再月刊化した『建築技術』にエール! 大阪・関西万博から1年後の答え合わせに大興奮─日曜コラム洋々亭84

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 2024年12月に月刊誌の休刊を発表し、季刊(年4回)となっていた『建築技術』が2026年8月号から再び月刊となり、さらにこの号の特集「大阪・関西万博にみるリユースへの構造設計者の提案」が面白いと話題を呼んでいる。遅ればせながら、同号を買って読んでみた。

 株式会社建築技術(代表取締役:中島貴春)は今年5月、昨年2月から季刊発行していた「建築技術」を、2026年6・7月合併号(2026年5月15日発売分)より月刊誌として再開すると発表。同号は合併号なので、8月号(7月29日発売)から実質的に月間化となった。同社のサイトを見ても、PRTIMESのリリースを見ても、なぜ“再月刊化”が可能になったのかの理由は書かれていない。知り合いがおらず内部事情は全く知らないのだが、月刊→季刊→廃刊というルートも想像されたので、今回の復活ののろしは同じ世界の人間としてとてもうれしい。(月刊→季刊に移行する際に600円値上がりして1冊2800円となったが、今回は1冊2860円とほぼ据え置き)

 BUNGANETを立ち上げて間もない2020年4月(コロナ禍)に、筆者は「建築系雑誌読み比べ!」というシリーズ記事を書いた。建築系雑誌12冊を3冊ずつグルーピングし、(1)ほかの雑誌にない独自性、(2)なるほど!と感心した伝え方、(3)編集部へのエールの3項目でレビューしていく企画だ。

 自画自賛になるが、このときの分析(感想)が的を射ていて、今回の2026年8月号の感想にもそのまま当てはまるので、いくつか拾ってみる(太字部)。

・技術情報の実務性の高さでは圧倒的なメディア。

・読んだことのない人は、すごく古くさい、お役所的雑誌に思えるかもしれない。だが、同誌が取り上げるテーマは、常に建築技術分野の最先端だ。「建築技術者の関心の最先端」と言った方がいいかもしれない。毎号の特集テーマには、編集者としていつも「そうかそこか!」と感心する。

・この雑誌は、見出しが具体的で読みやすい。

・監修者がいるからと言って、編集者が監修者に丸投げしているわけではない。あくまで推測だが、最初から丸投げしたら、こんな見出しにはならない。この雑誌は見出しが具体的なので、内容がかなり専門的でもそれなりに分かる。分かった気になるというべきか。

・誌面はほぼモノクロだが、図がシンプルで分かりやすく、モノクロでもポイントが伝わる。これは正統的な編集メソッドが機能している証拠だ。

スローメディアの自覚が生む面白さ

 今回、2026年8月号の大阪・関西万博特集を読んで、もう1つ同誌の良さを加えたくなった。それは、「スローメディアを自覚し、答え合わせ的な面白さを読み手に与えていること」。

 大阪・関西万博については、筆者の古巣である『日経アーキテクチュア』が2025年11月13日号で「大阪・関西万博反省会」という特集を、100年の歴史を誇る『新建築』が2025年12月号で1冊丸ごと特集を掲載している。だがどちらも、筆者が知りたかった各施設の構造・工法の工夫や閉幕後への配慮については、知りたいことの1割くらいしかわからなかった。それが、今回の『建築技術』の大阪・関西万博特集を読んで4割くらいわかった。

 特に、筆者がプレスデイに見て一番心を打たれた「休憩所4」↓のつくり方がわかって、1年越しの大興奮だった。(どうつくったのかは同誌を見てほしい)
 

休憩所4(写真:宮沢洋、以下も)

 この特集は、構造家で東京大学教授の腰原幹雄氏が監修者を務めている。腰原氏が巻頭の総論を書いており、その中に1年たったからこそ書ける“現実”をちらほらと織り交ぜていて興味深い。「そうなのか!」と筆者が特に感心した終盤部分を引用させてもらう(太字部)。

 「大屋根リングの解体工事が進んでいる。全長2kmのうち200mを保存しその他を解体している。設計時には、 楔等を外せば貫が柱から抜き取り部材を再利用できる仕組みになっている。しかし、その解体工事は、従来の破壊型の解体に比べて手間も時間もかかる。しかも、取り出された部材も、新材で新規に製造した方が安価に入手できる。万博で使用した部材という付加価値がなけれは、わざわざ高価な材を利用してはくれないだろう。

 つまり、リュースを考えた構造システムし社会がその必要性をどれくらい認識してくれるかにかかっている。

 それでも解体再利用まで考えた設計を与条件とした 構造設計は、新たな構造システムを考える貴重な機会になったであろう。この経験を共有するとともに、今後の設計でも目指すべき建築像を提案しそれを実現するルーティンワークでの構造設計でなく小さな挑戦の積み重ねであってほしい。」(腰原幹雄「構造設計の可能性を探る」から終盤部分を引用)

 筆者が開幕前からずっと気になっていた「短期間で解体する仮設建築を木造でつくることは本当にエコロジーなのか」という問いに通じる指摘。全体を読んでもその答えが出ているわけではないが、今後、仮設建築を設計しそうなすべての人に読んでいただき、ヒントにしてほしい特集だ。

 おそらくこの号は売れたと思う。なので、1年後に「大阪・関西万博特集2」を企画して、知りたかった残り6割にも答えてほしい。横浜で開催される「国際園芸博覧会」(2027年3月~9月)に世の中が沸き返る中で、冷静に大阪・関西万博の現実を振り返るのは、“建築技術らしい”、“建築技術にしかできない”ことなのではないかと筆者は思う。

 なお、同誌は毎月29日に発売なので、この記事がアップされる日には次の9月号も出ていると思われる。9月号(特集:「中大規模木造建物の施工管理の注意ポイント」)も面白いに違いないので、2冊まとめて買い求めてはいかがだろうか。(宮沢洋)