宮城県富谷市に今春完成した公共施設「ユートミヤ」の来場者が6月20日(土)に10万人を超えた。5月1日のオープンから約50日での大台到達。富谷市という東京の人間にはピンとこない場所の公共施設に1日平均2000人が足を運んでいると聞くと、ちょっと驚くのではないか。噂を聞いて見に行った筆者は、見たことのない空間性にさらに驚いた。

富谷市民図書館等複合施設「ユートミヤ」は、2022年に公募型プロポーザルで選ばれたナスカ+はりゅうウッドスタジオ設計共同体が設計した。ナスカでは八木佐千子氏が中心となり、はりゅうウッドスタジオは滑田崇志氏と斉藤光氏が中心になった。ナスカは東京、はりゅうウッドスタジオは福島県南会津町を拠点とする“遠距離JV”だ。両事務所は過去にも協働したことがあるが、設計競技はこれが3度目で、初の当選となった。構造設計は江尻建築構造設計事務所、設備設計はZO設計室。施工は仙台市の阿部和工務店が担当した。
仙台市の北側、富谷市成田地区の比較的新しい住宅地の中心に立つ。鉄筋コンクリート造・一部鉄骨造、地上2階。


施設は、「市民図書館」と「スイーツステーション」と「とみのわパーク」(屋内児童遊戯施設)の大きく3つの機能から成る。ざっくり言うと、この3つが川の字に並んでいて、空間としてはほぼワンルームだ。


西側にある既存の成田市民センター(旧・成田公民館)とブリッジでつながっている。「既存の市民センターを含めた4つの機能を、“複合”ではなく“融合”させることを目指した」とはりゅうウッドスタジオの2人は言う。
その融合ぶりは、写真を見ていただこう。











「(1+1)÷2」が「1以上」のコラボレーション
本サイトでも何度か書いているように、公共の「複合コミュニティー施設」に魅力的なものが増えている。すぐに頭に浮かぶところでは、2025年の「みんなの建築大賞」で「大賞」と「推薦委員会ベスト1」をダブル受賞した「おにクル」(設計:伊東豊雄+竹中工務店、開館時の記事はこちら)。旧上野市庁舎を再生した「SAKAKURA BASE」は、民間のホテルと公共の図書館が緩く建物を共有している(改修設計:マル・アーキテクチャ、図書館開館時の記事はこちら)。
異なる機能の境界をあいまいにしていること自体はもはや珍しくなくなってきた。だが、この施設は空間が独特だ。巨大なワンルームの中に“小さな居場所”が併存しているのだ。大空間特有の「威圧感」や「寒々しさ」がない。
これは、不整形な平面と、「樽(たる)」と、「ギャザー」の複合効果だと思われる。

「樽」というのは、図書館の中心にあるブックスロープのこと。はりゅうウッドスタジオが以前から取り組んできたスギの「縦ログ」(木材を地域の工場で一定の大きさに切り揃え、結束してパネルをつくる構法)を仕上げに用いた。「まるで大きな樽のようだ」ということで設計チームでは「樽」と呼んでいた。この樽の存在感が「威圧感」や「寒々しさ」を消している。

もう1つは設計チームが「ギャザー」と呼んでいた折板状の天井の仕上げ。写真ではうるさく見えるかもしれないが、体感としては、このギザギザが樹木に覆われているような居心地の良さを与えている。


そういう居心地の良さを感じるのは筆者だけではないようで、スロープの下のこんなところ↓まで使いこなしている利用者がいた。

記事の見出しに「化学変化」と書いたのは、この空間が「(ナスカ+はりゅう)÷2」という式から想像されるものとは別の次元に突き抜けているように見える、という筆者の感想だ。
例えば、ナスカの図書館建築の代表例はこれら↓。


木の存在感で勝負するはりゅうウッドスタジオの近作はこんな感じ↓。


もちろんそれぞれのテイストは残っているが、足して割った感じではない。
建築の歴史を振り返ってみても、「(1+1)÷2」が「1以上」になっているコラボは案外少ないように思う。ここは1以上になっていると筆者は思うのだが、ほめ過ぎだろうか。ぜひ実物を見てほしい。(宮沢洋)




■ユートミヤ(富谷市民図書館等複合施設)
住所:宮城県富谷市成田1-1-1
公式サイト:https://u-tomiya.jp/
カフェInstagram:https://www.instagram.com/tomiya_sweets_st/
開館時間:図書館 AM9:00~PM21:00
とみのわひろば AM9:00~18:00
スイーツステーション AM9:00~18:00
休館日:年末年始12月29日~1月3日
アクセス:車利用 富谷インターから約12分、泉インターから約10分
公共交通機関 仙台市地下鉄泉中央駅バスプール5番乗り場から宮城交通バス新富谷ガーデンシティ線乗車約20分、「ユートミヤ入口」バス停下車
※はりゅうウッドスタジオの2人へのインタビュー記事(2025年、ふくしま建築探訪)↓もぜひご覧ください!
「標高700m の“ここでしかできない”建築を考えたい」滑田崇志氏&斉藤光氏(はりゅうウッドスタジオ)

