「横浜駅変遷模型展」で初の巨大吊り模型、故・池田修氏の思いも背負って実現

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 10月14日は「鉄道開設150周年記念の日」。鉄道ファンが喜びそうなイベントがあちこちで行われているが、建築好きも楽しめるのが鉄道開業150年記念「横浜駅変遷模型展」だ。横浜ランドマークタワー足元のランドマークプラザで10月14日(金)~16日(日)の3日間開催した後、場所を横浜駅構内待合広場に移して10月21日(金)~23日(日)の3日間開催される。

(写真:宮沢洋)

 日本最初の駅である横浜駅の150年の駅構内の変遷を模型で展示し、横浜の150年を考察する。都心の駅の研究で知られる昭和女子大学環境デザイン学科・田村圭介教授が中心となって実現した展示だ。以下はプレスリリースより(太字部)。

鉄道開業当初の初代横浜駅から現在の横浜駅に至るまで、横浜駅の移り変わりを表現した駅模型8点を展示します。展示模型は6つの年代で構成され、各年代における横浜駅を表した 1/200 スケールの模型6点に加え、鉄道開業当初の横浜駅と現在の横浜駅を表した模型2点は、迫力ある 1/50スケールで展示します。

《展示内容》
■1/200スケール模型
①1872年頃(鉄道開業当初の横浜駅)②1922 年頃 ③1932 年頃④1962年頃 ⑤1982 年頃 ⑥2022 年(現在の横浜駅)

200分の1模型が6つ並ぶ。手前が1872年頃(鉄道開業当初)

■1/50スケール模型
①1872年頃(鉄道開業当初の横浜駅)②2022年(現在の横浜駅)


 目玉は、全長10mほどある2022年の横浜駅模型。高さ30mの吹き抜けの天窓付近から吊るした。

 田村教授(上の写真)はこれまでも、昭和女子大学の学生たちとたくさんの駅構内模型をつくってきたが、横浜駅は初めて。「模型をつくる前に、古い資料を集めて3次元のデータをつくるのが大変」と田村教授は言う。

 会場の挨拶文にも書かれているが、今回、この展示が実現できたのは、2022年3月に急逝したBankArt代表の故・池田修氏との共同作業があったからだ。もともとは旧第一銀行横浜支店(当時のBankArt Temporary)を会場とし、横浜駅の変遷を100分の1の大きな模型で展示しようと考えてデータづくりを進めていた。だが、コロナ禍のため中止となった。

 今回、「鉄道150周年」に合わせて展示しようという話が持ち上がり、田村氏はリベンジに燃えた。けれども、展示する吹き抜け空間が大きく、100分の1模型でもインパクトに欠ける。そこで、初代駅舎と現在の駅舎だけ50分の1で骨格をつくり、現在の駅舎については吹き抜けの天窓から吊るすことにした。

手前が50分の1の初代駅舎。奥には、吊られた50分の1現駅舎が見える

 巨大な吊り展示は田村教授にとっても初の挑戦。安全を最優先に考え、模型の構造や接合の方法などを検討した。10mある巨大な模型だが、軽量化をはかり、重さは約37kg。構造的に負担がかかる接合部はすべてビス留めした。

 写真はランドマークプラザ1階の展示風景で、吹き抜けを囲むさまざまな高さ・方向から模型を見ることができる。何も知らずに見た人は「ナスカの地上絵の立体版」と思うのではないか。  

 模型の制作は、昭和女子大学の製図室で行った。

(写真:田村圭介)

 10月21日(金)~23日(日)の横浜駅の展示では、吊った状態ではなく、展示台に置いた状態となる。上の制作風景に近い展示になると思われる。 

 置いても面白いとは思うが、「吊り」の体験は貴重。これは、駅の模型だけでなく、何の建築であっても面白い。今後、建築展を開く人のヒントになる。その見え方を体感したい人はランドマークプラザに急げ! (宮沢洋)

開館時間などの詳細はこちら