「ウィズ原宿は本日」「新風館は6月11日」、開業待ち商業施設の現況まとめ!

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 「必見ミュージアム総まとめ」前編後編では、コロナ禍で開幕が延期されていた建築系の展覧会を整理した。今回は、開業が延期されていた商業施設の現状を調べてみる。

(写真:宮沢洋、以下も)

 まずは、JR原宿駅前に、竹中工務店と伊東豊雄氏の設計で完成した「ウィズ原宿(WITH HARAJUKU)」。当初は4月25日の開業予定だったが、いよいよ今日、6月5日(金)に開業する。地下3階・地上10階、約2万6600㎡。地下2階~地上3階と8階はショップおよびレストラン、3階はイベントホール「WITH HARAJUKU HALL」とシェアスペース「LIFORK原宿」、4~7階と9~10階は賃貸レジデンス(53戸)。事業主はNTT都市開発、設計は竹中工務店+伊東豊雄建築設計事務所、施工は竹中工務店だ。

 賃貸住戸が入る上層部分は、外部に木格子が大胆に露出している。設計者の竹中工務店・伊東豊雄コンビといえば、思い出されるのが、国立競技場のやり直しコンペ。落選した「B案」(竹中工務店・清水建設・大林組の3社JVと建築家の伊東豊雄氏・日本設計のチーム)は、耐火木材の列柱を大胆に露出させたものだった。

 メディアの話題になるであろうこの建築で、この木格子。国立競技場からは2kmほどの距離…。「小さなリベンジ?」と思ってしまうのは考え過ぎだろうか。

2度目の転生は隈研吾流「木質リノベ」──新風館(京都)

 同じNTT都市開発が京都市中京区で進めていた「新風館」は、当初予定の4月16日から2カ月遅れとなる6月11日(木)に開業する。

 こちらは国立競技場のやり直しコンペで「A案(当選案)」の中心になった隈研吾氏が建築デザイン監修を務める。地下2階・地上7階建て、延床面積約2万5537㎡。ホテル・店舗・映画館が入る。事業主はNTT都市開発、設計はNTTファシリティーズ、建築デザイン監修は隈研吾建築都市設計事務所、施工は大林組。ホテルはアジア初となる「エースホテル京都」で、客室数213室。

 「新風館」は、歴史的建築物である旧京都中央電話局(設計:吉田鉄郎、1926年竣工)の一部を保存しつつ増築した複合施設。リチャード・ロジャース氏が設計に参画した旧・新風館(2001年)を含めると、2度目の転生となる。また、隈氏にとって、吉田鉄郎のリノベーションは「旧東京中央郵便局→KITTE」に次いで2度目だ。

 そして、こちらも大胆に木を使っている。プレスリリースに木の詳細が書かれていなくて分からないのだが、この木組みは一体どういう扱いで防耐火をクリアしているのだろうか? 開業したら詳しい説明を聞いてみたい。

話題のCLT大屋根は6月8日オープン──「ROOFLAG」

 大胆に木を使う、ということでいえば「ROOFLAG(ルーフラッグ)賃貸住宅未来展示場」。大東建託が東京・豊洲に建設した。当初5月オープン予定だったが、6月8日(月)オープンとなった。

新建築2020年4月号の表紙

 設計者はMOUNT FUJI ARCHITECTS STUDIO(マウントフジアーキテクツスタジオ) の原田真宏氏と原田麻魚氏。「道の駅ましこ」で今年の日本建築学会賞作品賞を取った2人だ。そちらはスギの大断面集成材だったが、こちらは大量のCLT(直交集成板)を使い、三角形の大屋根を架け渡している。『新建築』2020年4月号の表紙を飾っていたので、気になっていた方も多いだろう。この施設、施工段階では見たのだが、完成してからはまだ見ておらず、早く見たい…。

 ただ、オープンはするが、完全予約制。「直接『ROOFLAG(ルーフラッグ)賃貸住宅未来展示場』へお越しいただいても見学はお受けできません」と念押しが書かれているのでご注意を。「見学ご希望の方は、お近くの大東建託支店まで」。

ヘルツォーク&ド・ムーロンがリノベ!──マロニエゲート銀座「ユニクロ トウキョウ」

 新築ではなくリノベーションだが、ユニクロが東京・銀座の「マロニエゲート銀座」1~4階に開業する「ユニクロ トウキョウ」も話題だ。内装・外装の設計はなんと、ヘルツォーク&ド・ムーロン(Herzog & de Meuron)! スイスの建築ユニットで、ロンドンのテート・モダンや東京・表参道のプラダ青山店などが有名。プリツカー賞も受賞している。当初は5月15日オープン予定だったが、1カ月遅れの6月19日(金)オープンが決まった。

 ヘルツォーク&ド・ムーロンの「ユニクロ トウキョウ」と、伊東豊雄+大成建設の設計による「MIKIMOTO Ginza 2」(2005年竣工、下の写真の右側)が交差点を挟んで向き合うことになる。

 トータルクリエイティブディレクターは佐藤可士和氏が務めた。ちなみに、冒頭に取り上げたウィズ原宿の1階にもユニクロが入っており、これも佐藤氏のディレクションだ。

オープン未定の注目施設、「羽田エアポートガーデン」「ウォーターズ竹芝」「MIYASHITA PARK」「新宿住友ビル三角広場」

 ここまでオープン日が決まった施設を取り上げたが、オープン日がまだはっきりしないものも多い。それらをざっと見てみよう。

 「羽田エアポートガーデン」は当初、4月21日オープン予定だったが、「開業日は2020年夏頃を予定」というざっくりした延期見込みだ。この施設、羽田空港国際線ターミナルに直結しており、地上12階建てと高さはそれほどでもないが、延べ面積約9万㎡と水平方向にとてつもなく大きい。ホテルや商業施設、イベントホールなどから成る。設計は日建設計。

 商業施設「アトレ竹芝」を中心とする複合開発「ウォーターズ竹芝」は、当初4月17日予定だったアトレ竹芝のオープンが延びており、開業日が発表されていない。設計はジェイアール東日本建築設計事務所。高層棟に入るホテル「メズム東京、オートグラフ コレクション」は、4月27日にオープンしている。

 渋谷駅から徒歩数分、宮下公園を建物上に持ち上げた「MIYASHITA PARK」は、当初6月18日のオープン予定が延期に。プロジェクトアーキテクトは日建設計、設計・施工は竹中工務店。公園が商業施設の屋上にあるのも大胆だが、その公園が公道をまたいでいるのもびっくり。開業したら大きな話題になるだろう。

 

 「新宿住友ビル三角広場」は、当初6月だったオープン予定の延期が発表され、開業日はまだ明らかになっていない。住友“三角”ビルの足元に、スカートを広げたようなガラス屋根のアトリウムを増築するプロジェクトだ。設計は日建設計と大成建設。

 開業はしていないものの、建物はほぼできており、現地に行けば内部の雰囲気も分かる。ここでは1000人~2000人規模の大イベントを催すことができるという。ウェブサイトには、活気あふれるお祭りのイメージ画像が並ぶ。こういう社会状況となり、どんなイベントで幕開けとするか、関係者が知恵を絞っているところかもしれない。そして、いつか本当に2000人のお祭りが行われる日を心待ちにしたい。(宮沢洋)