設計本部創設100周年! 街に飛び出した「大成建設設計作品展」が新宿駅で4月25日(金)まで開催中

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 大成建設設計本部が主催する「大成建設設計作品展2025 – Luminous -」が新宿駅西口広場イベントコーナーで4月22日(火)~25日(金)まで開催されている。これは大成建設設計本部の「創設100周年」を記念するイベントでもある。

(写真:宮沢洋)

 筆者(宮沢)はいくつかの「○○ウオッチャー」を自称していて、「隈研吾ウオッチャー」だったり、「日建設計ウオッチャー」だったりするのだが、「大成建設設計本部ウオッチャー」でもある。前職の日経アーキテクチュア編集長時代に大成建設設計本部から声をかけられて講演をしに行って以降(おそらく2019年)、なんとなく気になるようになった。独立してからもいろいろ新作を見学させてもらい、現在はこのBUNGA NETで「TAISEI DESIGN“伝説と革新”」という不定期連載を書かせてもらっている。

 だから、大成建設設計本部が今年2025年、「創設100周年」だということも知っていた。

 1873年(明治6年)に大倉喜八郎が「大倉組商会」を創立したのが大成建設の起源。1883年には誰もが知る「鹿鳴館」を施工した。1887年には日本土木会社を設立(初の建設業法人)。1890年、これも有名な琵琶湖疏水閘門トンネルを完成させ、1893年には大倉土木組を設立する(1924年、大倉土木に改称)。

 大倉土木というと土木工事だけの会社のようだが、初期に鹿鳴館を施工していることでもわかるように建築部門もあって、その中に「設計室」が出来たのが100年前の1925年なのだ。

左の日本地図は100年間の設計施工案件をプロットしたもの。海岸の輪郭がないのに日本地図とわかってしまうのが100年の歴史

 で、その100周年の節目となる展示会を新宿駅で覗いてきた。

 近作14件が展示されており、アベレージとして質が高い。「大成の設計ってどんなだっけ?」くらいに思っている人はきっと驚く。新宿に行く用事がある人は、ちらっとでも覗いてみてほしい。「大成建設設計本部ウオッチャー」としては、設計力の高まりをかなり感じる(これはお愛想ではない)。

 以下は大成建設の公式サイトからの引用だ(太字部)。

毎年恒例! 若手社員が企画 『大成建設設計作品展2025 – Luminous -』を開催します
設計部門100周年を記念し、開催規模 “拡大”

当作品展は、入社5年目までの若手社員が企画・展示デザインを担い、昨年度竣工した設計施工作品のうち優秀作品に選ばれた14作品を紹介する展示会です。

案内してくれた若手の3人。左から建築設計4部・河部純大、建築設計2部・岩﨑遊野、建築設計6部・外山健汰の各氏。この取り組み自体には入社5年以内の設計本部社員は全員参加だそう

今年は、設計部門設立100周年を記念し、新宿駅西口広場イベントコーナーで、大々的に開催!
より当社の設計作品・デザイン活動を知っていただけるよう、過去の設計施工作品も展示します。

今回のテーマは「One’s」
多様性が謳われる現在「個」を尊重する時代の流れは、建築業界にとっても未来を考える貴重な機会となる。
AIの普及やDX化と共に歩く今、ひとにしか出来ないことは何か。環境や社会と建築の関係、建築の意義、本質的なものとは何か。
そんな時代・社会に建築が応えるためには、設計者一人一人が自らの可能性を最大限に発揮し、共創を推し進められるようなデザインをする必要があるのではないか。

大成建設設計本部は2025年に100周年の節目を迎える。
デザインフィロソフィが刷新された今、2025年度を自由闊達で独自的な「個」の集合体としてのTAISEI DESIGNをスタートさせる年としたい。
これからの未来を見据え、新たな創造と革新を図る多様な「One’s」を考えることで、従来の枠組みから超えて建築の新たな可能性を示す機会とする。

展示会場は和紙によって構成されています。
設計行為の過程で生まれる、紙くずや廃棄サンプルから作られた和紙を繋ぎ合わせ、照明で照らすことで、通行人を引き込みやすい光の塊(Luminous)を構成し、新宿駅西口の駅前広場を彩ります。

■『大成建設設計本部作品展2025 – Luminous -』概要
4月22日(火) ~ 25日(金)
08:00~20:00 ※最終日25日(金)は、15:00まで
入場料 無料
会場 新宿駅西口広場イベントコーナー A1

 つまり、「前年度に竣工した設計施工作品十数点を紹介する展示会」は毎年行われているわけだが、人通りがめちゃめちゃ多い新宿駅西口広場イベントコーナーでやるのは今回が初めてなのだ。昨年までは大成建設本社がある新宿センタービル1階ロビーで行っていた。

 筆者は以前、この新宿駅西口広場イベントコーナーで行われた別のイベントで、当日先着順のレクチャーをしたことがあって、その通行人の多さとその人たちを引き込む難しさを知っていた。当日先着順といってもファンが待っているわけではないから、無名のストリートミュージシャンみたいな感じになるのである。(メンタルが鍛えられる良い体験だった)

会場は上図のA1部分(大成建設のサイトより)

 だから、ここで100周年記念の展示をすると聞いたとき、「社会に開くという意味であそこに勝る場所はない」と大いに共感し、「どういう会場構成にするんだろう」と期待でワクワクした。

 そんな期待値が高すぎたのか、正直、見せ方としてはかなりおとなしく見えた。会場内では落ち着いて展示を見ることができる。が、せっかくの人の流れからは無縁に感じた。たぶん、よほど建築あるいは大成建設に興味がある人でないと中に入ろうと思わない。自称「建築展ウオッチャー」でもあるので、辛口で申し訳ない。

連載でもたびたびお世話になっている平井副本部長

 だがしかし、こういう場所でやろうという決断はとても素晴らしいと思う。昨年までの新宿センタービル1階ロビーだって社会に開いているとは思うが、人の流れの桁が違う。ぜひこの方向性は続けて、社内と社会の意識を変えてほしい。監督役の1人である平井浩之・設計本部副本部長(建築)プリンシパルアーキテクトに来年以降について聞くと、「新宿駅でやるかはわからないが、外に飛び出して発信していくという方向は変えない」とのこと。よかった。来年以降、どう進化するのかが楽しみだ。

 ちなみに筆者は、前述の連載「TAISEI DESIGN“伝説と革新”」の冒頭で必ずこう書いている。

 「一般の人が“名建築”として思い浮かべる建物は、いわゆるアトリエ系建築家が設計したものとは限らない。大組織に属する設計者がチームで実現した建築にも、世に知ってほしい物語がある。」

 そんな場としてこの展示会が定着することを願っている。(宮沢洋)

「TAISEI DESIGN“伝説と革新”」のまとめページはこちら↓。