「東京海上ビル」見学会で知った“王冠”の意味、「勝手にリノベ対決」はNOIZ案に軍配

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 4月24日、「東京海上ビルディングを愛し、その存続を願う会」が主催する講演会と見学会が開催された。ここでいう東京海上ビルディングは、前川國男の設計で1974年に完成した現・東京海上日動ビル本館のことだ。同社はレンゾ・ピアノ氏らの設計で、ビルを建て替えることを発表している。

エントランスホールの柱をめでる前川建築設計事務所の橋本功所長。柱のはつり仕上げは、彫刻家の流政之が指示したものという(写真:宮沢洋、以下も)

 橋本功氏(前川建築設計事務所所長)と奥村珪一氏(東京海上ビルディング初期設計担当)を講師とする講演会の後、現地で1時間ほど見学会が行われた。小雨がぱらつく中、50人ほどが参加した。

 私(宮沢)は所用があって講演会は聞くことができず、見学会から参加させてもらった。事前の情報では「外から見るだけ」という話だったが、東京海上日動が許可してくれたようで、エントランスホールの中も見学できた。平常時は関係者以外立ち入り禁止の場所なので、初めて入った。来てよかった…。前川事務所の橋本所長も、中に入るのは数十年ぶりと話していた。

 知らなかった話をいろいろと聞いたのだが、一番驚いたのは、外観の最上部に見える“王冠”の意味だ。柱の上にとげとげに突き出した部分である。

最上部の“王冠”。2021年4月撮影(以下も)

 橋本所長によると、このビルは景観問題で高さを下げることになった後も、構造計算をやり直していないのだという。つまり、構造体の鉄骨量を減らすことをせず、当初設計の構造のまま、高さだけを削った。最上部の“王冠”は、いつか上部に増築しやすくするための構造的手掛かりであり、「増築するぞ」という前川の意思の表れだというのだ。

 そうだったのか!!

“勝手にリノベ対決”は、NOIZの勝ち!

 それを聞いて、以前に書いた“勝手にリノベ対決”は、NOIZの勝ちだなと思った。

日曜コラム洋々亭36:NOIZによる東京海上リノベ提案に刺激を受け、勝手にリノベ対決(追記:建て替えはレンゾ・ピアノ)/2021年10月3日公開

左がNOIZによる提案(©noiz)。右が宮沢案(©宮沢洋)
NOIZによる提案(©noiz)

 私はNOIZの提案を見て、「垂直方向にだけ足すのは、下部の構造補強が大変すぎるのでは?」と思って、新耐震後にできた新館にウエートをかける案を考えたのだが、そもそも垂直方向に足せる余裕があったのだ。

宮沢案。デザイン的には悪くないと思うが、補強が全体にわたってしまい、かえって大変かも(©宮沢洋)

 NOIZはそれをちゃんと分かっていて提案したのだろう。さすが。15分くらいでちょろっと考えた私の案とはレベルが違う。

 もちろん、当時と法規が違うので既存不適格を解消するのは大変だと思うが、そのへんの超高層ビルに積み増すよりは相当楽なはずだ。レンゾ・ピアノ、NOIZ案を参考にしてくれないかなあ。下の方だけでも、こんな感じで残してほしい。

NOIZによる提案(©noiz)
NOIZによる提案(©noiz)

 講演会を含めたリポートは後日、助っ人大学院生、大塚光太郎君(東京大学生産技術研究所)が改めて書いてくれる予定。(宮沢洋)