速報「Ginza Sony Park」ついに全公開、一歩を踏み出した“プラットフォーム”としての建築

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 Ginza Sony Park Project(銀座ソニーパークプロジェクト)は、プロジェクトの最終形となる「Ginza Sony Park」を2025年1月26日(日)にグランドオープンします──。という文面は、内覧会の案内メールからコピペしたものだ。建設している段階から、いや更地のときからずっと続いていたソニーらしい情報発信の“最終形”が1月26日にいよいよ全公開となる。今までは前哨戦。ここからが本当の勝負だ。

いやが上にも比較される運命にある「Ginza Sony Park」と、かつての「銀座ソニービル」(写真:左は宮沢洋、右は磯達雄)
グランドオープン後初の展示は「Sony Park展」。Part1:2025年1月26日~3月30日。Part2:2025年4月20日 ~6月22日。開園時間11:00~19:00。場所Ginza Sony Park : B2/3F/4F。入場無料。事前予約制(写真:宮沢洋、以下も)

 1月23日の夕方に内覧会に行ってきた。そのリポートである。

 「銀座ソニービル」を取り壊して建てたこのビルに対する筆者の想いは、すでに昨年8月の竣工見学会のときに書いたので、まずはそれを再掲する(太字部)。

 建築関係者はもちろん、かつてここにあった「銀座ソニービル」(設計:芦原義信、1966年竣工)をご存じだろう。スキップフロアで8階まで空間がぐるぐるつながる名建築だった。後に『街並みの美学』を著す芦原義信氏の都市の開き方の実践例である。

 新ビルは、この名建築を壊して建てたものなので、ずっと“記憶の中の傑作”と比較され続けられる宿命を負っている。だが、竹橋のパレスサイドビルディング(日建設計/1964年)がそうであったように、新ビルが旧ビルにも優るものであるならばやがてそれも名建築と呼ばれるようになる。(※パレスサイドビルディングはアントニン・レーモンドの傑作、リーダーズダイジェスト東京支社/1951年を壊した跡地に建てられた)

 竣工した「Ginza Sony Park プロジェクト」の見たことのないグルグル感は、旧銀座ソニービルのスキップフロアを意識したものであることは明らか。それが旧ビルを越えたものであるかは、これから何年もかかって評価されていくのだろう。

 “逃げ”のように思われるかもしれないが、今回、グランドオープン後初の展示「Sony Park展 2025」の内容を見てその印象が強まった。これは、使われている状態を見て初めて腑に落ちる建築だ。竣工時の空の状態を見たときには正直、「なぜ銀座ソニービルの改修ではダメなのだろうか」と思っていたのだが、このような空間体験型の展示↓はあのスキップフロアの細やかなスケルトンではおそらくできない。

