京都の現代建築の話題を3つ書きたい。1つ目は筆者の知人であるこの人が仕掛ける「京都建築センター」について。

誰かはわからなくても、背景の建築が安藤忠雄氏の代表作の1つ、「TIME’S」であることは建築好きならわかるだろう。
1期が1984年、2期1991年に竣工した。コロナ禍の頃、5年間ほど閉鎖されていた。最近になって、ちらほらとテナントが戻ってきた。
道路に面した2階の1区画を借りて、新たな取り組みを始めようとしているのが以倉敬之氏だ。
ツウ好みの建築ツアーで知られる存在となった「まいまい京都」や「まいまい東京」の代表。筆者とは、2024年から始まった東京建築祭で実行委員を一緒に務めている。「建築を一般の人たちに開くこと(建築文化の民主化)を目指して活動している非建築出身の建築好き」という点が筆者と共通している。

その以倉氏が2026年8月に、建築ツアーの案内機能に加え、ギャラリーやライブラリー機能を併せ持つ「京都建築センター」を開設しようとししている。


なんでも、今年の初めにシカゴの建築センターを訪れて、「京都にもこういうものが必要だ」と天啓を受けたそう。以倉氏が代表を務めるまいまいの活動はWEB予約なので、決まった受付の場所はない。ツアーも毎日必ずあるというわけではない。今後さらに建築ツアーを一般化していくためには、「ここに来ればいつでも建築ツアーの情報が得られて参加できる」という場が必要、と考えた。
シカゴの建築センターは、ミースが設計したビルの中にあり、その場所自体が得難い空間体験。京都で「都市の中心にある名建築といえばTIME’S!」と即断して所有者と交渉したそうだ。すごい行動力…。
内装設計は京都のMIDW(服部大祐+服部さおり)に依頼した。筆者が大阪・関西万博の内覧会でべた褒めした「休憩所4」(こちらの記事)をNiimori Jamisonと共同して設計した人たちだ。


今はまだガランとしており、内装工事はこれから。今(取材は6月24日)がこの状態で8月からスタートを切れるのかやや心配ではあるが(2026年8月プレオープン、9月本オープン予定)、「応援したい」と思った人は以下のクラウドファンディングにアクセスしてほしい。
https://motion-gallery.net/projects/archicenter
完成したら、改めて報告したい。
「京都信用金庫北山支店」に菊竹清訓コーナー、「国立京都国際会館」ではレトルトカレー
2つ目、3つ目は軽く紹介する。
まずは、「京都信用金庫北山支店」。菊竹清訓の設計で1974年に竣工した店舗が、既存のデザインを生かす形で2023年2月にリニューアルオープンした。銀行は平日の日中みの営業なので、行けるタイミングがなかなかなかった。ようやく見ることができた。

以下は同行のプレスリリースはより。
北山支店は、1971年から1993年にかけて菊竹清訓氏により設計された当金庫77店舗のうち、現存する41店舗の一つ。アンブレラ・ストラクチャーと呼ばれる建築様式は、傘の下に多くのコミュニティが集まることを象徴しており、景観面では盆地の周囲や山並み、家並みに溶け込むのがその特徴です。
今回のリニューアルは外観をそのまま残し、耐震・空調工事やカウンターレス化をメインに行いました。

店内には、菊竹氏の建築様式を後世に伝えるために、「コミュニティ・バンクの空間計画 京都信用金庫と菊竹清訓の建築」コーナーを設置。

これからも地域の皆様とともに、活力のあるまちづくりに努めてまいります。

京都信用金庫は「京都モダン建築祭」にも参加している。詳しいことは聞いていないが、行内の幹部クラスに相当建築が好きな人がいるものと思われる。
そして3つ目は「国立京都国際会館」のレトルトカレー。これは今年5月に発売になったばかり。

以下は公式Xより。
\開館60周年記念/
京都国際会館で開館以来愛されてきた、
「伝統のビーフカレー」がこの度、
なんと、なんと、なんと………!
レトルトカレーになりました!!✨
当館内のレストランThe Grillで、
創業当時から変わらないレシピを受け継いできた、
「国際会館 伝統のビーフカレー」
会館を訪れた各国の会議参加者や
要人たちに愛された味わいはそのままに、
大きなお肉がごろっとはいった、
満足感のある一品に仕上がっています。
国立京都国際会館 “伝統のビーフカレー” レトルトカレー🍛
価格:¥750(税込)
内容量:200g
販売開始日:5月2日(土)~
国立京都国際会館はコロナ禍の頃から、建築を前面に出した情報発信に目覚めた。京都モダン建築祭にも参加している。オリジナルグッズがいろいろあって、建築の立面図をあしらったTシャツやリングメモ、設計者・大谷幸夫氏のスケッチのステッカーなどを制作し、販売してきた。


そして今度はレトルトカレーである。もちろんパッケージには建築の立面図が入っている。



各種グッズを仕掛けているのは企画会社や広告会社の人ではなく、筆者にイラストマップ(こちらの記事参照)を依頼してきた総務課の人たちである。そのたくましい発信力に感心する。ちなみに、イラストマップは好評につき最近、英語版が作成された。

で、この三題噺で何が言いたいかというと、これら「京都の現代建築からの発信」の動きはいずれも、2021年9月から12月にかけて京都市京セラ美術館で開催された「モダン建築の京都」展に端を発していると思われるのである。
同展のキュレーターは、当時、京都市京セラ美術館企画推進ディレクターだった前田尚武氏(現・京都産業大学文化学部文化観光学科教授)。
まだコロナ禍でマスク必着の時期だったので、人の入りはどうだったのかわからない。しかし、「京都は伝統建築だけでなく、現代建築もすごい!」というメッセージは力強く、多くの人の心を動かしたことは間違いない。
その最も大きな影響として、2022年11月に第1回「京都モダン建築祭」が開催された。
京都モダン建築祭は、建築史家の笠原一人氏が実行委員長だが、「モダン建築の京都」展の実行メンバーである前田尚武氏やまいまいの以倉敬之氏、建築史家の倉方俊輔氏らが参加して実現した。
倉方俊輔氏は東京建築祭の実行委員長で、倉方氏に「東京でもやりましょうよ」とけしかけたのは以倉氏である。おそらく「モダン建築の京都」展がなかったら、東京建築祭もなかったか、ずっと先のスタートだったろう。
「モダン建築の京都」展を取材したときには、そんな大きな流れに結びつくとは1ミリも思っていなかった。社会の変化というものは、意外に数人の思いから広がるものなのである。なので、これからも社会の変化につながりそうな匂いのする取り組みは、漏らさぬように取材していきたい。のちのち、「BUNGA NETで書いてくれたから今がある」と感謝されるように。(宮沢洋)


