの核心だと思ってました! 実は同じ指摘を、私も一昨年『ディテール』誌の特集でイラスト解説したのであった。こういうことだ。

(イラスト:宮沢洋、『ディテール』2021年春季号特集「イラストでわかる ディテール名手のメソッド」より)

(イラスト:宮沢洋、『ディテール』2021年春季号特集「イラストでわかる ディテール名手のメソッド」より)

 「スカイハウス再読」というお題を学生たちに与えた妹島和世氏は、なぜスカイハウスをテーマに選んだのかを語った。この話、私は全く知らなくて驚いた。

 「子どものとき、母親が読んでいた雑誌でスカイハウスの写真を見て、建築って面白そうと思った」

 「そのことはしばらく忘れていたが、大学時代にそれが菊竹さんのスカイハウスだと知り、強く惹かれるようになった」

 えーっ、“世界のセジマ”の第一歩は、スカイハウスが踏み出させたってこと? びっくり。


(イラスト:宮沢洋、『ディテール』2021年春季号特集「イラストでわかる ディテール名手のメソッド」より)

 そんなスカイハウスの深掘り展は1月29日(日)まで。まだ間に合う!(宮沢洋)

会場風景。入館無料!