「Sony Park展」の大きく3つある展示の中で、これが一番びっくりした。4階の「ファイナンスは、詩だ。with 羊文学」。以下、公式サイトより。「ファイナンスは。詩だ。」をテーマとする羊文学のプログラムでは、空間の中央に大きな水盤が広がる、静謐な空間がGinza Sony Park 4階に出現。メインプログラム「Floating Words」では、羊文学の「歌詞」にフォーカスをあて、羊文学が生み出した楽曲・歌詞と、水と光が融合することで、楽曲の世界に入り込める特別な音楽体験です。羊文学の言葉が浮かんでは解けていく儚くも美しい映像演出と、このプログラムのために特別に収録された塩塚モエカの声に導かれ、来場者は楽曲の世界観 へ引き込まれていきます。羊文学の楽曲「more than words」「光るとき」が響き渡る空間で、様々な表情を見せる水面のゆらぎや、羊文学の音楽と言葉がたゆたう、文学的なプログラムをお楽しみください。また、ソニーの触覚提示技術(ハプティクス)を活用した「Active Slate」を用いて、「Floating Words」の余韻にひたりながら床面を歩くと、水辺を歩くような感覚が味わえる仕掛けも。
「ファイナンスは、詩だ。with 羊文学」
これは竣工時の空の部屋の状態
3階の「半導体は、SFだ。with YOASOBI」。以下、公式サイトより。「半導体は、SFだ。」をテーマとするYOASOBIのプログラムでは、NHK総合 『YOASOBI 18祭(フェス)』テーマソングとなった「HEART BEAT」の楽曲を用いた「HEART BEAT:Resonance」という来場者参加型の音楽体験です。この楽曲は、「心音」をテーマに、全国の18歳世代からのメッセージ、文章、パフォーマンス動画を募集。それらの想いを受け、原作として描き下ろし、さらに1000人の18歳世代と共に作り上げたエネルギー溢れるメッセージソング。1000人18歳世代が参加したイベント当日の合唱をレコーディングされた楽曲であることから着想した、来場者参加型の体験となります。楽曲のテーマでもある「心音」をモチーフに、来場者の心拍をセンシングして、来場者ひとりひとりの「心音オブジェクト」を作ることで、YOASOBIと来場者の心音オブジェクトが共鳴するスペシャルな音楽体験をお楽しみいただけます。また、YOASOBIのAyaseとikuraの心音オブジェクトが登場したり、来場者と「心音オブジェクト」の動きをセンシングして、床面の「Haptic Floor」が振動するなど、特別な仕掛けも。生成された心音オブジェクトは、スマートフォンで持ち帰ることができます。
「半導体は、SFだ。with YOASOBI」
地下2階の「音楽は、旅だ。with Vaundy」。以下、公式サイトより。「音楽は、旅だ。」をテーマとするVaundyのプログラムでは、Ginza Sony Park 地下2階にVaundyがキュレーションする「音楽の地層」空間が出現。「僕の心の曖昧な地層」をテーマに、Vaundyが約200曲の楽曲を選曲。これらの楽曲が積み重なってできた「音楽の地層」の空間で、来場者はヘッドホンを片手に、発掘するように音楽を探すことで、音楽のジャンルや年代の垣根を越えて積層された、音楽の地層空間を旅するような音楽体験を楽しむことができます。

 ソニー企業代表取締役社長兼チーフブランディングオフィサーGinza Sony Park Project主宰の永野大輔氏は、囲み取材でこんなことを話した。「かつての銀座ソニービルは“変われないソニー”の象徴と言われたこともあった。多様化する事業に対応できなかった。Ginza Sony Parkは、これからも変わり続ける事業に対応するプラットフォームを目指した」。

 “変われない”ものの象徴という言葉に、ちょっとグサッときた。

これまでのソニーの“革新”になぞらえて語る永野社長

 永野社長が言うように、この建築は“プラットフォーム”なのだ。変わり続けるものを受け入れる“器”を、今の瞬間だけで切りとってどうこう言うのは難しい。ならば、これからどんな歩みを続けるのか長い目で見ていこう。

 もちろん、それは筆者の感想に過ぎない。WEB情報で知った気にならずに、現地でその空間を、できれば予約して展示も体験してほしい。展示の詳細はこちら

 建築的な見所や設計体制については前回(昨年8月)の記事↓を。(宮沢洋)

速報!ついに竣工した「Ginza Sony Park プロジェクト」が関係者に公開、あのスキップフロアの名作を越えられるか(2024年8月23日公開)

設計を担当した「Ginza Sony Park Project」の面々。前列左が発注者側のリーダー、ソニー企業代表取締役社長兼チーフブランディングオフィサーGinza Sony Park Project主宰の永野大輔氏。その右が最初期から参加しているアーキタイプの荒木信雄氏。後列左から石本建築事務所の福地拓磨執行役員と舩越克己次長。後列右端が実施設計段階から参加した竹中工務店東京本店設計部設計第2部門設計3(アドバンスデザイン)の花岡郁哉グループ長。ソニー企業の永野氏が「桃太郎」のように仲間を増やしていったという(2024年8月23日の記事より/肩書は当時)
デジタルサイネージ全盛時代に、あえて垂れ幕。これも、時代に左右されないプラットフォームということだろう